セット間の休憩の目安は、狙うものによって変わります。米国スポーツ医学会(ACSM)が2009年の声明で示している範囲でいえば、高重量を扱う段階は3〜5分、筋肥大をねらう帯は1〜2分、回数を稼ぐ種目は90秒未満です。ただしこれは「守らないと効かない線」ではありません。ここ10年の比較試験が示しているのは、休憩の長さそのものより、休憩を削ったせいで次のセットの回数が落ちることのほうが結果を動かす、という関係のほうです。
目的別のインターバルの目安
まず数字から置きます。下の表は、公的な推奨として引用されることの多い2本をそのまま並べたものです。
| 目的 | ACSM(2009) | de Sallesら(2009) |
|---|---|---|
| 筋力(高重量・低回数) | 3〜5分(1〜6RMを扱う段階) | 3〜5分 |
| 筋肥大 | 1〜2分(6〜12RM帯) | 30〜60秒 |
| パワー | 3〜5分 | 記載は1分より3分・5分が優位 |
| 筋持久力 | 90秒未満(40〜60%1RM・15回超) | 20秒〜1分 |
※ ACSMは米国スポーツ医学会の2009年の声明、de Sallesらは同年に35件をまとめたレビューです。両者で筋肥大の欄が食い違っている理由は次の節で扱います
数字が2列に分かれているのは書き写しの誤りではなく、同じ2009年でも筋肥大の推奨が食い違っていたからです。この食い違いはその後の研究で決着に近づいているので、あとで詳しく見ます。
ここで先に確認しておきたいのは、この表が処方ではないということです。厚生労働省のe-ヘルスネットは筋力トレーニングについて週2〜3日の実施と漸進性過負荷の原則を示していますが、セット間の休憩時間について分数は示していません。日本の公的資料に分数の基準があるわけではなく、上の表はいずれも学会・レビューの推奨レンジです。
1RM計算機(%1RM換算表つき)重量と回数から最大挙上重量を推定し、6RM・12RMがおよそ何kgかを早見できます(登録不要)なぜ「秒」ではなく「分」で考えるのか
30秒と3分で結果が変わるのは、セットで使い切ったものが戻るのに、それだけの時間がかかるからです。
高重量のセットで最初に足りなくなるのは、筋肉のなかに蓄えられている即効性のエネルギー源(クレアチンリン酸)です。Harrisら(1976)は太ももの筋肉で、疲労困憊の直後にこの物質が安静時の15〜16%まで落ちること、そこからの回復が二相性で、速い相の半減期が21〜22秒、遅い相は170秒を超えることを報告しています。血流を止めると再合成はまったく進まなかったとも書かれていて、回復が血液の循環に依存していることが分かります。
半減期が21〜22秒ということは、1分ほどで大半は戻る計算になります。ただし残りは分単位でゆっくりとしか進みません。30秒では明らかに足りず、かといって5分を超えても取り戻せる分は小さいという桁感は、この形から素直に出てきます。
「短いほど追い込める」は成り立つのか
短い休憩を勧める説明を見かけたことがあると思います。出どころのひとつが、上の表にも入っているde Sallesら(2009)です。同レビューは筋肥大について「中程度の強度と30〜60秒の短い休憩の組み合わせが最も効果的かもしれない」と書いていますが、その理由として挙げているのはそうしたトレーニング中に成長ホルモンが急性に多く出ることでした。長期の筋肥大そのものを比べた結果ではありません。
その後、直接比べた試験が出ています。
Schoenfeldら(2016)は、トレーニング経験のある男性21名を1分休憩の群と3分休憩の群に分け、8週間・週3回・7種目×3セット(8〜12RM)を実施させました。結果は次のとおりです。
- 1RMのスクワットとベンチプレスは、どちらも3分群が有意に上回った
- 大腿前部の筋厚も3分群が有意に大きく、上腕三頭筋も差が出る傾向があった(p = 0.06)
- 上半身の筋持久力は両群とも伸び、群間の差はなかった
レビューの結論も同じ向きです。Grgicら(2017)は6件をまとめて「短い休憩も長い休憩もどちらも役に立ちうる」としたうえで、訓練者を対象に感度の高い測定を行った研究では長い休憩に利がある可能性があると述べています。筋力についてまとめたGrgicら(2018)は23件・491名を検討し、60秒未満でも十分な筋力の伸びは得られるとしつつ、訓練者は2分より長い休憩、未訓練者は60〜120秒という区別を置いています。
