インクラインベンチプレスの平均重量は、トレーニング記録サービスのStrength Levelの集計で男性86kg・女性43kgです。この数字には条件が2つ付いています。バー(通常20kg)を含んだ合計重量であること、そして1回だけ挙げられる最大重量(1RM)として集計されていることです。10回続けられる重量に直すと、男性が約64kg・女性が約32kgという換算になります。そして同じサイトのフラットのベンチプレス(男性96kg・女性51kg)と並べると、差は思ったほど大きくありません。
- 主に効く部位
- 大胸筋三角筋前部・上腕三頭筋も動員
- 器具
- バーベルインクラインベンチとラック
- ベンチの角度
- 30〜45度研究で比較されるのもこの範囲
- 重量の数え方
- バー込みの合計プレートだけではない
- 男性の平均
- 86kgバー込み・1RM(Strength Level)(推定)
インクラインベンチプレスの平均重量|男女別・レベル別
まず全体の分布から確認します。次の表は、トレーニング記録サービスのStrength Levelが公開しているレベル別の重量です。
| レベル | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 初心者(Beginner) | 43 | 15 |
| 初級者(Novice) | 63 | 27 |
| 中級者(Intermediate) | 86 | 43 |
| 上級者(Advanced) | 114 | 63 |
| エリート(Elite) | 144 | 85 |
出典: Incline Bench Press Standards (kg)/Strength Level(2026-08-08 確認)
※ 海外のトレーニング記録サービスに投稿された自己申告データです。記録を投稿する利用者の中での分布であり、ジムに通う人全体や日本人の平均ではありません。数値はバー(通常20kg)を含む合計重量で、1RM基準です
レベルの区切りは投稿された記録の中での順位で決まっています。Strength Levelの定義では、初心者は下位5%より強い水準、初級者は20%、中級者は50%、上級者は80%、エリートは95%より強い水準を指します。中級者がちょうど真ん中なので、一般に「平均」として引用されるのはこの中級者の値です。経験年数の目安も併記されていて、初級者は6か月以上、中級者は2年以上、上級者は5年超の継続が想定されています。
この集計のもとになっているのは、2017年8月18日から2026年3月5日までに投稿された2,165,292件から絞り込まれた有効記録593,967件(男性568,407件・女性25,560件)です。件数は多いものの、記録サービスに自分の重量を投稿する人の分布であることは動きません。
数字は「バー込みの合計重量」
Strength Levelは表の下に「Barbell weights include the weight of the bar, normally 20 kg / 44 lb.」と書いていて、バー(通常20kg)を含む合計重量であることを明示しています。男性の平均86kgは、20kgのバーに合計66kg分のプレートを付けた状態です。
この点は同じサイトのダンベル種目と数え方が違います。ダンベルショルダープレスの平均重量のようなダンベル種目では、集計値はダンベル1個あたりの重量で、両手の合計ではありません。バーベル種目は合計、ダンベル種目は片手あたり。媒体をまたいで数字を比べるときは、まずここをそろえてください。
体重別の目安
同じ性別でも体重が違えば挙がる重量は変わります。Strength Levelは体重別の表も公開しています。
| 体重(男性) | 初心者 | 初級者 | 中級者 | 上級者 | エリート |
|---|---|---|---|---|---|
| 50kg | 22 | 34 | 49 | 66 | 86 |
| 60kg | 32 | 45 | 62 | 82 | 103 |
| 70kg | 41 | 56 | 75 | 96 | 119 |
| 80kg | 50 | 66 | 87 | 109 | 134 |
| 90kg | 58 | 76 | 98 | 122 | 147 |
| 体重(女性) | 初心者 | 初級者 | 中級者 | 上級者 | エリート |
|---|---|---|---|---|---|
| 40kg | 7 | 15 | 26 | 40 | 57 |
| 50kg | 11 | 20 | 33 | 49 | 67 |
| 60kg | 14 | 25 | 39 | 56 | 76 |
| 70kg | 18 | 29 | 45 | 63 | 84 |
| 80kg | 21 | 34 | 50 | 69 | 91 |
いずれもバー込みの1RM(kg)です。元データは男性140kg・女性120kgまで公開されていて、この表はその一部を抜き出したものです。体重70kgの男性が中級者の水準を狙うなら75kg前後、体重55kgの女性なら36kg前後という計算になります。
フラットのベンチプレスとの重量差
インクラインの数字を見たときにいちばん知りたくなるのは、フラットのベンチプレスと比べてどうかという点だと思います。Strength Levelは同じ形式でフラットの集計も公開しているので、並べてみます。
| レベル(男性) | インクライン | フラット | 差 | 比 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者 | 43 | 49 | −6 | 88% |
| 初級者 | 63 | 70 | −7 | 90% |
| 中級者 | 86 | 96 | −10 | 90% |
| 上級者 | 114 | 127 | −13 | 90% |
| エリート | 144 | 160 | −16 | 90% |
| レベル(女性) | インクライン | フラット | 差 | 比 |
|---|---|---|---|---|
| 初心者 | 15 | 19 | −4 | 79% |
| 初級者 | 27 | 33 | −6 | 82% |
| 中級者 | 43 | 51 | −8 | 84% |
| 上級者 | 63 | 72 | −9 | 88% |
| エリート | 85 | 97 | −12 | 88% |
