RPEは、そのセットであと何回上げられたかを10点満点に置き換えた数値です。RPE10は「1回も上げられない限界」、RPE8は「あと2回は残っていた」という意味になります。「きつかった」という感覚を、誰が言っても同じ状態を指す形に直すための物差しです。ここでは、RPEとRIRの対応、記録に添えて調子を読む使い方、RPEでメニューを指定する組み方、RPEと回数から1RMを推定する手順、そして主観であることの限界までを順に整理します。
RPEとは|きつさを「あと何回いけたか」に置き換えた数値
RPEは Rating of Perceived Exertion の頭文字で、日本語では主観的運動強度と訳されます。名前のとおり、外から測った値ではなく、本人が申告するきつさです。
もとは持久系の運動のために作られた考え方でした。Borg(1982)が主観的なきつさを尺度にする方法をまとめて以降、ジムのトレッドミルやリハビリの現場で使われてきたのは、6から20までの15段階のスケールです。Zourdosら(2016)はこの形を「a 15-point scale (range, 6–20)」と呼び、RPEはもともと持久系トレーニング向けに開発されたものだと整理しています。
問題は、この形が筋トレと相性が悪いことでした。バーベルを5回挙げたときのきつさを「11か、13か」で答えるのは難しく、答えられたとしても、その数字から次の重量を決めることができません。
筋トレのRPEは「残り回数」で決める
そこで筋トレの側で定着したのが、残り回数を基準にした10点満点のスケールです。Zourdosら(2016)は、このタイプのRPEがパワーリフティングの世界で使われてきた経緯について、2008年の Reactive Training Systems Manual の刊行以降と本文に記しています。同論文はそれを学術的に検証し、被験者に読み上げる形で言葉の定義を与えました。
基準になるのは Repetitions in Reserve、略してRIRと呼ばれる「あと何回上げられるか」です。この置き換えが効くのは、答えが具体的な数になるからです。「かなりきつかった」は人によって幅がありますが、「あと2回はいけた」なら誰が言っても同じ状態を指します。しかも残り回数が分かれば、次のセットで重量を上げるか下げるかがその場で決まります。
RPEとRIRの対応表
RPEとRIRは、同じ状態を逆から数えているだけの関係です。式にすると次の1本で終わります。
RIR = 10 − RPE
限界まで挙げれば残りは0回なのでRPE10、あと2回残っていればRIR2でRPE8、という対応になります。0.5刻みは「あと1回はいけるが2回は怪しい」のような中間を表すために使います。
| RPE | RIR(残り回数) | 感覚 |
|---|---|---|
| 10 | 0 | これ以上1回も上げられない(限界) |
| 9.5 | 0〜1 | あと1回いけるか怪しい |
| 9 | 1 | あと1回だけ上げられる |
| 8.5 | 1〜2 | あと1回は確実、2回は怪しい |
| 8 | 2 | あと2回上げられる |
| 7.5 | 2〜3 | あと2回は確実、3回は怪しい |
| 7 | 3 | あと3回上げられる |
| 6.5 | 3〜4 | あと3回は確実、4回は怪しい |
| 6 | 4 | あと4回以上上げられる(余裕) |
※ Zourdosら(2016)が被験者に読み上げた定義は10から7までで、9.5は「もう1回はできないが重量は足せる」、7は「あと3回できる」。5〜6はひとまとめに「あと4〜6回できる」とされています。6.5のような中間の目盛りは、この記事とサイト内の計算機がRIR = 10 − RPEの関係をそのまま延ばしたものです
表を暗記する必要はありません。10から引けばRIRになる、これだけ覚えていれば足ります。
使い方1|記録に添えると、同じ数字の中身が読める
いちばん手軽で、いちばん効くのがこの使い方です。いつもどおり重量と回数を記録して、その横にRPEをひとつ足すだけです。
なぜ効くかというと、重量と回数が同じでも、中身は同じとは限らないからです。ベンチプレス60kgを8回。この記録が3週間並んでいると、グラフの上では完全な横ばいに見えます。しかし、
- 1週目 60kg × 8回 RPE9.5(あと1回いけるか怪しい)
- 3週目 60kg × 8回 RPE8(あと2回残っていた)
この2つは違う出来事です。扱った重量は変わっていませんが、同じ仕事に必要な余力の使い方が変わっています。RPEを書いていなければ、この差はどこにも残りません。
| RPEの動き | 何が起きているか | 次の一手 |
|---|---|---|
| 前回より下がった | 同じ重量に余力が生まれている | 重量を上げる判断材料が揃っている |
| 前回と同じ | 状態が維持されている。短期間なら正常な範囲 | すぐに動かさず、もう1〜2回ぶんの記録を待つ |
| 前回より上がった | 同じ重量が重く感じている。睡眠・食事・前の種目の疲労など、当日の要因が乗っていることが多い | 原因が思い当たるなら気にしない。思い当たらない回が続くなら記録全体を見直す |
※ 1回の上下では判断しないこと。RPEは主観なので単発ではぶれます。同じ向きが数回続いたかどうかで読みます
