停滞期を抜ける方法を調べると、種目を変える・重量を上げる・頻度を変える・休む、といった手が並びます。どれも成立する手ですが、自分の停滞がどれに当たるのか分からないまま試すと、効いたかどうかも読めません。順番として先に来るのは原因の切り分けです。手元の記録を、測る条件 → 頻度 → 週の総負荷量 → 回数レンジ → 余力の順に見ていけば、種目が何であれ当たりは絞れます。そのうえで、見つかった場所に対応する手を1つだけ打ちます。
停滞かどうかは、並んだ数字で決まる
伸びていない感覚と、実際に伸びていないことは別です。前回より重く感じた日や、最後の1回が上がらなかった日は印象に残りますが、それは1回ぶんの出来事でしかありません。判断に使うのは並んだ数字のほうです。
見るのは1つだけで、同じ種目・同じ条件で重量と回数が並んでいるかどうかです。どの種目でも、直近の数回ぶんをこの形に書き出せば足ります。
- 4週前: 50kg × 10回 / 9回 / 8回
- 3週前: 50kg × 10回 / 9回 / 8回
- 2週前: 50kg × 10回 / 10回 / 8回
- 1週前: 50kg × 10回 / 9回 / 8回
この形で並んでいるなら、負荷は上がっていません。2セット目が9回と10回で揺れているのは、その日のコンディションの範囲です。逆に、メインセットの回数が10回から11回に増えているなら、重量の欄が動いていなくても前進しています。停滞のサインの読み方全体は筋トレの成果を見える化する方法に整理してあります。
「◯週で停滞」という基準はない
停滞期の記事には、3週間続いたら、初心者なら3か月ごろ、といった期間が書かれていることがあります。ただし出どころをたどれるものは確認できませんでした。数字も3週間から1年までばらついています。
そもそも伸びの止まり方は、種目・経験年数・体重の増減・そのときの体調で変わりますし、公的機関のガイドにも一律の判定基準は示されていません。ここで数字を作って基準のように書くことはできません。
代わりに使えるのは、回数の数え方です。週2〜3回の頻度で回しているなら、3〜4週で同じ種目を6〜12回こなしている計算になります。その全部で重量も回数も同じ数字が並んでいるなら、判断材料は揃っています。これは判定基準ではなく、材料が揃ったかどうかの数え方です。
重量が横ばいでも、回数が伸びていれば止まっていない
止まっていると誤判定する原因でいちばん多いのが、回数の伸びを拾えていないことです。ここを揃えるのに使うのが推定1RMで、重量と回数から1回だけなら何kg挙げられそうかを見積もる値です。よく使われるEpley式は「重量 ×(1 + 回数 ÷ 30)」という形をしています。
このとき、1回の伸びが重量に直して何kgぶんに当たるかは、回している回数レンジによって変わります。
- 5回のレンジ: 80kg × 5回は93.3kg、80kg × 6回は96.0kg。重量に直すと約2.3kgぶんの前進
- 10回のレンジ: 50kg × 10回は66.7kg、50kg × 11回は68.3kg。重量に直すと約1.25kgぶんの前進
高回数で回しているほど、1回ぶんの重みは小さくなります。10回で回している種目に2.5kgを足すのは、1回の伸びの2倍ぶんを一度に要求することにあたります。回数が大きく落ちるのは自然な結果です。
1RM計算機重量と回数から最大挙上重量を推定できます。Epley式・Brzycki式の両方と%1RM換算表つき(登録不要)切り分けは、種目が変わっても同じ5段階
止まっていることが確かめられたら、原因を探します。見る順番は固定します。外側から順に見るのは、条件が崩れていれば比較そのものが成立せず、頻度が落ちれば量も落ち、量が長く落ちれば重量も伸びにくくなる、という向きの依存があるからです。
| 段階 | 見るもの | 止まっているサイン |
|---|---|---|
| 0. 条件 | 同じ条件で並べられているか | ウォームアップの混入・器具や持ち方の変更・可動域の変化がある |
| 1. 頻度 | その種目を週に何回やっているか | 週あたりの回数が以前より減っている |
| 2. 週の総負荷量 | 重量 × 回数 × セット数の週合計 | 週の合計が横ばい、または下がり続けている |
| 3. 回数レンジ | 記録に残っている回数の分布 | いつも同じ回数帯の記録しかない |
| 4. 余力(RPE) | メインセットのきつさ | 同じ重量・同じ回数でRPEが上がり続けている |