比の欄は、公開されている両種目の値から計算したものです。男性は各レベルでフラットの88〜90%、女性は79〜88%に収まりました。体重別で見ても傾向は同じで、体重70kgの男性の中級者はインクライン75kg・フラット85kg(88%)、体重90kgなら98kg・109kg(90%)です。
つまり「インクラインはフラットの7〜8割」という数字を目にすることがありますが、少なくともこの集計の重量表では、それより高い水準に出ています。男性なら1割前後、女性でも2割程度の低下にとどまります。
ここで押さえておきたい限界があります。2つの表は別々の集計だという点です。フラットは総投稿48,718,584件から絞った有効記録10,923,537件、インクラインは2,165,292件から593,967件で、規模が18倍以上違います。データの期間も異なります(フラットは2015年3月から、インクラインは2017年8月から)。
さらに、インクラインは多くの場合フラットを一通りやったうえで組み込む種目です。そのため記録を投稿している層が、フラットの投稿者より経験の長い側に寄っている可能性があります。もしそうなら、インクラインの中央値は相対的に高く出ることになります。同じ人が両方を測った差ではないので、比の数字は分布どうしの比較として受け取ってください。自分の場合の差は、両方を実際に記録してみるほうが早く分かります。
表の数字は「1回だけ挙がる重量」|10回できる重量への直し方
Strength Levelは平均について「The average Incline Bench Press is 86 kg for men and 43 kg for women (1RM)」と書いています。1RM=1回だけ挙げられる最大重量なので、この重量で10回続けられるという意味ではありません。
換算には推定式を使います。よく使われるEpley式(1RM = w × (1 + r ÷ 30))とBrzycki式(1RM = w × 36 ÷ (37 − r))は、10回のときにちょうど同じ値になり、どちらも 1RM = 重量 × 4/3 になります。逆に解けば、10回できる重量はおよそ1RMの75%です。
- 男性の平均86kg → 10回できる重量は約64kg
- 女性の平均43kg → 10回できる重量は約32kg
この10回という回数には根拠があります。Strength Levelにはセットの組み方も集計されていて、男性の12%・女性の16%が3セット×10回で、いずれも最多でした。次に多いのが3セット×8回(男女とも10%)です。
ベンチプレスの1RM計算機重量と回数から1RMを推定できます。式はインクラインにもそのまま使えます(登録不要)重量の決め方|フラットより軽いところから始める
インクラインをフラットと同じ重量で組もうとすると、たいてい回数が足りなくなります。上体が起きるぶんバーを下ろす位置が鎖骨寄りに移り、押す方向も変わるためです。肩関節が担う範囲が増える一方で、フラットで使えていた背中とベンチの接地による支えは減ります。前の章で見たとおり、集計データでも1〜2割低い水準に分布しています。フラットの記録から1割ほど引いた重量を出発点にして、10回組めるかどうかで調整するのが実際的です。
角度については、Lauverらが2016年に発表した研究(トレーニング経験のある男性14名・65%1RM)が0度・45度を含む4条件を比較しています。この研究では、大胸筋上部の筋活動は挙上動作の全体で見ると条件による差がなく、動作の26〜50%の区間に限れば30度と45度が水平より高かったと報告されています。角度を上げれば上部だけが単純に強く働く、という単純な話ではないということです。
実務上は、毎回同じ角度にそろえることのほうが効いてきます。角度が変われば挙がる重量も変わるので、45度で組んだ日と30度で組んだ日の記録を並べても、伸びているかどうかは判断できません。
基本のやり方
ベンチの角度とセーフティを合わせる― 角度は30〜45度に設定します。バーを下ろしきった位置より少し低いところにセーフティを置きます
肩甲骨を寄せて寝る― 背中をベンチに預け、肩甲骨を寄せたまま固定します。目線がバーの真下あたりに来る位置に寝ます
バーを鎖骨のあたりに下ろす― フラットより頭寄りの位置に下ろします。肘を体側に開ききらないようにします
押し上げる― 肘は伸ばし切る手前で止めます。1回ごとに下ろす位置と深さをそろえます
記録の残し方と伸ばし方
平均は自分の位置を確認する材料にはなりますが、次のセットの重量を決めてはくれません。決める材料になるのは自分の前回の記録です。
厚生労働省のe-ヘルスネットは、筋トレの負荷について日常生活レベル以上の負荷を繰り返しかけ、慣れてきたら少しずつ負荷を高めていく(=漸進性過負荷の原則)ことが重要と説明しています。同じ情報シートは成人および高齢者に、筋トレを週2〜3日実施することを推奨するとしています。
記録するのは種目・重量・回数の3つで足ります。項目の決め方は筋トレ記録のつけ方にまとめていますが、この種目では加えてベンチの角度も残しておくと後で困りません。角度が違えば別の種目に近い数字になるからです。重量はバーを含めた合計で書くか、プレートだけで書くかを最初に決めて、以降は変えないようにします。
伸びているかどうかは、重量だけを見ていても分かりません。60kgで8回だったものが同じ60kgで10回になっていれば前進していますが、重量の欄は動いていないからです。回数の伸びも含めて追う方法は筋トレの成果を見える化する方法で整理しています。記録の手間そのものが続かない原因になっている場合は、記録を10秒で終わらせる手順のほうから読んでください。
まとめ
- インクラインベンチプレスの平均は男性86kg・女性43kg。バー20kg込みの合計重量で、1RMの数字
- レベルの区切りは投稿記録の中での順位。中級者がちょうど真ん中で、これが「平均」として引用される
- フラットとの比は男性88〜90%・女性79〜88%。よく見る「7〜8割」より高い。ただし別々の集計どうしの比較
- 10回できる重量はおよそ1RMの75%。男性64kg・女性32kgが換算の目安
- 角度は30〜45度。大胸筋上部の筋活動は動作の全体で見ると角度による差がなかったという報告がある
- 記録には重量と回数に加えて角度も残す。角度が違えば別種目に近い数字になる
まずはフラットの記録から1割ほど引いた重量で、10回組めるかどうかを1回試して記録するところから始めてください。比べる相手は平均ではなく、前回の自分です。