使用重量・総ボリューム・頻度という3つの数字だけを見ていると、この「同じ重量が軽くなった」という前進は拾えません。数字が止まって見えるときに何を確認するかは筋トレの成果を見える化する方法にまとめてあります。RPEはそこに1列足す位置づけです。
RPEを足すタイミングそのものにも目安があります。筋トレ記録のつけ方完全ガイドでは、最小の3項目(種目・重量・回数)に何をいつ足すかを整理していて、RPEは同じ重量で回数が伸びなくなり、上げるべきか迷うようになったときに足す項目としています。最初から付ける必要はありません。
使い方2|重量ではなくRPEでメニューを指定する
もう一段進んだ使い方が、メニュー側にRPEを書いてしまうやり方です。「ベンチプレス 5回 × 3セット」ではなく、5回をRPE8で3セットと書きます。
この書き方の狙いは、その日のコンディションを計画に織り込むことです。「80%1RMで5回」のように重量の割合で決めると、寝不足の日も絶好調の日も同じ重量が指定されます。実際には日によって同じ重量のきつさは変わるので、調子の悪い日は潰れ、調子のいい日は物足りないまま終わります。Helmsら(2016)は、この方式の利点をセットごとにその日の能力へ自動的に重量を合わせられること、そして限界に近い負荷では強度をより正確に捉えられることだとまとめています。
書き方は3通りあります。
目標として指定する — ― 「5回 × RPE8」。その日にRPE8で5回になる重量を自分で探して使います。重量が日によって変わるのは正常で、変わることのほうが自然です
上限として指定する — ― 「80%1RM、ただしRPE9を超えたらそこで止める」。計画の重量は固定したまま、追い込みすぎだけを止める使い方です
下限として指定する — ― 「最低でもRPE7まで」。軽すぎるセットで終わらせないための歯止めです。回数を決めずに、RPEに届くまで続ける形にもできます
RPE指定に乗り換えるべきかどうかは、実は決着していません。Helmsら(2018)は8週間・週3回のプログラムでRPE指定群と%1RM指定群を比べ、群間の差は有意ではなかったと報告しています。結論は「どちらの決め方も有効で、RPE指定は多くの人でわずかに1RMの伸びが大きくなる可能性がある」というものでした。RPEのほうが優れている、と言い切れる段階にはありません。
目安表と換算|RPEと回数から1RMを出す
「RPE8で5回できた」という記録は、それだけでは他の日の記録と比べにくい形をしています。5回RPE8と3回RPE9のどちらが強い出力なのか、見ただけでは分かりません。そこで使うのが1RMへの換算です。
手順は3段階です。
RPEから残り回数を出す― RIR = 10 − RPE。RPE8なら残り2回です
限界までの推定回数に直す― 実施した回数 + RIR。5回をRPE8で挙げたなら、その重量は「限界まで7回できる重量」とみなします
1RM推定式に入れる― 7回できる重量が1RMの何%にあたるかを求め、そこから1RMを逆算します
実際に数字を入れてみます。100kgを5回、RPE8で挙げたとします。残りは2回なので、限界までの推定回数は7回。7回できる重量は1RMの83.3%にあたるので、逆算した推定1RMは120.0kgになります。
この記事の数値と、サイト内のRPE換算計算機は同じ定義で計算しています。1RM推定式に使っているのはBrzycki(1993)の式で、重量 × 36 ÷ (37 − 回数) という形をしています。回数が1回のときちょうど100%になるため、換算表の基準として扱いやすいという理由で選んでいます。出回っている早見表の数値を写しているのではなく、RIRの定義と推定式から毎回計算しているので、どのマスについても根拠をたどれます。
代表的な組み合わせだけ抜き出すと、次のようになります。
| RPE | 1回 | 3回 | 5回 | 8回 | 10回 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10 | 100.0 | 94.4 | 88.9 | 80.6 | 75.0 |
| 9 | 97.2 | 91.7 | 86.1 | 77.8 | 72.2 |
| 8 | 94.4 | 88.9 | 83.3 | 75.0 | 69.4 |
| 7 | 91.7 | 86.1 | 80.6 | 72.2 | 66.7 |
| 6 | 88.9 | 83.3 | 77.8 | 69.4 | 63.9 |
※ 0.5刻みを含む全体の表と、重量を入れての逆算は下の計算機にあります。値は「RIR = 10 − RPE」とBrzyckiの式から導いたもので、出回っている早見表とは数%ずれることがあります
表の見方は、縦のRPEと横の回数が交わるマスがその組み合わせの強度、というだけです。5回RPE8なら83.3%、3回RPE9なら91.7%。限界までの回数が同じ組み合わせは、同じ値になります。 5回RPE9(限界まで6回)と6回RPE10(限界まで6回)は、どちらも86.1%です。
