ペンドレイローは、1回ごとにバーベルを床へ戻し、そのたびに引き直すバーベルローです。上体は床と平行に近い角度で固定したまま、バーを上腹部へ引きます。ベントオーバーローとの違いは実質1つで、セット中にバーを床へ着けるかどうか。シールローはベンチにうつ伏せで寝て引く形なので、上体を支える仕事そのものが無くなります。この記事では、手順・3種目の動作上の違い・公開データから見た重量の目安を順に整理します。
- 主に効く部位
- 背中広背筋・僧帽筋・菱形筋ほか
- 器具
- バーベル床から引ける高さのプレート
- 難易度
- 中級前傾を保てることが前提
- 重量の目安(1RM)
- 79kg体重70kgの男性・中級者(推定)
目安重量は Strength Level の公開データから抜き出した推定値です。出典と体重・レベル別の数字は、この記事の後半の「平均重量の目安」にまとめています。
ペンドレイローとは|床から引き直すバーベルロー
名前は、アメリカのウエイトリフティングコーチ Glenn Pendlay に由来します。ただし本人が名付けたわけではありません。BarBendのインタビューで、本人はこの呼び名について「私は抵抗して、これはただの厳格なバーベルローだと何度も言った。それでもペンドレイローという呼び方は消えなかった」と語り、動作そのものは「背中を床とだいたい平行に保ったまま行う、ただの厳格なバーベルロー」だと説明しています。さらに「ペンドレイローは革命的な種目ではないし、私の意見では特別なものでもない」とも述べています(原文は英語・訳は当サイト)。
つまりこの種目は、ベントオーバーローの上位版として設計されたものではなく、バーベルローを厳しい条件で行った形に名前が付いたものです。日本語の解説では「ベントオーバーローより効果が高い」といった比較を見かけますが、そう言い切れる資料は確認できませんでした。以下も優劣ではなく、動作がどう違うかとして読んでください。
動員される筋は、親種目にあたるバーベル・ベントオーバーローの分類が参考になります。ExRx.netはこの動作の協働筋として僧帽筋の中部・下部、菱形筋、広背筋、大円筋、三角筋後部などを、安定筋として脊柱起立筋・ハムストリングス・大臀筋などを挙げています。ペンドレイローは同じ動作を厳格に行う形なので、動員される筋は基本的に共通します。上体を床と平行に保つぶん、姿勢を支える側の仕事が長く続くのが特徴です。
ペンドレイローのやり方
床にバーを置いた状態から始めます。ラックから外して構える種目ではないので、あらかじめプレートを付けて、バーの高さを確保しておきます。
バーの真上に立つ― デッドリフトと同じくらいの足幅で、バーが足の甲の上を通る位置に立ちます。すねはバーに近づけておきます
膝を軽く曲げ、股関節から上体を倒す― 背中は反らせも丸めもせず、床と平行に近いところまで倒します。ここで作った角度が、その1回の基準になります
肩幅よりやや広めに、順手で握る― 手幅は毎回そろえます。位置が変わると引く距離も変わり、前回の記録と比べられなくなります
息を吸って上体の角度を固定する― 引く前に吸っておきます。引きながら吸うと、上体が起きる方向に力が抜けやすくなります
肩甲骨を寄せてから、肘を後ろへ引く― バーは上腹部へ向かって引きます。肘を先に曲げると腕だけで引く形になりやすいので、寄せる動きを先に作ります
バーを床まで下ろす― 引き切った位置で止めたら、そのまま床まで戻します。途中で止めないのがこの種目の条件です
床で完全に静止させてから、次の1回を始める― 息はここで吐き、吸い直します。跳ね返りを使わないぶん、毎回同じ条件から引き始められます
引き切る位置は、ExRx.netの記述では上腹部(upper waist)です。胸の高さまで引こうとすると上体が起きてくるので、上体の角度が変わらない範囲で引ける位置が実際の到達点になります。
ベントオーバーロー・シールローとの違い
3つとも「前傾または伏臥の姿勢でバーを引く」種目ですが、バーがどこから始まるかと上体を誰が支えるかが違います。
| ペンドレイロー | ベントオーバーロー | シールロー | |
|---|---|---|---|
| バーの始点 | 毎回、床 | セット中は床に着けない(腕を伸ばした位置) | ベンチの下で腕を伸ばした位置(プレートは床に着かない) |
| 上体の角度 | 床とほぼ平行に固定 | 角度に幅がある(起こし気味でも行われる) | ベンチに支えられて固定 |
| セット中の姿勢保持 | 1回ごとにいったん解除される | セット中ずっと保ち続ける | 不要(ベンチが支える) |
| 反動の使いやすさ | 床で静止させるため勢いが乗りにくい | 上体の振りで勢いをつけやすい | 体が固定されるため使えない |
| 必要な器具 | バーベルとプレート(床から引ける高さ) | バーベル(ラックから外しても可) | 高さのあるベンチ(専用台、または嵩上げ) |
※ 動作の記述は BarBend(ペンドレイロー/ベントオーバーロー)と SET FOR SET(シールロー)の解説、および ExRx.net のバーベル・ベントオーバーローの動作分類にもとづく(2026-08-08 取得)。どれが優れているかの比較ではありません
ペンドレイローの特徴は、1回ごとに床でリセットが入ることです。前の回の勢いが次の回に持ち越されないので、1回ずつが独立します。同時に、床から引き上げる距離が毎回加わります。
ベントオーバーローは、セット中ずっと前傾を保ち続けます。バーが床に着かないぶん背中側の張力が途切れず、その姿勢を保つ仕事もセットが終わるまで続きます。上体を振って勢いをつけることもできてしまうので、フォームの再現性は自分で管理する必要があります。
