ヒップスラストの平均重量は、トレーニング記録サービスのStrength Levelの集計で男性140kg・女性102kgです。他の種目の数字を見慣れていると高すぎるように感じますが、この種目ではこれが普通の水準です。ただし条件が2つ付いています。バー(通常20kg)を含んだ合計重量であることと、1回だけ挙げられる最大重量(1RM)として集計されていることです。10回続けられる重量に直すと、男性が約105kg・女性が約77kgという換算になります。

主に効く部位
大臀筋ハムストリングも動員
器具
バーベルベンチとパッド
重量の数え方
バー込みの合計プレートだけではない
男性の平均
140kgバー込み・1RM
女性の平均
102kgバー込み・1RM(Strength Level)(推定)

ヒップスラストの平均重量|男女別・レベル別

まず全体の分布から確認します。次の表は、トレーニング記録サービスのStrength Levelが公開しているレベル別の重量です。

ヒップスラストの平均重量の目安(kg・バー込みの1RM
レベル男性女性
初心者(Beginner)4535
初級者(Novice)8564
中級者(Intermediate)140102
上級者(Advanced)208149
エリート(Elite)286203

出典: Hip Thrust Standards (kg)Strength Level2026-08-08 確認)

海外のトレーニング記録サービスに投稿された自己申告データです。記録を投稿する利用者の中での分布であり、ジムに通う人全体や日本人の平均ではありません。数値はバー(通常20kg)を含む合計重量で、1RM基準です

レベルの区切りは投稿された記録の中での順位で決まっています。Strength Levelの定義では、初心者は下位5%より強い水準、初級者は20%、中級者は50%、上級者は80%、エリートは95%より強い水準を指します。中級者がちょうど真ん中なので、一般に「平均」として引用されるのはこの中級者の値です。経験年数の目安も併記されていて、初級者は6か月以上、中級者は2年以上、上級者は5年超の継続が想定されています。

男女差が小さいのもこの種目の特徴です。中級者どうしで比べると女性は男性の73%で、同じサイトのスクワット(女性は男性の58%)より差が詰まっています。

集計の約6割が女性の記録

この集計のもとになっているのは、2017年5月17日から2026年3月5日までに投稿された1,221,785件から絞り込まれた有効記録383,413件です。内訳は男性158,924件・女性224,489件で、女性の記録のほうが多くなっています。全体に占める割合は約59%です。

数字は「バー込みの合計重量」

Strength Levelは表の下に「Barbell weights include the weight of the bar, normally 20 kg / 44 lb.」と書いていて、バー(通常20kg)を含む合計重量であることを明示しています。女性の平均102kgは、20kgのバーに合計82kg分のプレートを付けた状態です。

この数え方は他のバーベル種目と共通です。インクラインベンチプレスの平均重量でも同じ基準で集計されています。一方、ダンベル種目の集計はダンベル1個あたりの重量で、両手の合計ではありません。媒体をまたいで数字を比べるときは、まずここをそろえてください。プレートだけを数えるか合計で数えるかで、20kgずれます。

体重別の目安

同じ性別でも体重が違えば挙がる重量は変わります。Strength Levelは体重別の表も公開しています。女性から見ていきます。

体重(女性)初心者初級者中級者上級者エリート
45kg285388131181
50kg305692137187
55kg336096142194
60kg3563100147199
65kg3766104151204
70kg3969108155209
体重(男性)初心者初級者中級者上級者エリート
50kg204685135193
60kg3263107163227
70kg4480129189257
80kg5696149213285
90kg68111168236311

いずれもバー込みの1RM(kg)です。元データは女性40〜120kg・男性50〜140kgまで公開されていて、この表はその一部を抜き出したものです。体重55kgの女性が中級者の水準を狙うなら96kg前後、体重70kgの男性なら129kg前後という計算になります。