いちばん新しいのがSingerら(2024)のベイズメタ分析です。9件・19測定を統合した結論は次の2点でした。
- 60秒を超える休憩に、小さいながら筋肥大上の利がある
- ただし90秒を超えて休んだ場合の差は検出されなかった
同論文は、この結果が全米ストレングス&コンディショニング協会(NSCA)の30〜90秒という推奨とは一致しない、とも明記しています。
差を作っているのは休憩ではなく、こなせた回数
ではなぜ長めの休憩のほうが結果が出るのか。ここが、分数の話でいちばん実務に効く部分です。
Singerら(2024)は、60秒以下の休憩について複数セットにわたって行える回数を目立って減らすと整理し、60秒超で見られた筋肥大の利は「ボリューム量の減少を介したものかもしれない」と書いています。de Sallesら(2009)も、50〜90%1RMの負荷では3〜5分の休憩のほうが複数セットで多くの回数ができたこと、3〜5分で絶対筋力の伸びが大きかったのはより高い強度と量でトレーニングできたためだとしています。
この読みを直接検証したのがLongoら(2022)です。28名が10週間・週2回、片脚ずつ4条件のレッグエクステンション(80%1RM)を行いました。3分休憩、1分休憩、そして1分だが総ボリューム量を3分の条件に揃えた群、3分だが総ボリューム量を1分の条件に揃えた群の4つです。
| 条件 | 休憩 | 総ボリューム量 | 1RMの増加 | 大腿四頭筋断面積の増加 |
|---|---|---|---|---|
| LI | 3分 | 多い | 27.6% | 13.1% |
| VLI-SI | 1分 | 3分と同じに調整 | 31.1% | 12.9% |
| SI | 1分 | 少ない | 26.5% | 6.8% |
| VSI-LI | 3分 | 1分と同じに調整 | 31.2% | 6.6% |
※ 1RMは4条件とも有意に増加し、条件間の差はありませんでした。断面積は上2条件が下2条件を有意に上回っています(p < 0.05)。片脚ずつ条件を割り当てた単関節種目の試験なので、この数値をそのまま全種目に当てはめることはできません
表を縦に見ると、断面積が伸びたのはボリューム量が多かった側の2条件で、休憩が3分か1分かでは分かれていません。3分休んでもボリューム量を1分の条件まで減らすと6.6%にとどまり、1分でもボリューム量を揃えれば12.9%まで届いています。著者らの結論は、筋力には高い負荷を維持できることが、筋肥大にはボリューム量が大きいことが主に効いていて、セット間の休憩そのものではないというものでした。
実務上の意味はここです。休憩を短くすること自体が悪いのではなく、短くした結果として落ちた回数を放置するのが問題になります。時間がなくて休憩を削るなら、セット数を足すなり種目を絞るなりして総量を戻す必要があります。総量の数え方は総負荷量の計算方法にまとめてあります。
種目で変える|コンパウンドは長め、アイソレーションは短め
「スクワットやデッドリフトは長め、サイドレイズやカールは短め」という組み方は広く使われていて、時間の配分としては理にかなっています。全身を使う種目は息が上がるので、同じ重量をもう一度組むには長い時間が要るからです。
ただし、単関節種目なら短くても回数が落ちない、という意味ではありません。 Sennaら(2017)は訓練者16名にトライセプスプッシュダウンを4セット行わせ、休憩を1分・3分・5分で比べています。結果は50%1RMでも80%1RMでも、1分の休憩は3分より総回数が有意に少なくなりました。単関節でも、削れば落ちます。
同じ研究でもう一点、実務に効く結果が出ています。50%1RMの軽い負荷では5分・3分・1分の3条件すべてに差が出たのに対し、80%1RMでは3分と5分のあいだに差がありませんでした。高重量側では3分あればおおむね頭打ちになる、という読み方ができます。
インターバルの計り方
ここまでの話は、休憩の長さを実際に測っていないと成立しません。感覚に任せると、きついセットのあとは長くなり、軽いセットのあとは短くなりがちです。問題は長短そのものよりも、あとから「何秒だったか」を確かめられないことにあります。回数が落ちたときに、重量が重すぎたのか休憩が足りなかったのかを切り分けられません。
