「シンプルな筋トレ記録アプリ」を探しているとき、店頭で比べられる指標はありません。1セットの入力が10秒で終わるかどうかも、入れて触ってみるまで分からない。ただし、10秒かかるか3秒で済むかを決めているのは、結局のところ何回タップするかです。ここでは「シンプル」を、1セットのタップ数・前回値の扱い・画面に出る情報量・登録の要否・広告の有無という5つの数えられる基準に分解して、主要5本を並べます。公開情報から数えられなかった項目は「確認できず」と書いています。
「シンプル」を5つの基準に分ける
シンプルさは感覚語なので、そのまま比べようとすると「なんとなく見やすい」で終わります。ジムで実際に効いてくる部分だけを取り出すと、次の5つになります。
- 1セットの入力に必要なタップ数 — 毎セット発生する操作。ここが1回か3回かで、1回のワークアウトでは数十回ぶんの差になる
- 前回値の扱い — 前回の重量と回数を、表示するだけか、入力欄に入れるか、そのまま確定できるか
- 画面に出る情報量 — セットの行に何が並ぶか。記録以外のものがどれだけ載っているか
- 登録なしで始められるか — アカウントを作らずに1セット目を残せるか
- 広告の有無 — 無料版に広告が入るか、消すのにいくらかかるか
1と2は「操作が速いシンプル」、3は「機能が少ないシンプル」、4と5は「始めるときの摩擦」に対応します。自分がどれを求めているかで、選ぶべきアプリが変わります。
主要5本を5つの基準で並べる
| アプリ | 1セットのタップ数(前回と同じ場合) | 前回値の扱い | 登録なしで始められるか | 広告 |
|---|---|---|---|---|
| 筋トレMemo | セット単位では数えられず(種目ごとに1タップで前回分をコピー) | 種目を開くと前回の記録が画面上部に出る。ファイルマークで前回の内容をコピー | 始められる(アカウント作成の手順が公開情報に出てこない) | あり(買い切り¥500で非表示) |
| Hevy | 1タップ(行の右のチェックマーク) | 入力欄に入るのはルーティンの値。前回の実績は別の「前回」列に表示 | アカウントが要る(メール/Google/Appleサインイン) | なし(App Storeの説明文に「邪魔な広告表示は無く」) |
| Strong | 公開情報からは数えられず | 公開情報からは確認できず | アカウントが要る(公式ヘルプに登録を求められる旨の記載) | 公開情報からは確認できず |
| FitNotes | 1タップ(Saveボタン) | 前回のワークアウトの1セット目の値が入力欄に自動で入る | 始められる(記録は端末内・Android専用) | なし(公式サイトに「Free to use and no ads - ever!」) |
| LiftLog | iOSは1タップ(完了チェック)/Web版は2アクション | 前回値が入力欄にうすく入り、空のまま完了チェックで確定 | アカウントが要る(Apple/Google/メール) | なし(アプリ内課金もなし) |
※ 各社のApp Store掲載・公式サイト・公式ヘルプ(2026-08-08 閲覧)に基づく。LiftLogは自社の実装内容。「数えられず」「確認できず」は公開情報の範囲で確かめられなかったという意味で、機能の不在を示すものではありません
基準1|1セットの入力に何タップかかるか
数え方をそろえないと比較になりません。ここでは記録画面にその種目のセット行が出ている状態から、前回と同じ重量・回数で1セットを残すまでに押す回数を数えています。重量を変える日はどのアプリでも数字を打ち直す操作が加わるので、そこは同条件として外しています。
LiftLog(iOS)は1タップです。入力欄が空のまま右端の完了チェックを押すと、うすく表示されている前回値でそのまま確定します(LiftLogの使い方)。
FitNotesも1タップです。公式ヘルプに「前回そのエクササイズのセットを記録していれば、入力欄には前回のワークアウトの1セット目の値が自動で入る」と書かれており、そのままSaveを押せばセットが作られます。
Hevyも1タップです。行の右のチェックマークで完了になり、同時にレストタイマーが動き出します(Hevyの使い方)。ただし入力欄に入っている数字の出どころが他と違うので、これは次の基準で扱います。
筋トレMemoはセット単位では数えられません。 公開されている操作手順は、ホームの「本日のトレーニングを追加」→ 部位 → 種目、と3タップで種目にたどり着き、そこでファイルマークを押すと前回の内容がまとめてコピーされる、という流れです。1タップで種目1つぶんが埋まる形なので、セットごとに数える他アプリと同じ土俵には乗りません(筋トレMemoの使い方)。
Strongは数えられませんでした。 公式ヘルプはテンプレートの作り方やレストタイマーの設定を詳しく説明していますが、入力欄に前回値が入るかどうかについての記載を見つけられませんでした。App Storeの説明文では「App Store で最もシンプルなインターフェイスのフィットネスアプリ」と自ら書いており、記録の流れは Add Exercises → Add Set → 数字を入れてチェックボックス、です(Strongアプリの使い方)。