※ 上から順に見ます。途中で当たりが見つかったら、そこで止めて対応する手を打ってください。全部を同時に確認して全部を直そうとすると、次の記録がどれの結果なのか読めなくなります
段階0|測る条件が変わっていないか
切り分けに入る前に済ませる確認です。ここが崩れていると、伸びていないのではなく比べられていないだけ、ということが起きます。種目を問わず起きるのは次の4つです。
ウォームアップのセットが混ざっている — ― 軽いアップが同じ種目として並んでいると、最大重量も推定1RMも実態より低く出ます
器具が変わった — ― バーベル・ダンベル・スミスマシン・マシンは、それぞれ別の記録です。同じ種目名で並べられません
可動域や動作の止め方が変わった — ― 深く下ろす日と浅い日、静止させる日と切り返す日の記録を並べても、伸びは判断できません
持ち方・足幅・角度を変えた — ― 数センチ・数度の違いで扱える重量は動きます。変えた日はメモに残しておきます
期間の取り方も同じです。1ヶ月の表示では、その日のコンディションによる上下しか見えません。重量と推定1RMは3〜6ヶ月で取ると、線の向きが読めるようになります。
段階1|その種目を週に何回やっているか
いちばん最初に数えるのは頻度です。地味ですが、自分の意思でいちばん動かせる数字で、しかも予定と実績がずれやすい項目でもあります。
数える単位は月ではなく週にします。「今月は6回」という数字は、週1回半を4週続けた月と、最初の2週で4回行ってあとが失速した月を区別できません。
頻度と筋力の関係については、Grgicらが2018年に発表したメタ分析があります。頻度が高いほど筋力の伸びは大きかった一方で、週の総量をそろえて比べた研究に限ると、頻度による差は有意ではありませんでした(p = 0.421)。著者らは、頻度の効果は主にトレーニング量によって生じていると結論しています。
つまり、週1回を週2回にすると伸びやすくなるとしても、効いているのは回数そのものより、その結果として週にこなす量が増えることのほうです。頻度を最初に見るのは、それが量の入り口にあたるからです。
厚生労働省のe-ヘルスネットは、筋トレについて「成人および高齢者に、筋トレを週2〜3日実施することを推奨する。」としていますが、これは筋トレ全体としての頻度で、1種目に何回という基準ではありません。
段階2|週の総負荷量が横ばいになっていないか
頻度が保たれているなら、次は量です。総負荷量は重量 × 回数 × セット数で出す数字で、週ごとに合計して並べます。
重量が「どれくらい強いか」を表すのに対して、この数字は「どれくらいの仕事をしたか」を表します。重量が横ばいでも総負荷量が上がっているなら、こなしている量は増えています。逆に、重量も総負荷量も横ばいなら、負荷は据え置きのままです。
量を追う理由には裏づけもあります。Schoenfeldらが2017年に15研究34群を対象に行ったメタ回帰は、週あたりのセット数が増えるほど筋量の増加が大きくなる用量反応関係を報告していて、セットが1つ増えるごとに効果量が0.023、増加率にして0.37%大きくなる、という結果を示しています。ただしこれは研究に参加した集団の平均的な傾向であって、あなたにとっての適量を決める数字ではありません。
計算の手順とダンベル種目の数え方は総負荷量の計算方法にまとめています。
段階3|回数レンジが1つに偏っていないか
頻度も量も動いているのに重量が伸びない場合、次に見るのは記録された回数の分布です。毎回8回から10回のあいだしか記録がない、という状態になっていないでしょうか。
同じレンジだけを回していると、そのレンジでの回数は伸びても、より重い重量を実際に扱う機会がありません。e-ヘルスネットは特異性の原理を「運動中のエネルギーの使われ方や筋肉の活動の仕方と関係する能力が増加することです」と説明しています。重い重量を挙げられるようになりたいなら、重い重量を扱う機会が要る、という向きで読める記述です。
負荷の高さそのものについては、Schoenfeldらが2017年に21研究を対象に行った別のメタ分析が参考になります。低負荷(1RMの60%以下)と高負荷(60%超)を比べたところ、1RMの伸びは高負荷のほうが有意に大きく、筋肥大の変化は両者で同程度でした。ただしこれは、対象となった研究のすべてのセットが限界まで行われたものに限定した分析で、総負荷量を揃えた比較でもありません。読み取れるのは、1RMを伸ばしたい局面では負荷の高さが効いてくる、という向きだけです。
段階4|同じ重量で余力が減っていないか
