筋トレノートが続くかどうかは、書く気力ではなく書式で決まります。毎回同じ形の行を足すだけの状態になっていれば、書く時間は1種目あたり数秒で済み、前回の数字も探さずに見つかります。逆に、日によって書く項目が変わるノートは、あとで開いても前回と比べられません。ここでは、1行に収める書式の作り方、ウォームアップとRPEの記号化、見開きの分け方、巻末に置くふり返りページまでを順に決めていきます。必要なのはノート1冊とペンだけです。
続くノートに共通する3つのこと
ノートが途切れるとき、原因は書く内容ではなく、書くまでの手数にあることがほとんどです。続いているノートを分解すると、次の3つが揃っています。
書式が毎回同じ。 種目名をどこに書くか、重量と回数をどの順で並べるかが決まっていれば、ペンを持ってから考えることがなくなります。決めるのは最初の1回だけで、あとは前の行をなぞるだけになります。
書く場所と道具が決まっている。 ノートとペンをジムバッグに入れっぱなしにする、ロッカーに置かずベンチの脇に持っていく、といった置き方の話です。厚生労働省のe-ヘルスネットは、運動を続けるための働きかけのひとつとして「刺激の統制」を挙げ、身体活動に取り組みやすい環境づくりをすることだと説明しています。ノートを取り出すまでの動作を減らすのは、この考え方を書く行為のほうに当てはめたものにあたります。
その場で書く。 セットを終えた直後なら、重量も回数も思い出す必要がありません。帰宅後にまとめて書こうとすると、正確に残せるのは直近の1〜2種目までで、抜けた種目がそのまま空白になります。
3つのうち、自分で設計できるのは1つめの書式です。残り2つは、書式が決まっていれば自然についてきます。
1行書式の作り方
紙に書く記録は、1種目を1行に収めるのが基本形になります。行が縦に並ぶので、前回と今回を上下で見比べられます。筋トレの記録がめんどくさい人へで紹介した1行書式を、ここでは記号の決め方まで含めて詰めていきます。
まず、その日のヘッダを1行だけ置きます。「8/8(金) 胸・三頭」のように、日付と部位が分かれば足ります。
その下に種目を並べます。1セット目は「ベンチプレス 60×8」の形で、種目名・重量・回数の順に書きます。
2セット目以降、重量が同じなら回数だけをカンマで足します。「ベンチプレス 60×8,8,7」で「60kgを8回・8回・7回の3セット」を表せます。セット数を別に書く必要はありません。カンマの数がそのままセット数になるからです。
重量を変えたセットは、そこだけ「重量×回数」に戻します。「ベンチプレス 60×8,8 / 57.5×7」のように、スラッシュを「ここから重量が変わる」の合図に使います。区切り記号を2種類持っておけば、どんな組み方でも1行に収まります。
ここまでで使う記号と、あとで足す記号をまとめると次のようになります。
| 記号 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| × | 重量と回数の区切り | 60×8 = 60kgを8回 |
| , | 同じ重量で次のセット | 60×8,8 = 60kgを8回ずつ2セット |
| / | ここから重量が変わる | 60×8,8 / 57.5×7 |
| W | ウォームアップのセット | W 40×10 |
| @ | そのセットのRPE | 60×8@8 |
| ★ | 自己ベストを更新した行 | ベンチプレス 62.5×8 ★ |
ウォームアップは記号で分ける。 アップのセットを本番と同じ形で書くと、翌週に前回の数字を探すときに目が滑ります。行頭にWを付けて「W 40×10」「W 50×5」のように書いておけば、本番のセットだけを縦に追えます。アップの重量を毎回同じにしている人は、記録そのものを省いても構いません。
RPEは数字を1つ添えるだけにする。 RPEはそのセットのきつさを表す数値で、Zourdosら(2016)の定義では「あと何回上げられるか(RIR)」に対応します。RPE8なら、あと2回残した状態です。紙に書くなら、回数のうしろに「60×8@8」と足すのがいちばん短く済みます。ただしRPEは、重量の伸びが止まってから足す項目です。始めたばかりのうちは書かなくて構いません。
RPE計算機RPEと回数から1RMと次のセットの目標重量を計算できます。RPEとRIRの対応表つき(登録不要)凡例はノートの1ページ目に書く。 記号を決めても、2週間空けると自分でも読めなくなります。表紙の裏か1ページ目に、上の表をそのまま書き写しておいてください。使う記号は多くても5つまでに抑えます。これ以上増やすと、書くたびに「どれを使うか」を判断することになり、書式を固定した意味がなくなります。
見開きは左が記録、右がメモ
書式を決めても、体調やフォームの気づきを同じ行に書き足していくと、行の形が崩れます。文章は記録から物理的に離すのが解決策です。
見開きを1回のトレーニングに割り当てて、左右で役割を分けます。
| ページ | 書くもの | 形式 |
|---|---|---|
| 左 | 日付・部位・種目ごとの1行 | 決めた書式だけ。文章は書かない |
| 右 | 体調・睡眠・気づき・次回やること | 自由。書くことがなければ空白のまま |
左は毎回同じ形で埋まり、右は日によって空白になります。それでいい、というのがこの分け方の要点です。左が埋まっていれば記録としては成立していて、右は書きたい日だけのものです。「今日は何も気づきがなかった」と悩む必要がなくなります。
