アップライトローは、バーやダンベルを体の前で引き上げる種目です。ExRx.netの分類では主働筋は三角筋の外側部で、肘が曲がるぶん腕の筋や僧帽筋の中部・下部も協働筋として動きます。この種目の解説でほぼ必ず出てくる「肩をすくめない」というキューには理由があって、すくむ動きを担当する僧帽筋上部が、同じ分類のなかでは動きを作る協働筋ではなく安定筋の側に置かれているからです。この記事では手順、すくませないための確認点、グリップ幅で筋活動がどう変わるかを実測した研究、公開データから見た重量の目安を順に扱います。

主に効く部位
三角筋 中部僧帽筋・腕の筋も動員
器具
バーベルダンベル・EZバー・ケーブルでも
難易度
中級手幅と高さの管理が要点
重量の目安(1RM)
52kg体重70kg男性・中級者・シャフト込み(推定)

アップライトローのやり方|手幅を決めてから肘で引く

動作としては、バーを体の前に沿わせて引き上げ、同じ道を通して下ろすだけです。決めるべきものは手幅上げる高さの2つで、この2つを毎回変えないことが記録を比べる条件になります。

  1. バーを順手で握り、足を腰幅に開いて立つ― ExRx.netの手順は「肩幅か、やや狭めのオーバーハンドグリップ」です。同サイトの安全に関する記述では「肩幅のグリップ」を勧めていて、幅の扱いには幅があります

  2. 腕を伸ばし、バーを太ももの前に置く― ラックから受け取る場合は、太ももの中ほどの高さにあるバーの後ろに立ちます

  3. 胸を張り、肩を後ろに引いた直立姿勢を作る― ExRx.netは姿勢について「胸を高く、肩を後ろに引いた直立姿勢で、バーは体の近くに」と記載しています

  4. 肘を先に上げるつもりで、バーを体に沿わせて引く― 原文は「elbows leading」で、肘が先導する形です。肘は横へ開き、前に向けないようにします

  5. バーが上がるにつれて、手首が曲がるのを許す― 手首をまっすぐ固定しようとすると、バーを体から離す動きになります。ExRx.netは「バーが上がるにつれて手首が曲がるのを許す」と書いています

  6. 決めた高さで止め、同じ道を通して太ももの前まで下ろす― 下ろし切った位置が次の1回の開始位置です。途中で止めると開始位置が毎回変わります

器具で変わるのは持ち方だけ

ExRx.netはバーベル・ダンベル・ケーブルの3つを別ページで扱っていますが、主働筋・協働筋・安定筋のリストは3つとも同一です。違うのは持ち方と抵抗のかかり方のほうになります。

  1. バーベル手幅がバーの上で固定されるので、同じ幅を再現しやすくなります。目印の刻みを基準にすれば記録にも残せます

  2. ダンベル左右が独立するので幅を自由に取れます。ExRx.netの注記は「上げたとき手首は肩の前か少し下、肘は横へ向け、前に向けない」

  3. EZバー波形になっていて手首の角度を選べるバーです。握る位置がくぼみで決まるぶん、手幅の再現性はストレートバーより高くなります

  4. ケーブル低い位置のプーリーにバーを付け、プーリーの近くに立ちます。上げ切った位置でも張力が抜けません

肩をすくめないコツ|僧帽筋上部は安定筋の側にいる

「肩をすくめない」は日本語の解説でも定番のキューですが、理由まで書かれていることは多くありません。筋の配役から見ると、話は単純です。

すくむ動きは肩甲骨が上がること

StatPearlsの記述では、僧帽筋の上部線維は肩甲骨を挙上させ、上方回旋させ、頸部を伸展させるとされています。肩をすくめる動きは、このうちの挙上にあたります。中部線維は肩甲骨を内側に引き寄せ、下部線維は引き下げます。

一方、ExRx.netがアップライトローについて挙げている分類は次のとおりです。

  • 主働筋 — 三角筋の外側部
  • 協働筋 — 三角筋前部・棘上筋・上腕筋・腕橈骨筋・上腕二頭筋・僧帽筋の中部と下部・前鋸筋の下部・棘下筋・小円筋
  • 安定筋 — 僧帽筋の上部・肩甲挙筋

僧帽筋の中部と下部は協働筋に入っているのに、上部だけが安定筋の側にいます。つまり分類上、僧帽筋上部の役割は動きを作ることではなく姿勢を保つことです。肩がすくむというのは、安定筋として置かれた筋が動きを作りにいっている状態を指します。