シールローは、額と胸をベンチにつけたままバーを引く形です。SET FOR SETの解説は、この構造について「セットアップ上、ごまかすことがほぼ不可能になる。ごまかせないなら、勢いも他の筋群も使えない」と説明しています。上体を支える仕事が丸ごとベンチ側に移るのがこの種目の要点です。
一方で、器具の条件は3つの中でいちばん厳しくなります。腕を伸ばし切ってもプレートが床に着かない高さのベンチが要るためで、専用台のないジムではフラットベンチを箱やプレートで嵩上げすることになります。ここが安定しないなら、無理に再現するより胸当てのあるマシンで代替したほうが確実です。
平均重量の目安|体重70kgの男性で79kg
トレーニング記録の投稿サイト Strength Level は、ユーザーの申告記録をもとにレベル別の基準値を公開しています。ペンドレイローの集計対象は265,453件(2017年12月10日〜2026年3月5日)で、平均は男性92kg・女性53kg(いずれも1RM=1回だけ挙げられる重量)とされています。
| レベル | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 初心者 | 44 | 23 |
| 初級者 | 60 | 33 |
| 中級者 | 79 | 46 |
| 上級者 | 101 | 61 |
| エリート | 124 | 78 |
出典: Pendlay Row Standards for Men and Women (kg)/Strength Level(2026-08-08 確認)
※ 男性は体重70kg、女性は体重55kgの行を抜き出した値で、いずれも1RM(1回だけ挙げられる重量)の目安です。海外ユーザーの自己申告データにもとづく集計であり、日本の平均を示すものではありません。体重が違えば基準値も変わります
数字を見るときに気をつけたいのが、種目どうしの比較には使いにくいことです。同じサイトのベントオーバーローの平均は男性87kg・女性44kgで、ペンドレイローのほうが高く出ています。ただしベントオーバーローの集計は2,162,181件と母数が8倍以上あり、記録を投稿している層が同じとは限りません。「ペンドレイローのほうが重い重量を扱える種目だ」と読める数字ではない、ということです。
表の値は1RMなので、実際に組む重量はここから逆算します。8回や10回で組むときの重量は、推定式を使うと出せます。
1RM計算機重量と回数から最大挙上重量を推定できます。Epley式・Brzycki式の両方と%1RM換算表つき(登録不要)なお、シールローについては同じ集計に単独の項目が見当たらなかったため、この記事では平均重量の数値を出していません。
よくある詰まりどころ
1回ごとに開始位置がずれる
床に戻したバーが跳ねたり転がったりすると、次の1回の開始位置が変わります。床に着いたら完全に止めるのが対策で、止まったことを確認してから握り直すと位置が安定します。バーの下に置く位置の目印を作っておくのも有効です。
上体が起きてくる
回数が進むと上体が起きてきます。角度が変わると引く距離が短くなるので、同じ重量・同じ回数でも中身が変わります。上体の角度を保てる重量まで落とすか、角度が変わる手前で終える形にすると、記録が比べられる状態を保てます。
腕だけで引いている感覚になる
肘を先に曲げると、背中が引く動作に入る前に腕が引き切ってしまいます。肩甲骨を寄せる動きを先に作り、そのあとで肘を後ろへ引く順番にすると、引く主体が背中側に移ります。
床からバーを引ける高さがない
軽い重量で始めるとプレートの直径が小さく、バーの位置が床に近くなります。この場合は、直径の大きいプレート(バンパープレート)を使うか、台の上にプレートを乗せて高さを合わせます。床まで下ろせないなら、条件を満たしていないので、その日はベントオーバーローに切り替えるほうが記録として一貫します。
重量と回数をどう決めるか
厚生労働省のe-ヘルスネットは、過負荷の原理を「ある程度の負荷を身体に与えないと運動の効果は得られないということです」、漸進性の原則を「体力・競技力の向上に伴って、運動の強さ・量・技術課題を次第に高めていくこと」と説明しています。上げ幅やタイミングまでは決められていないので、そこは自分の記録から判断することになります。
ペンドレイローの場合、記録として残す価値が高いのは重量と回数に加えて上体の角度が保てた回数です。同じ「60kg×8回」でも、最後の2回で上体が起きていたなら次に上げる判断はできません。1行のメモに「7回目から角度が甘い」と書いておくだけで、次のセットの重量が決められます。記録する項目の決め方は筋トレ記録のつけ方完全ガイドにまとめています。
伸びているかどうかは、単発の重量ではなく推移で見ます。床から引き直す種目は日による差が出やすいので、同じ種目の推定1RMを時系列で並べるほうが判断しやすくなります。見る指標の決め方は筋トレの成果を見える化する方法で整理しています。手で集計するのが負担なら、ジムの筋トレ記録アプリ比較で無料枠と料金を比べています。
まとめ
- ペンドレイローは、1回ごとにバーを床へ戻して引き直すバーベルロー。上体は床と平行に近い角度で固定する
- 名前の由来になった Glenn Pendlay 本人は、この動作を「ただの厳格なバーベルロー」と説明している。特別な種目として扱う必要はない
- ベントオーバーローとの違いはバーを床に着けるかどうか。シールローとの違いは上体を誰が支えるか
- 平均は男性92kg・女性53kg(1RM)。体重70kgの男性・中級者で79kg、体重55kgの女性・中級者で46kg。海外ユーザーの自己申告データにもとづく目安
- 種目間で平均値を比べるのは避ける。集計の母数も投稿している層も違う
- 詰まりどころは「開始位置のずれ」「上体が起きる」「腕だけで引く」「床まで下ろせない」の4つ
- 記録には重量・回数に加えて上体の角度が保てた回数を残すと、次の重量を決めやすい


