総負荷量は重量 × 回数 × セット数で出します。60kgを10回、3セットなら1,800kgです。計算そのものは掛け算で終わるので、実際に迷うのはその先です。自重種目をどう数えるか、どの単位で足し合わせるか、そして出てきた数字が上がったときに何を意味するのか。この記事では、計算の手順から、週単位で同じ条件どうしを比べる見方、そして総負荷量だけでは分からないことまでを順に書きます。

計算は「1セットずつ出して足す」

総負荷量は、その日にどれだけの仕事をしたかを1つの数字にまとめたものです。研究の場ではボリュームロード(volume load)と呼ばれ、Hornsbyほか(2018)はこれを「sets × reps × load」と定義しています。日本語にすると、セット数 × 回数 × 重量。掛ける順番はどれでも同じ値になります。

まず1種目で出してみます。ベンチプレス60kgを10回、3セット。

  • 1セット目: 60kg × 10回 = 600kg
  • 2セット目: 60kg × 10回 = 600kg
  • 3セット目: 60kg × 10回 = 600kg
  • 合計: 1,800kg

全セットが同じ数字なので、600 × 3 でも 60 × 10 × 3 でも同じです。ただし、実際の記録がこんなにきれいに揃うことはあまりありません。3セット目で回数が落ちたり、重量を下げたりします。

  • 1セット目: 60kg × 10回 = 600kg
  • 2セット目: 60kg × 9回 = 540kg
  • 3セット目: 55kg × 10回 = 550kg
  • 合計: 1,690kg

平均の重量や平均の回数を出してから掛ける必要はありません。 1セットずつ計算して足すだけです。ドロップセットのように重量が段階的に下がる場合も、下がったあとの重量と回数で1行ずつ足していけば足ります。

複数種目をまとめるときも同じで、種目ごとに出した合計を足すだけです。ベンチプレス1,690kg、インクラインダンベルプレス1,200kg、ケーブルフライ720kgなら、その日の胸の総負荷量は3,610kgになります。

記録する項目そのものがまだ決まっていない場合は、筋トレ記録のつけ方完全ガイドに最小構成をまとめています。総負荷量の計算には、種目名・重量・回数・セット数の4つが揃っていれば足ります。

自重種目と時間種目は、扱いを先に決める

懸垂・腕立て伏せ・ディップスのような自重種目は、重量の欄が空のままだと0kgとして扱われ、総負荷量に乗りません。プランクやデッドハングのように時間で行う種目は、そもそも回数が無いのでこの式に載りません。

式に載らない種目をどう扱うかに、決まったやり方はありません。 選択肢は3つです。

自重種目・時間種目の3つの扱い方
扱い方向いている場面起きること
計算に入れない(セット数だけ数える)自重種目が補助的な位置づけのとき手間はいちばん少ない。自重種目の比率が高い人ほど、総負荷量が実態より小さく出る
体重(または自分で決めた割合)を重量として入れる懸垂・ディップスが主要種目のとき数字は実感に近づく。ただし種目ごとに体重の何割が乗るかは変わり、広く合意された換算値は見当たらない
加重した分だけを重量として入れる加重懸垂などで重りを足しているとき加重の伸びは追える。自重ぶんが消えるので、体重が変われば実際の負荷とずれていく

時間で行う種目(プランク・デッドハング・ファーマーズウォーク)は、回数が無いので3つのどれでも式に載りません。実施したセット数か、秒数を別の列で数えるほうが素直です

どれを選んでも構いません。大事なのは、途中で変えないことです。先月まで自重種目を数えていなかったのに今月から体重を入れると、その月だけ数字が跳ね上がります。伸びたのはトレーニングではなく数え方だった、という読み違いが起きます。

どの単位で見るか|週で、同じ条件どうしを比べる

総負荷量は、どの範囲を足し合わせるかで意味が変わります。段階は4つです。

総負荷量を見る4つの単位
単位何が分かるか使いどころ
1セット計算のもとになる値単体では読まない。足すための材料
1種目(その日)その種目でこなした量前回の同じ種目と直接比べられる。いちばん細かくて意味のある単位
部位(週)分割法での配分胸ばかりで背中が薄い、といった偏りが見える
全体(週)全体としての量頻度の増減がそのまま出る。いちばん外側の物差し

基本の単位は週です。 1日単位で見ると、胸の日と脚の日でまったく違う数字が出るので、上下の意味が読めません。週でまとめると、その週に何回行ったかも含めた量になります。