ここまでの3つが動いているのに伸びない場合、疑うのは疲労です。ただし疲労は重量と回数の数字には出ません。出るのは、そのセットのきつさを記録している場合だけです。
RPEは、そのセットであと何回上げられたかを10点満点に置き換えた数値です。Zourdosらが2016年に定義したスケールでは、あと何回上げられるかを表すRIRとの関係が「RPE = 10 − RIR」になります。RPE8なら、あと2回残っていたという意味です。
読み方は単純です。
- 同じ重量・同じ回数でRPEが下がっている — 同じ仕事に余力が生まれています。重量を上げる判断材料が揃いつつあります
- 同じ重量・同じ回数でRPEが上がり続けている — 同じ重量が重く感じています。睡眠・食事・前の種目の疲労など、当日の要因が乗っていることが多い状態です
1回の上下では判断しないでください。RPEは主観なので単発ではぶれます。同じ向きが数回続いたかどうかで読みます。付け方と限界はRPEとはにまとめてあります。
記録では判定できない原因は、別の手段に切り替える
5段階で当たりがつかないこともあります。そのときは、記録に映らない側に原因があると考えて、確かめる手段を切り替えます。
| 原因の候補 | 確かめ方 |
|---|---|
| フォームとセットアップ | 真横から動画を撮る。重量と回数の数字には現れない |
| その種目に固有の条件 | グリップ幅・足の位置・角度など、種目ごとに違う項目を洗い出す |
| インターバルの長さ | ふつう記録に残っていないので、その場でタイマーを見る |
| 睡眠・食事・体重の変化 | トレーニング記録とは別に残して、あとで突き合わせる |
※ この4つは記録を見ても判定できません。記録側を先に見るのは、記録がすでに手元にあって数分で確認が終わるからであって、これらが軽い原因だという意味ではありません
種目に固有の条件は、その種目の側で洗い出すことになります。ベンチプレスならグリップ幅・足の位置とブリッジ・胸で止めるかどうかが、記録の連続性を崩す代表的な項目です。ベンチプレス1種目に絞った切り分けはベンチプレスが伸びない原因にまとめてあり、この記事の5段階をベンチプレスの条件に落とした形になっています。インターバルの目安は筋トレのインターバルは何分?にあります。
原因ごとの打ち手|見つかった場所に1つだけ打つ
当たりがついたら、変えるのは1つだけにします。理由は単純で、2つ同時に変えると次の記録がどちらの結果なのか読めなくなるからです。
| 止まっていた場所 | 打ち手 | 打ったあとに見る数字 |
|---|---|---|
| 段階0 条件 | 条件を元に戻し、ウォームアップを集計から外す | 翌週の記録がそのまま戻るか |
| 段階1 頻度 | その種目を行う週あたりの回数を戻す | 週の総負荷量が上がるか |
| 段階2 総負荷量 | 1種目ぶんセットを1つ増やす | 週の合計が上がり、翌週の回数が保てるか |
| 段階3 回数レンジ | いつもより少ない回数のセットを1つ足す | 推定1RMが上がるか |
| 段階4 余力 | 量を落とす週を置くか、記録の外の要因を確認する | 同じ重量のRPEが下がるか |
※ どれも一度に1つだけです。並べた順に全部やる表ではありません
総量を増やす
段階2で止まっていたなら、セットを1つ増やします。増やすのは1種目ぶんだけにして、他の種目はそのままにします。全体を一度に増やすと、どこが効いたのか分からないうえに、翌週の回復も読めなくなります。
増やせば増やすほどよい、という読み方はできません。e-ヘルスネットは「筋肉にしっかり負荷をかけるとともに、休息日もしっかり設けることを意識しましょう」としたうえで、「なお、筋トレの時間が長くなりすぎると逆効果となる可能性も示されていますので、健康づくりを目的に行う場合は、やりすぎに注意が必要です」とも書いています。
回数レンジを変える
段階3で止まっていたなら、レンジを1つ足します。何回にすべきかの正解はありませんが、いつもより少ない回数のセットを1つ加えると、記録に別の帯が生まれます。異なるレンジどうしを比べたいときは、推定1RMに直すと1本の線に乗ります。
レンジを足したうえで重量をいつ上げるかは、筋トレで重量を上げるタイミングに判断基準を2つ整理しました。上げ幅をkgではなく%で決める考え方も同じ記事にあります。
種目を入れ替える、または足す
停滞したときの定番の手ですが、効果の見立ては結論が割れています。