肘で引く、手で上げない

ExRx.netの実行手順は「肘が先導する形でバーを引く」で、ダンベル版には「上げたとき手首は肩の前か少し下、肘は横へ」という注記が付いています。片腕で行う場合については「肘をやや前に向けるのではなく、真横に向けたままにする」とも書かれています。

手首が肘より高い位置に来ていたら、この記載から外れています。感覚では判定しにくい部分なので、正面と横から動画を撮って肘と手首の高さを見るほうが確実です。

上げる高さは資料によって幅がある

高さの記述は資料ごとに違います。ExRx.netのバーベル版は「首まで引く」、ダンベル版は「肩の前、または胸の横まで」です。これに対し、後述するMcAllisterらの研究では、実施上の指示として上腕を水平より上に行かせないため、バーを剣状突起(みぞおち付近)より高く上げないという条件で統一されています。

3つが重なるのは胸から肩にかけての範囲です。どこを選ぶかより、毎回同じ高さで止めるほうが記録には効きます。高さが変われば、同じ重量でも別の運動になるからです。

グリップ幅で変わること|「狭いと僧帽筋」は研究と一致しない

日本語の解説では、狭く持つと僧帽筋、広く持つと三角筋という効かせ分けをよく見かけます。この点を実測した査読研究があります。

McAllisterら(2013年、Journal of Strength and Conditioning Research)は、トレーニング歴3年以上の男性16名に、肩峰幅の50%・100%・200%にあたる3つの手幅でアップライトローを行わせ、三角筋の前部・中部・後部、僧帽筋の上部・中部、上腕二頭筋の活動を筋電図で比べました。負荷は3条件とも同じで、100%条件で測った1RMの85%です。

主要な所見は、手幅を広げるほど三角筋と僧帽筋の活動がともに増え、上腕二頭筋の活動は逆に減るというものでした。実用面の結論も「三角筋と僧帽筋の関与を増やしたいなら広いグリップを使うべき」と書かれています。

つまり狭いグリップで相対的に増えていたのは上腕二頭筋のほうで、僧帽筋が増えたわけではありません。狭く持つと僧帽筋に効くという整理は、この研究の結果とは逆向きです。

読むときの前提が3つあります。

  1. 「広い」の中身は肩峰幅の2倍被験者の肩峰幅は平均34.34cmだったので、手の間隔にしておよそ69cm。日本語記事でいう「肩幅より少し広め」よりかなり広い条件です

  2. 負荷が3条件で同じだった著者自身が限界として挙げています。手幅が広いほど相対的な負荷が重くなり、そのぶん活動が増えていた可能性が残ります

  3. 測ったのは筋活動であって筋肥大ではない筋電図の大きさは、その手幅で長期的に筋量が増えることを示すものではありません

手順そのものについては、ExRx.netは「肩幅か、やや狭めのオーバーハンドグリップ」を挙げる一方、安全に関する記述では「肩幅のグリップ」と「中程度からやや広めのグリップ」を勧めていて、極端に狭い側は推していません。研究の結果と合わせても、狭くする方向に積極的な理由は見当たらないというのが現時点で確認できる範囲です。

実際の運用としては、痛みなく動かせる範囲で幅を1つに決め、それを記録に残して固定するほうが得です。幅を毎回変えると、重量が伸びたのか幅が変わったのかを後から切り分けられません。

平均重量の目安|シャフト20kg込みのバーベル版

トレーニング記録の投稿サイト Strength Level は、ユーザーの申告記録をもとにレベル別の基準値を公開しています。アップライトローの平均1RMは男性59kg・女性31kgで、集計対象は245,057件のコミュニティ記録から絞られた39,678件の有効結果です(男性34,063件・女性5,615件、2017年5月17日〜2026年3月5日)。

アップライトロー(バーベル)の平均重量の目安(kg
レベル男性女性
初心者1910
初級者3318
中級者5228
上級者7540
エリート10254

出典: Upright Row StandardsStrength Level2026-08-08 確認)

男性は体重70kg、女性は体重55kgの行を抜き出した値です。数字は1RM(1回だけ挙げられる重量)の推定値で、シャフト約20kgを含むバーベル全体の重量です。海外ユーザーの自己申告データにもとづく集計であり、日本の平均を示すものではありません。手幅・上げる高さ・反動の有無は揃っていないため、フォームの違いによる差は反映されていません