ただし週で並べるだけでは不十分で、比べる週どうしの条件が揃っていることが前提になります。揃えるのは4つです。

  1. 週の区切りを固定する― 月曜始まりなら常に月曜始まり。途中で日曜始まりに変えると、1回ぶんのトレーニングが隣の週に移動して増減が出ます

  2. ウォームアップを混ぜない― アップの軽いセットを含めるかどうかで数字は変わります。含めない側で固定するのが一般的です

  3. 種目構成を大きく変えない― マシンからフリーウエイトに替えれば扱う重量は変わります。種目を入れ替えた週の増減は、伸びではありません

  4. 回数レンジを揃える― 5回×5セットの週と12回×3セットの週を並べても、比べているのは組み方の違いです

この4つが揃っていないときに出た差は、伸びではなく測り方の差です。総負荷量を3つの指標の1つとして読む全体像は筋トレの成果を見える化する方法にまとめてあるので、使用重量や頻度と合わせて見たい場合はそちらが先になります。

総負荷量が答えないこと

総負荷量は便利な数字ですが、1つの値にまとめる過程で落ちている情報があります。3つあります。

強度の情報が抜ける

いちばん大きいのがこれです。同じ1,800kgでも、中身はまったく違うことがあります。

1RMが80kgの人を例にします。

  • 60kg × 10回 × 3セット = 1,800kg(60kgは1RMの75%)
  • 45kg × 20回 × 2セット = 1,800kg(45kgは1RMの約56%)

総負荷量は同じです。しかし扱っている重量は大きく違います。重量を下げて回数を増やせば、総負荷量は簡単に増やせてしまうということでもあります。

このことが結果に効くかどうかについては、参考になるメタ分析があります。Schoenfeldほか(2017)が21研究を対象に、低負荷(1RMの60%以下)と高負荷(60%超)を比較したものです。それによると、1RMの伸びは高負荷のほうが有意に大きく、筋肥大の変化は両者で同程度でした。ただしこれは対象となった研究のすべてのセットが限界まで行われたものに限定した分析で、総負荷量を揃えた比較ではありません。研究に参加した集団の平均的な傾向であって、あなたの組み方の正解を示す数字でもありません。

読み取れるのは1点だけです。総負荷量という1つの数字は、重量の情報を潰している。 だから量が増えたことと強くなったことを、この数字だけで区別することはできません。

戻す方法は単純で、総負荷量と一緒に強度を記録しておくことです。その重量が1RMの何%にあたるかを添えるか、そのセットのきつさ(RPE)を残します。

1RM計算機重量と回数から最大挙上重量を推定できます。Epley式・Brzycki式の両方と%1RM換算表つき(登録不要) RPE換算計算機RPEと回数から1RMを推定し、次のセットの目標重量まで計算できます(登録不要)

可動域は式に入っていない

ハーフスクワットとフルスクワットを、同じ重量・同じ回数・同じセット数で行えば、総負荷量はまったく同じ数字になります。実際に動かした距離が違っても、式には現れません。

Hornsbyほか(2018)は、通常のボリュームロード(sets × reps × load)と、移動距離を含めたVLwD(repetitions × load × displacement)を比較しています。分析したすべての期間で両者に強い相関(r ≥ 0.78、p < 0.001)が見られた一方で、変化率には差が出たとして、時間に余裕のある指導者は移動距離を計算に含めるべきだと結論づけています。

日常の記録でバーの移動距離まで測るのは現実的ではありません。実際にできる対処は、計算式を増やすことではなく、可動域を変えないことです。しゃがむ深さやバーを下ろす位置が回ごとに違えば、同じ数字が同じ内容を指さなくなります。

「週◯kgが適量」という基準はない

総負荷量に、目標にできる絶対値はありません。適量は体格・種目構成・経験年数・そのときの状況で変わります。厚生労働省のe-ヘルスネットは、筋トレについて「成人および高齢者に、筋トレを週2〜3日実施することを推奨する。」と頻度を示し、「筋肉にしっかり負荷をかけるとともに、休息日もしっかり設けることを意識しましょう」としていますが、量の目標値は示していません。

量そのものを扱った研究としては、Schoenfeldらが同じ2017年に発表した別のメタ回帰があります。15研究34群を対象に、週あたりのセット数が1つ増えるごとに効果量が0.023、増加率にして0.37%大きくなるという用量反応関係を報告したものです。ただしこれも研究に参加した集団の平均的な傾向であって、あなたにとっての適量を決める数字ではありません。増やし続ければよい、という読み方はできません。