見開き1つを1週間に割り当てる形もあります。週2〜3回のトレーニングなら1週間ぶんが左ページに収まり、その週に何をどれだけやったかが一目で見えます。どちらを選ぶかは、1回あたりの種目数で決めてください。種目が6を超えるなら1回で見開き1つ、5以下なら1週間で見開き1つが収まりやすい行数です。この数字は1ページの行数からの目安なので、実際に2週間書いてみて、はみ出すようなら1回単位に切り替えます。
巻末にふり返りページを2枚作る
日付順のノートは、時間が経つほど過去の数字を探しにくくなります。半年前のベンチプレスの最高重量を知りたいとき、ページをさかのぼることになるからです。これを補うのが、ノートの後ろから使うふり返りページです。使い始める前に、2枚だけ確保しておきます。
1枚目は自己ベスト一覧。 種目・記録・日付の3列だけの表にします。
| 種目 | 記録 | 日付 |
|---|---|---|
| ベンチプレス | 62.5×8 | 8/8 |
| スクワット | 90×5 | 7/25 |
| デッドリフト | 110×5 | 7/18 |
更新したときは、古い行を消さずに下へ足していきます。上書きすると「いつ、どれだけ伸びたか」が残りません。行が増えていくこと自体が、そのまま伸びの記録になります。
2枚目は月末のまとめ。 月に1回、主要な5種目の最高重量を書き写します。5種目なら1分で終わります。日々の記録を全部集計する必要はなく、月ごとの点が5つ並べば、伸びているか横ばいかは判断できます。
重量が横ばいに見えるときは、回数のほうが伸びていることがあります。重量と回数をまとめて1つの数字に直す推定1RMを使うと、その変化を追えます(1RM計算機)。
週にできた回数も、ふり返りの対象になります。e-ヘルスネットの「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シートは、成人および高齢者に、筋トレを週2〜3日実施することを推奨するとしています。左ページの日付を数えるだけで、その週に何回できたかは分かります。
同じくe-ヘルスネットは、行動を続ける自信を支えるものとして「成功経験」を挙げ、実際に自分が行ってみて、うまくできたという経験のことだと説明しています。自己ベスト一覧は、その経験を1ページに集めたものにあたります。ノートを開くたびに目に入る場所へ置いておく理由がここにあります。
紙で詰まるところと、その埋め方
紙が不利になる点は、あらかじめ分かっています。避けようとするより、埋め方を先に決めておくほうが早いです。
集計とグラフが作れない。 週あたりの総ボリュームや部位ごとのセット数は、手で計算しない限り出てきません。対処は、集計する対象を主要種目の最高重量だけに絞ることです。月末のまとめページがその役割を持ちます。全部を集計しようとすると、まず続きません。
種目ごとに並べ替えられない。 ノートは日付順に並ぶので、「スクワットだけを時系列で見る」という読み方ができません。自己ベスト一覧が、種目別の索引を兼ねます。
自己ベストの判定が自分頼みになる。 更新したかどうかを教えてくれる仕組みはないので、★を付ける動作を書く手順の一部にしてしまいます。前回の行がすぐ上にあるぶん、その場で気づけます。
紛失と汚損。 数か月ぶんの記録が1冊に集まるので、失くしたときの損失は日を追うほど大きくなります。ジムバッグの中では汗や飲み物で滲むこともあります。対処は、月末に見開きをスマホで撮ってクラウドに置くことです。1回1分で済み、月末のまとめを書く動作とまとめてしまえば忘れません。書くペンを油性のボールペンにしておくと、水濡れでの滲みも減ります。
最初の1週間でやること
1ページ目に凡例を書く― 使う記号は5つまで。あとで足したくなったら、そのときに書き足します
後ろから2枚を空けておく― 1枚目は自己ベスト一覧、2枚目は月末のまとめに使います
1回目は書式を決めるだけのつもりで書く― 行が長すぎる・狭すぎると感じたら、その場で直して構いません
2回目からは前回の見開きを開いてから始める― 白紙から書き起こさず、前回の行をなぞる形にします
月末に5種目を書き写して、見開きを撮る― まとめと写真バックアップを同じ日にまとめてしまいます
書式が固まるまでに2〜3回かかります。書きにくいと感じるのはこの期間なので、続くかどうかの判断は、凡例どおりに書けるようになってからにしてください。
まとめ
- 続くノートは書式が毎回同じ・書く場所が決まっている・その場で書くの3つが揃っている
- 1行は「種目 重量×回数,回数,回数」。区切りは × と , と / の3つで足りる
- ウォームアップはW、RPEは@数字、自己ベストは★。記号は5つまでにして、凡例を1ページ目に書く
- 見開きは左が記録・右がメモ。文章を記録の行に混ぜない
- 巻末にふり返りページを2枚。自己ベスト一覧と月末のまとめの2つで足りる
- 紛失対策は月1回の写真バックアップ。月末のまとめと同じ日にやる
紙のノートは、書式さえ固定できれば記録の道具として十分に成立します。書けなくなるのは意志が続かなかったからではなく、たいてい書式が決まっていないからです。
集計やグラフ、自己ベストの自動判定が必要になったと感じたときが、道具を変えるタイミングです。そこを自動でやるのが記録アプリの役割で、無料の範囲でどこまでできるかはアプリごとに違います(ジムの筋トレ記録アプリ比較)。紙で書いていたときの速さを落としたくない場合は、1セットあたりの操作数で選ぶ形もあります(シンプルな筋トレ記録アプリの選び方)。