この表を読むときの注意は2つあります。1つはシャフト込みの総重量であること。中級者の52kgは、20kgのシャフトに16kgずつ足した状態です。もう1つは1RMであること。10回続けるセットで使う重量は、ここから逆算します。

1RM計算機重量と回数から最大挙上重量を推定できます。Epley式・Brzycki式の両方と%1RM換算表つき(登録不要)

自己申告データにしては数字が大きく見えるかもしれませんが、先に挙げたMcAllisterらの研究では、被験者16名(平均体重80.7kg)の1RMが実測で61.5kgでした。Strength Levelの体重80kg男性・中級者は59kgなので、研究室で測った値と申告データの中央付近がほぼ同じ位置に来ています。ただしこの被験者はトレーニング歴3年以上に限定されているので、一般的な水準とは別物として見てください。

ダンベル版は別の集計になっていて、平均は男性24kg・女性13kgです。ただしこちらは片手のダンベル1個あたりの重さなので、バーベルの59kgと並べても比較になりません。器具を変えたときは、数字を引き継がずに測り直すことになります。

サイドレイズ・リアレイズとの使い分け

三角筋は前部・外側部・後部で担当する方向が分かれています。StatPearlsの記述では、外側部は腕を15度から100度まで上げる動きに働き、三角筋だけでは外転の動き出しを起こせず、その部分は棘上筋が担当するとされています。

アップライトローとサイドレイズは、ExRx.netの分類ではどちらも主働筋が三角筋の外側部です。違いは関節の数のほうにあります。アップライトローは肘が曲がる多関節種目に分類され、上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋や僧帽筋の中部・下部まで協働筋に入ります。関わる筋が多いぶん扱える重量が大きくなり、そのかわり狙いは絞りにくくなります。

役割で分けるなら、重量を伸ばす枠がアップライトロー、狙いを絞る枠がサイドレイズです。三角筋後部を狙う場合は方向が変わるので、腕を横後方へ開く動きが必要になります。それぞれの目安はサイドレイズの平均重量リアレイズのやり方にまとめています。頭上へ押す種目の目安はダンベルショルダープレスの平均重量にあります。

記録に残すと、次の手幅と重量が決まる

この種目で数字を左右するのは、重量と回数だけではありません。手幅上げる高さ、そして反動の有無で、同じ重量が別の重さになります。「40kg×10回」と書いてあっても、幅が違えば比較できません。

項目を増やすと続かないので、実際的なのは器具と手幅をひとことだけ足すことです。「EZバー・くぼみの外側」や「バーベル・肩幅」のように、次回そのまま再現できる形で残せば十分です。記録する項目の決め方は筋トレ記録のつけ方完全ガイドにまとめています。

重量を上げるタイミングは、先に基準を決めておくと迷いません。厚生労働省のe-ヘルスネットも漸進性の原則を「体力・競技力の向上に伴って、運動の強さ・量・技術課題を次第に高めていくことです。いつまでも同じ強度の繰り返しではそれ以上の向上は望めません」と説明していますが、上げ幅とタイミングまでは決められていないので、そこは自分の記録から判断することになります。伸びを推移で見る方法は筋トレの成果を見える化する方法で、手集計が負担な場合はジムの筋トレ記録アプリ比較で無料枠と料金を比べています。

まとめ

  • アップライトローの主働筋は三角筋の外側部。肘が曲がる多関節種目で、腕の筋や僧帽筋の中部・下部も協働筋に入る
  • 僧帽筋の上部と肩甲挙筋は、ExRx.netの分類では安定筋。すくむのは安定筋が動きを作りにいった状態
  • 安定筋なので活動はゼロにできない。目標は「働かせない」ではなく動きを作らせない
  • 肘が先導する形にして、手首は肩の前か少し下に収める。肘は横へ向け、前に向けない
  • 上げる高さは資料によって幅がある。首まで、肩の前まで、剣状突起までの記載が重なるのは胸から肩の範囲
  • グリップ幅は、実測した研究では広げるほど三角筋と僧帽筋の活動がともに増え、上腕二頭筋は減る。「狭いと僧帽筋」とは逆向き
  • 平均は男性59kg・女性31kg(1RM)。体重70kgの男性・中級者で52kg。いずれもシャフト約20kg込みの海外ユーザー申告データ
  • ダンベル版は片手1個あたりの別集計なので、バーベルの数字と並べない
  • 記録には器具と手幅をひとことだけ足す。幅が変わると重量の比較が成立しない