計る手段は3つあります。
| 手段 | 始め方 | 向いている人 | 引っかかりやすい点 |
|---|---|---|---|
| ストップウォッチ(スマホ標準アプリ・キッチンタイマー) | セットのたびに手で開始 | 記録は紙かメモアプリで、タイマーだけ欲しい人 | 押し忘れる。画面を消したあと動き続けるかは機種と設定しだい |
| スマートウォッチ | アプリによる。手首で操作 | スマホをポケットから出したくない人 | 対応アプリを入れる必要がある |
| 記録アプリのレストタイマー | セット完了のチェックで自動 | すでに重量と回数をアプリで記録している人 | アプリを閉じたときの挙動が製品ごとに分かれる |
※ どの手段でも、鳴ってから次のセットに入るまでの支度時間は別に発生します。表示された秒数と実際の間隔は一致しません
いちばん差が出るのは、アプリを閉じてもタイマーが動き続けるかです。セットが終わったらスマホはベンチの上かポケットに置くので、画面を見ていない時間のほうが長くなります。ここは製品ごとに分かれるところで、単機能のタイマーアプリと記録アプリ内蔵のレストタイマーでは、そもそも測っている対象が違います。前者は「運動◯秒 → 休憩◯秒」を先に決めて回す型、後者はセット完了の瞬間から測る型です。どちらを選ぶかは筋トレタイマーアプリ比較に6軸で整理しました。
LiftLogの場合は、セットの完了チェックを押した瞬間にレストタイマーが自動で走り、初期値は90秒です。設定タブから30〜300秒を15秒刻みで変えられ、種目ごとの秒数はワークアウト画面の種目名の横にある秒数バッジから0〜600秒を15秒刻みで指定できます。iOSはアプリを閉じてもロック画面とDynamic Islandで残り時間が動き続け、Androidは常時通知として残ります。操作の詳細はLiftLogの使い方にまとめています。
自分の秒数を決める手順
分数を調べて終わりにせず、自分の記録から決めるところまでやると、種目ごとの数字が固まります。
目的から初期値を置く― 高重量なら3分、筋肥大なら90秒〜2分、回数を稼ぐ種目なら60秒。ここは上の表からそのまま持ってきて構いません
その秒数で3セット組み、各セットの回数を記録する― 見るのは1セット目ではなく、2セット目と3セット目です。落ち幅そのものが判断材料になります
2回以上落ちたら30秒足す。落ちないなら30秒引く― 同じ重量で狙った回数が3セット出る、いちばん短い秒数がその種目の答えです
決まった秒数をメニューに書き込む― 種目ごとに固定してしまえば、毎回考える必要がなくなります
回数だけを見ていると、同じ8回でも余力が残っているのかぎりぎりなのかが分かりません。回数に加えてRPE(きつさ)を1つ添えておくと、回数は同じでも余力が減っているという段階で気づけます。付け方はRPEとはにまとめてあります。記録項目を増やす順番そのものは筋トレ記録のつけ方完全ガイドで整理しています。
まとめ
- 目安は筋力3〜5分・筋肥大1〜2分・筋持久力90秒未満(ACSM 2009)。日本の公的資料に分数の基準は無い
- 30秒では足りず5分を超えても伸びしろが小さいのは、使い切ったエネルギー源の回復が速い相の半減期21〜22秒・遅い相170秒超という形をしているため(Harrisら 1976)
- 「短いほど追い込める」は直接比較の結果と合わない。 1分より3分のほうが筋力も筋厚も上回った(Schoenfeldら 2016)
- 60秒超に小さな利、90秒を超えると差は検出されない(Singerら 2024)
- 差を作っているのは休憩そのものではなくこなせた総ボリューム量。休憩を削るなら量を戻す必要がある(Longoら 2022)
- 単関節種目でも1分では回数が落ちる。種目の分類ではなく回数の落ち幅で決める(Sennaら 2017)
- 感覚では検証できないので必ず計る。アプリを閉じても動き続けるかが使い勝手を分ける
次のトレーニングでやることは1つです。いつもの種目を、決めた秒数で3セット組んで、2セット目と3セット目の回数を書き残してください。落ち幅が2回以内に収まっていれば、その秒数はもう答えになっています。