スクワットより重い重量が挙がる

ヒップスラストの数字を初めて見ると、桁を間違えたように感じます。実際に同じサイトのスクワットと並べると、そう外れた感覚ではないことが分かります。

レベル(女性)ヒップスラストスクワット
初心者3532+3109%
初級者6451+13125%
中級者10276+26134%
上級者149105+44142%
エリート203137+66148%
レベル(男性)ヒップスラストスクワット
初心者4566−2168%
初級者8595−1089%
中級者140131+9107%
上級者208173+35120%
エリート286219+67131%

比の欄は、公開されている両種目の値から計算したものです。女性は初心者の段階からヒップスラストのほうが重く、レベルが上がるほど差が開きます。男性は初心者ではスクワットのほうが重く、中級者で逆転します。

重い重量が挙がる3つの理由

動作を分解すると、重量が伸びやすい条件が3つ重なっています。

1つ目はバーが動く距離が短いことです。スクワットは股関節と膝を深く曲げて全身を沈めますが、ヒップスラストは床に座った位置からお尻を持ち上げるだけです。同じ1回でも、重量を移動させる距離が違います。

2つ目は上体をベンチに預けられることです。スクワットではバーを担いだまま体幹で全体を支える必要があり、脚の力が残っていても支えきれずに終わることがあります。ヒップスラストではこの要素が外れます。

3つ目は膝と足首の角度がほとんど変わらないことです。動くのは股関節だけなので、股関節を伸ばす力だけを出せば成立します。さらに上げきった位置ではバーが股関節のほぼ真上に来るため、その位置では股関節を回す方向の力がほとんど要りません。支えて止まっているだけなら重い重量でも耐えられます。

ここで押さえておきたい限界があります。2つの表は別々の集計だという点です。スクワットは総投稿24,988,444件から絞った有効記録7,039,938件で、ヒップスラストの383,413件とは規模が18倍以上違います。データの期間も異なります。同じ人が両方を測った差ではないので、比の数字は分布どうしの比較として受け取ってください。

なお「重い重量が挙がる」ことと「効果が大きい」ことは別の話です。Contrerasらが2015年に発表した研究(トレーニング経験のある女性13名・推定10RM)では、大臀筋上部の筋活動の平均値がヒップスラスト69.5%に対してバックスクワット29.4%、下部が86.8%に対して45.4%と、ヒップスラスト側が高かったと報告されています。一方でPlotkinらが2023年に発表した9週間の介入研究(未経験者34名をヒップスラスト群18名・スクワット群16名に無作為割付)では、MRIで測った臀部の筋断面積の増加は両群で同程度でした。大腿四頭筋と内転筋はスクワット群のほうが増えています。筋活動が高いことがそのまま筋肉の増え方の差になるとは限らない、というのがこの2本を並べたときの読み方です。

表の数字は「1回だけ挙がる重量」

Strength Levelは平均について「The average Hip Thrust is 140 kg for men and 102 kg for women (1RM)」と書いています。1RM=1回だけ挙げられる最大重量なので、この重量で10回続けられるという意味ではありません。

換算には推定式を使います。よく使われるEpley式(1RM = w × (1 + r ÷ 30))とBrzycki式(1RM = w × 36 ÷ (37 − r))は、10回のときにちょうど同じ値になり、どちらも 1RM = 重量 × 4/3 になります。逆に解けば、10回できる重量はおよそ1RMの75%です

  • 男性の平均140kg → 10回できる重量は約105kg
  • 女性の平均102kg → 10回できる重量は約77kg

この10回という回数には根拠があります。Strength Levelにはセットの組み方も集計されていて、男性の20%・女性の17%が3セット×10回で、いずれも最多でした。次に多いのは男性が3セット×12回(15%)、女性が3セット×8回(10%)です。

スクワットの1RM計算機重量と回数から1RMを推定できます。式はヒップスラストにもそのまま使えます(登録不要)

数十kg台の数字を「ヒップスラストの平均」として見かけることもあります。桁が違って見えるのは、次の3点で数え方がそろっていないためです。

  • 1回だけの最大重量か、10回続けられる重量か。同じ人でも140kgと105kgに分かれます
  • バーを含むか、プレートだけか。同じセットでも20kgずれます
  • バーベルか、ダンベル・スミスマシン・マシンか。器具が違えば数字も別物です