計算する手段は3つ

計算のルールが決まったら、あとはどこで計算するかです。

総負荷量を出す3つの手段
手段向いている使い方限界
手計算その日の1種目だけを確かめる週の合計を毎回手で足すのは続かない。種目が5つあれば掛け算は15回になる
スプレッドシート自分の定義で集計したい。週別・部位別を自由に組める表の設計と関数を自分で用意する。ジムでの入力は重い
記録アプリの自動集計記録するだけで週の合計まで出る出る単位と期間はアプリが用意したものに限られる

どれか1つに決める必要はありません。記録はアプリで取り、CSVで書き出して表計算ソフトで集計する組み合わせが現実的です

手計算は、その日の1種目を確かめるぶんには十分です。ただし週の合計を毎回出すとなると、種目数×セット数ぶんの掛け算と足し算が毎回発生します。ここが理由で止まることが多いので、続かないと感じたら早めに別の手段へ移してください。記録そのものの手間を削る方法は筋トレの記録がめんどくさい人へにまとめています。

スプレッドシートなら、1行1セットで記録して、隣の列に重量×回数を出しておけば、週ごとの合計はピボットテーブルか関数で出せます。列構成と具体的な式は筋トレ記録スプレッドシートの作り方に載せているので、そのまま写せます。この記事で決めたルール(自重種目の扱い・ダンベルの数え方・ウォームアップを含めない)を、その列の式に反映させる形になります。

記録アプリは、記録した時点で計算が終わっています。確認しておきたいのは、ウォームアップが集計に含まれるかどうかと、週の区切りがどこかの2点です。LiftLogの場合、ウォームアップにしたセットは記録には残りつつ集計からは外れ、週は月曜始まりで区切られます。種目ごとのグラフではボリュームの推移を、分析画面では週ごとの総ボリュームと部位別のセット数バランスを見られます。

数字が動いたとき、何を意味するか

最後に、出てきた数字の読み方です。総負荷量は上がり方が何通りもあるので、どう上がったかまで見ないと判断を誤ります。

総負荷量の動き方と、その中身
数字の動き中身読み方
重量が上がって、回数・セット数は同じ強度も量も上がっているいちばん素直な前進。漸進性過負荷が起きている
重量そのままで回数が増えた量が増えた。強度は同じ前進だが、次は重量を上げる段階が近い
セット数を増やした量だけが増えた疲労も増える。休息日が確保できているかを併せて見る
重量を下げて回数を大幅に増やした数字は増えるが、扱う重量は下がっている「伸びた」とは読めない。1RM%やRPEで確認する
下がった頻度・セット数・切り上げのいずれか理由を思い出せるなら問題ない。デロード週・減量中・繁忙期は下がるのが正常

e-ヘルスネットは、筋トレの負荷について「日常生活レベル以上の負荷を繰り返しかけ、慣れてきたら少しずつ負荷を高めていく(=漸進性過負荷の原則)ことが重要です。」としています。総負荷量はこの「少しずつ高めていく」が起きているかを見るための数字ですが、上の表のとおり、増え方によっては負荷が高まっていないこともあります。

数字が止まって見えるときの読み方と、使用重量・頻度と組み合わせた判定は筋トレの成果を見える化する方法に整理してあります。

まとめ

  • 総負荷量は1セットごとに重量×回数を出して足す。全セットが同じ数字のときだけ「重量×回数×セット数」でまとめられる
  • ダンベル種目は片手あたりか左右合計かを決めて固定する。決め方より、変えないことのほうが大事
  • 自重種目・時間種目に決まった扱いは無い。入れない/体重で入れる/加重分だけ入れるから選んで固定する
  • 見る単位は。週の区切り・ウォームアップ・種目構成・回数レンジを揃えていない週どうしは比べられない
  • 総負荷量には強度の情報が入っていない。重量を下げて回数を増やしても数字は増える。1RM%かRPEを併記する
  • 可動域も式に入っていない。計算を増やすより、可動域を変えないことで揃える
  • 「週◯kgが適量」という基準は無い。他人とではなく、自分の先週・先月と比べる

まずは次のトレーニングで、1種目だけ計算してみてください。1,800kgという数字そのものより、来週の同じ種目が1,900kgになったかどうかのほうが、判断の材料になります。