Baz-Valleらが2019年に行った研究は、トレーニング経験のある男性21名を8週間・週4回で追跡し、アプリで毎回ランダムに種目を変える群と、種目を固定する群を比べました。結果は、ベンチプレスとスクワットの1RMも、大腿部の筋厚も、両群で差がありませんでした。一方で、種目を変えた群ではトレーニングへの内発的な動機づけが有意に向上し、固定群では低下する傾向が見られています。
これに対して、Fonsecaらが2014年に発表した研究では別の結果が出ています。身体活動のある49名を12週間・週2回で4群に分け、強度を一定にしたまま種目を変えた群が、他のどの群よりも筋力の伸びが大きくなりました。種目を変えた2群では、大腿四頭筋の各頭でより均等な肥大も見られています。
足す方向は、同じ動作を別の角度や器具で行うものを選ぶと、記録上の扱いも分けやすくなります。押す動作ならケーブルクロスオーバーのように高さで効き方が変わる種目、引く動作ならペンドレイローのように体幹の角度を固定する種目があります。e-ヘルスネットが挙げる全面性の原則も「有酸素能力・筋力・柔軟性などの体力要素をバランスよく高めることです」としていて、偏りを直す方向として読めます。
記録上の注意はひとつだけです。同じ種目名で別の種目を混ぜないこと。角度も器具も違うものを同じ名前で入力すると、推移のグラフが1本に混ざって、どちらの数字も読めなくなります。
計画的に量を落とす週を置く
頻度も量もレンジも動いているのに伸びが止まり、同じ重量のRPEだけが上がっている場合は、量を落とす週を置く選択肢があります。e-ヘルスネットは反復性・周期性の原則を「運動プログラムは、ある程度の期間、規則的に繰り返すようにします」と説明していて、同じ強度をただ続けることだけを求めてはいません。ただし、何週ごとに何割落とせばよいかを決められる一次情報は確認できませんでした。数値の目安を作る代わりに、落とした週があったことと落とした理由を記録に残して、戻した翌週の数字と突き合わせられるようにしておいてください。
停滞と「維持で十分な時期」は別物
止まっている記録が、そのまま失敗を意味するとは限りません。減量中・繁忙期・ケガ明けといった時期は、横ばいであることのほうが正常です。
維持に必要な量は、伸ばすときより少なくて済みます。Bickelらが2011年に発表した研究は、70名を対象に週3回16週間のトレーニングを行ったあと、32週間を「完全に中止」「量を3分の1に減らす」「量を9分の1に減らす」の3条件に無作為に割り付けました。若年の参加者では、どちらの維持条件でも前半で得た筋肥大が保たれ、3分の1の条件ではむしろ筋線維の肥大が追加で起きています。前半で得た筋力については、中止した条件でもおおむね保たれ、最後の時点でわずかに下がっただけでした。同じ研究は、高齢者では若年より多い量が必要だと結論しています。
減量中についても同じことが言えます。MurphyとKoehlerが2022年に行ったメタ分析は、エネルギー不足の状態で3週間以上の筋トレを行った研究を集め、除脂肪量の増加は阻害された一方で、筋力の伸びには統計的に有意な差が認められなかったと報告しています。減量が何の影響も与えないという意味ではありませんが、体重が減っている時期に数字が横ばいであること自体は、想定の範囲に入ります。
痛みや違和感が出ているセットは、停滞とは別の問題です。この記事で扱っているのは重量と回数の話で、痛みは対象外です。違和感があるときは中止して、必要に応じて医療機関に相談してください。
まとめ
- 停滞かどうかは感覚ではなく、同じ重量・同じ回数が並んだ回数で数える。「◯週で停滞」と言い切れる基準はない
- 重量が横ばいでも回数が伸びていれば前進。1回の伸びが重量に直して何kgぶんかは、回数レンジによって変わる
- 切り分けは種目を問わず条件 → 頻度 → 週の総負荷量 → 回数レンジ → 余力の5段階。外側から順に見る
- 頻度の効果は主に週の総量によって生じている。まず週に何回やっているかを数える
- フォーム・種目固有の条件・インターバル・睡眠は記録では判定できない。動画・タイマー・別の記録に切り替える
- 打ち手は見つかった段階に対応させて1つだけ。2つ同時に変えると次の記録が読めなくなる
- 種目を変えることの効果は研究の結論が割れている。筋肉への刺激を変える手であって、特定の種目の数字を伸ばす手ではない
- 減量中・繁忙期は維持できていることが成果。維持に必要な量は伸ばすときより少なくて済むという報告がある
まずは止まっていると感じている種目の、直近4回ぶんの記録を書き出してみてください。並べた時点で、止まっているのか、回数だけが伸びているのかが分かります。