基準2|前回値の扱いは3通りに分かれる
「前回の値が出る」と書いてあっても、中身は同じではありません。公開情報で確認できた範囲では、3つの型に分かれます。
A. 入力欄に入れて、そのまま確定できる型(LiftLog iOS・FitNotes)。数字を見て納得したら押すだけです。FitNotesは「前回のワークアウトの1セット目の値」が入るので、セットごとに重量を上げていくメニューでは2セット目以降で打ち直しが要ります。
B. 前回の実績は別の列に出し、入力欄にはルーティンの値を入れる型(Hevy)。公式ヘルプは「前回のワークアウト値の設定を変えても、重量と回数の入力列は更新されない。更新されるのは『前回』列だけ」と明記しています。入力欄に入っているのはルーティン(テンプレート)に登録した目標値で、ワークアウトの保存画面で「ルーティン値を更新」をオンにしておくと、その日の実績でルーティン側が書き換わります。前回の実績と今日の目標を別々に見られるのがこの型の利点で、狙って重量を上げていく人には合います。
C. 種目単位でまとめてコピーする型(筋トレMemo)。種目を開くと前回の記録が画面上部に出て、ファイルマークで前回の内容がそのままコピーされます。同じメニューを回している期間は、これがいちばん手数が少なくなります。
どれが優れているという話ではなく、前回と同じ重量で回す期間が長い人はAとC、毎回数字を動かす人はB、という向き不向きです。
基準3|画面に出る情報量
「シンプル=機能が少ない」で選ぶなら、ここが本丸になります。見るべきは2階層で、セットの行に並ぶ要素と、アプリ全体に載っているものです。
| アプリ | 1セットの行に並ぶもの | 記録以外に載っているもの |
|---|---|---|
| 筋トレMemo | 重量・回数・補助の有無。上部に前回の記録、王冠マークから最高記録 | 体組成・有酸素運動・グラフ・RM自動計算・SNS共有 |
| Hevy | 「前回」列・重量・回数・チェックマーク | 400種類以上の種目ライブラリとデモアニメ・フォロー/フィード/リーダーボード |
| Strong | 重量・レップ・チェックボックス。セットタグとRPEも残せる | 種目ごとの解説(動画や画像つきの手順)・部位サイズの測定(PRO) |
| FitNotes | Weight/RepsとSaveボタン。完了チェックは設定でオンにしたときだけ出る | レストタイマー・1RM計算機・セット計算機・プレート計算機・Body Tracker・カレンダー |
| LiftLog | セット番号バッジ(種別)・前回値・重量・回数・完了チェック。RPE欄は初期状態でオフ | AIトレーナー・体組成と食事の記録・分析画面・週間目標リング |
※ 各社の公式サイト・公式ヘルプ・App Storeの掲載(2026-08-08 閲覧)に基づく。LiftLogは自社の実装内容
いちばんそぎ落としているのはFitNotesです。公式ヘルプによると、セットの完了チェックは設定でオンにしたときだけ表示される仕様で、初期状態では「数字を入れてSave」しか画面にありません。公式サイトのキャッチコピーも "A clean, simple, powerful workout tracking app" です。ただしAndroid専用で、iPhone版を開発する予定もないと公式FAQが明言しています(FitNotesはiPhoneで使える?)。
逆に情報量が多いのは、種目の解説動画やSNSを持つHevyと、AIトレーナーや食事記録まで抱えるLiftLogです。必要なものが1本に入っているのは便利ですが、「記録だけしたい」人にとっては余計な要素でもあります。
なお、そぎ落としたアプリを選ぶと、1RM推定やプレート計算のような計算機能が入っていないことがあります。使う頻度が低いなら、必要なときだけブラウザで計算するほうが画面は軽く保てます。
1RM計算機(%1RM換算表つき)重量と回数から最大挙上重量を推定できます。Epley式とBrzycki式の両方と%1RM換算表つき(登録不要)基準4・5|登録の要否と、広告
始めるときの摩擦は、この2つでほぼ決まります。
登録なしで始められるのは筋トレMemoとFitNotesです。筋トレMemoはダウンロードしてすぐ「本日のトレーニングを追加」から記録に入れて、公式の説明にも第三者の使い方記事にもアカウント作成の手順が出てきません。FitNotesも公式のQuick Startが「Start New Workout をタップして最初の種目を選ぶ」から始まっており、ログインの手順がありません。
一方、Hevyはメール・Google・Appleサインインのいずれかが必要です。Strongも公式ヘルプに「すべてのユーザーは Strong を使う前にアカウント登録を求められる」と書かれています。LiftLogも登録が必要です。
広告は、筋トレMemoが無料版で表示され、買い切り500円のアプリ内課金で消えます。Hevyは App Store の説明文に「邪魔な広告表示は無く、無料でお使いいただけます」とあり、FitNotesは公式サイトが「Free to use and no ads - ever!」と書いています。LiftLogにも広告とアプリ内課金はありません。Strongについては、公開情報から広告の有無を確認できませんでした。