自分の記録がどれに当たるかを先に決めてから、表と見比べてください。

重量の伸ばし方|先に潰す3つの引っかかり

この種目は、脚やお尻の力ではないところで重量が止まりがちです。多いのは次の3つです。

バーが腰に当たって痛い。 骨盤の前側にバーが直接乗るので、パッドなしで重量を足していくと、まず当たる痛みが限界を作ります。お尻の力が残っていても、痛くて押しきれないという状態です。厚手のバーベルパッドを挟むか、タオルを何重かに巻いてください。それでも痛みが引かないときは、バーの位置が股関節より腹側に寄っていることがあります。

肩甲骨の位置が合っていない。 ベンチの縁が肩甲骨の下端あたりに当たる位置に座ります。ベンチが背中の高い位置に当たると上体を押しつける支点がずれ、低すぎると腰の位置が下がって上げきれません。ここが決まっていないと、同じ重量でも日によって挙がったり挙がらなかったりします。

ベンチの高さが体格に合っていない。 一般的なフラットベンチで合う人が多いのですが、身長によっては高すぎたり低すぎたりします。判断の基準は、上げきったときに太ももと胴体が一直線に近くなり、すねが床とほぼ垂直になることです。すねが前に倒れているなら足が遠すぎ、後ろに寝ているなら近すぎます。

この3つが片付くと、重量は自分の力で決まるようになります。そこから先は、厚生労働省のe-ヘルスネットが説明している日常生活レベル以上の負荷を繰り返しかけ、慣れてきたら少しずつ負荷を高めていく(=漸進性過負荷の原則)ことが重要という進め方です。同じ情報シートは成人および高齢者に、筋トレを週2〜3日実施することを推奨するとしています。

基本のやり方

  1. ベンチに背中を当てて座る― ベンチの縁が肩甲骨の下端あたりに来る位置に座ります。ベンチは動かないよう壁側などに寄せます

  2. バーを股関節の上に置く― 足を伸ばした状態でバーを転がして股関節の上まで運び、パッドを挟みます

  3. 足の位置を決める― 足は肩幅程度。上げきったときにすねが床とほぼ垂直になる距離に置きます

  4. 股関節を伸ばして上げる― あごを引いたまま、太ももと胴体が一直線に近くなるまで押し上げます。上で一度止めてから下ろします

同じ股関節を伸ばす動作でも、上体を倒して行う種目は感覚が違います。比較したい場合はグッドモーニングのやり方を参照してください。

記録の残し方と伸ばし方

平均は自分の位置を確認する材料にはなりますが、次のセットの重量を決めてはくれません。決める材料になるのは自分の前回の記録です。

記録するのは種目・重量・回数の3つで足ります。項目の決め方は筋トレ記録のつけ方にまとめていますが、この種目では加えて重量をバー込みで書くかプレートだけで書くかを最初に決めて、以降は変えないようにしてください。途中で数え方が変わると、20kgの段差が伸びに見えてしまいます。

伸びているかどうかは、重量だけを見ていても分かりません。100kgで8回だったものが同じ100kgで10回になっていれば前進していますが、重量の欄は動いていないからです。回数の伸びも含めて追う方法は筋トレの成果を見える化する方法で整理しています。

まとめ

  • ヒップスラストの平均は男性140kg・女性102kgバー20kg込みの合計重量で、1RMの数字
  • 有効記録383,413件のうち約59%が女性。同じサイトのスクワットの約15%と比べて女性の記録が多い
  • 女性は全レベル、男性は中級者からスクワットを上回る。バーの移動距離・上体の支え・膝と足首の関与という3点が理由
  • 筋活動はスクワットより高いという報告がある一方、9週間の介入では臀部の筋断面積の増加は同程度だった
  • 10回できる重量はおよそ1RMの75%。男性105kg・女性77kgが換算の目安
  • 重量が止まるのは、当たる痛み・肩甲骨の位置・ベンチの高さであることが多い

まずはパッドを挟んで、10回組める重量を1つ記録するところから始めてください。比べる相手は平均ではなく、前回の自分です。