広告がないことと、無料で全部使えることは別の話です。無料枠がどこで切れるかはジムの筋トレ記録アプリ比較にまとめています。
「機能が少ない」シンプルと「操作が速い」シンプル
ここまでを整理すると、シンプルを名乗るアプリは2つの派に分かれます。
機能が少ない派は、載せるものを減らして画面を静かにします。筋トレMemoは部位と種目を選んで数字を打つ導線に絞り、FitNotesは完了チェックすら初期状態では出しません。Strongも「Think less. Lift more.」を掲げ、メニューを提案する機能もフォームを採点する機能も持っていません。覚えることが少なく、迷う場所がないのが強みです。
操作が速い派は、機能そのものは増やしても、毎回の手数を削ります。LiftLogとHevyがここで、前回の数字を先に入れておいて、押す回数を1回まで減らします。画面の要素は増えるが、指の動きは減るという解き方です。
両立はしません。前回値を出すには前回値を表示する場所が要り、それは画面に載る要素が1つ増えるということだからです。どちらの静けさが欲しいのかを先に決めてください。 覚えることを減らしたいなら前者、毎セットの手数を減らしたいなら後者です。
条件別の結論
- 記録以外のものを画面に出したくない → FitNotes(Android)。iPhoneなら筋トレMemoが近い位置にあります
- 登録せずに今日から始めたい → 筋トレMemo(iPhone・Android)かFitNotes(Android)
- 毎セットの入力を1タップにしたい → LiftLog(iOS)・Hevy・FitNotes
- 前回と同じ重量で回す期間が長い → 前回値が入力欄に入るLiftLogかFitNotes
- 毎回、狙って重量を動かす → 前回の実績と今日の目標を別に見られるHevy
- 広告を見たくない、かつ無料のまま使いたい → FitNotes・Hevy・LiftLog
- 日本語の種目名で迷いたくない → 筋トレMemoかLiftLog
- 端末を替える予定がある/iPhoneとAndroidを行き来する → 記録がアカウントに紐づくものを選ぶ
- すでに使っているアプリで入力が苦になっていない → そのままで問題ありません
最後の行がいちばん大事です。乗り換えのコストは、種目を作り直す手間と、操作に慣れるまでの2週間ぶんあります。今のアプリで毎セット引っかかっている感覚がないなら、それを上回る差は出ません。
LiftLogを選ぶ理由と、選ばない理由
LiftLogは「操作が速い派」に振ったアプリです。前回値が入力欄にうすく入った状態で始まり、そのまま完了チェックを押せば確定します。主要機能はすべて無料で、アプリ内課金も広告もありません。iPhone・Android・Apple Watch・ブラウザで同じ記録に書き込めます。
そのうえで、この記事の基準で負けているところを並べます。
| 項目 | ほかのアプリの状況 | LiftLog |
|---|---|---|
| 登録なしで始められるか | 筋トレMemoとFitNotesはアカウントを作らずに1セット目を残せる | アカウント登録が必要 |
| 画面のそぎ落とし方 | FitNotesはセットの完了チェックすら初期状態では表示しない | 記録画面に前回値・セット種別バッジ・AI相談ボタンが常に出る |
| ブラウザでの入力 | — | Web版には自動確定がなく、1セットの確定に2アクションかかる |
| 種目の解説 | Hevyは400種類以上にデモアニメ、Strongは動画や画像つきの手順 | なし(種目名と対象部位・器具のみ) |
| 運用実績 | 筋トレMemoは2018年公開、Strongは2011年公開 | 2026年5月公開。評価件数はまだごくわずか |
※ 他社側は各社の公式サイト・公式ヘルプ・App Storeの掲載(2026-08-08 閲覧)に基づく。LiftLog側は自社の実装内容
画面から要素を減らすことを最優先するなら、LiftLogは向いていません。ブラウザで入力する場合の手数も、アプリ版より1つ多くなります(LiftLog Web版の使い方)。
まとめ
- 「シンプル」は、1セットのタップ数・前回値の扱い・画面の情報量・登録の要否・広告の有無に分解すると比べられる
- 前回と同じ内容なら1タップで残せるのは LiftLog(iOS)・Hevy・FitNotes。筋トレMemoは種目ごとに1タップでまとめてコピーする形
- 前回値の扱いは3型ある。入力欄に入れて確定できる型(LiftLog・FitNotes)、別の列に出す型(Hevy)、種目単位でコピーする型(筋トレMemo)
- 登録なしで始められるのは筋トレMemoとFitNotes。そのぶん記録は端末側に残る
- 広告が入るのは筋トレMemoの無料版のみ(買い切り500円で非表示)。Hevy・FitNotes・LiftLogは掲載上、広告なし
シンプルさは、入れる前のスクリーンショットではほとんど判別できません。1回のワークアウトで何回タップしたかを数えてみるのがいちばん早い確認方法です。無料で試せるので、確かめるコストはジムに行く1日ぶんで足ります。