逆向きにも使えます。推定1RMが120.0kgと分かっていれば、次に「5回をRPE9で」やりたいときの重量は120 × 0.861で103.3kg、「3回をRPE8で」なら106.7kgと出せます。ジムでこの掛け算をするのは面倒なので、計算機に入れてしまうのが早いです。
RPE換算計算機重量・回数・RPEを入れると推定1RMと次のセットの目標重量が出ます。0.5刻みの全換算表つき(登録不要)RPEを使わずに、重量と回数だけから1RMを出したい場合はこちらです。Epley式との比較や、回数ごとの%1RM換算表も載せています。
1RM計算機重量と回数から最大挙上重量を推定できます。Epley式・Brzycki式の両方と%1RM換算表つき(登録不要)RPEの限界|どこまで当てにできるか
RPEは便利ですが、外から測った数値ではありません。使う前に知っておいたほうがよいことが4つあります。
1. 精度を分けるのは経験年数より「限界への近さ」
「初心者はRPEを外すから使うな」という言い方をよく見かけますが、研究の結論は割れています。整理すると次のようになります。
| 研究 | 対象 | 分かったこと |
|---|---|---|
| Zourdosら(2016) | スクワット・経験者15名/未経験者14名 | 1RMを挙げた直後のRPEが経験者9.80に対し未経験者8.96。未経験者の57%は1RMでも「まだ余力がある」と答えた。ただし差が出たのは1RM時点だけ |
| Ormsbeeら(2019) | ベンチプレス・経験者14名/初級者13名 | 同じ結果を再現。1RM時のRPEは9.86対9.35で差があったが、それ以外の強度では群間差なし |
| Hackettら(2017) | チェストプレス・レッグプレス81名 | 限界まで残り0〜5回では誤差が約1回、残り7〜10回では2回超。トレーニング経験は誤差に影響しなかった |
| Remmertら(2023) | マシン種目58名 | 限界に近いほど、また後半のセットほど予測が正確。性別・経験年数・RPEを付けた経験のいずれも精度に影響しなかった |
| Steeleら(2017) | 全身種目141名 | 参加者は全体として、できる回数を少なく見積もる傾向があった。経験が長いほど精度が上がる傾向はあったが、完全には当たらない |
※ いずれも海外の被験者による研究で、種目・対象・測り方が異なります。数値をそのまま自分の誤差の見込みとして使える性質のものではありません
食い違いはありますが、5本に共通しているのは「限界に近いほど当たり、余力が多いほど外れる」という向きです。Zourdosら(2016)も、セットの負荷が軽いほどRIRの見積もり誤差が大きくなると述べています。
実務上の結論はここから素直に出ます。軽いセットにRPE6や7を付けても、その数字はあまり当てになりません。 メインセットのように限界へ近づくセットで使うほうが、同じ手間で意味のある数字になります。
2. 答え合わせをすると差が縮まる
対処はひとつです。RPE8(あと2回)と判断した重量で、別の日に限界まで挙げてみて、実際に2回多くできたかを確認する。 これを何度か繰り返すと、感覚と実際のずれが縮まります。慣れるまではRPE7・8・9・10の4段階だけを使い、0.5刻みは後回しで構いません。細かく刻んでも精度は上がりません。
ついでに言うと、ずれているのはRPEだけではありません。Zourdosら(2016)は、よく見る「75%1RMなら10回」という従来の対応表について、実測されたRPEから逆算すると5〜7回超が妥当だったと報告しています。回数と割合の対応表そのものも、もとから目安です。
3. 個人差と日差がある
同じ「RPE8」でも、人によって指している状態は微妙に違います。他人のRPE8と自分のRPE8は別物だと考えてください。他人の記録と比べる数字ではありません。
日によっても変わります。睡眠不足の日、その種目が3種目目に回った日、減量中の日は、同じ重量でもRPEが上がります。これはずれではなく、その日の実力が落ちているというRPE本来の情報です。表示された重量を無理に守る必要はありません。
種目でも変わります。Hackettら(2017)は、上半身の押す種目のほうが脚の種目より見積もりが正確だったと報告しています。サイドレイズのような軽い単関節種目や、フォームが崩れる形で終わる種目では、どこが限界なのかがぼやけます。付けにくい種目に無理に付ける必要はありません。
4. RPEは「追い込め」という指示ではない
数字が高いほど良い、というものではありません。RPE10を毎セット狙えば、翌週の記録は落ちます。RPEは追い込み度合いを競う数値ではなく、今日どこまでやったかを後から読める形で残すための数値です。
なお、厚生労働省のe-ヘルスネットは、自宅での筋トレについて無理せずに「できなくなるところまで行く」が最も簡単な目安としています。器具も記録もない状態で強度を管理する方法としては、これがいちばん単純です。RPEは、そこに刻みを入れて調整の幅を持たせるための道具にあたります。
RPEをどこに書くか|紙・表計算・アプリ
最後に、実際に残す場所の話です。どこに書いても構いませんが、書式を固定することだけは共通の条件になります。
紙のノートなら、回数のうしろに記号ひとつ足すのがいちばん短く済みます。「60×8@8」のように、区切りの記号を決めて回数の後ろに置く形です。書式の作り方は筋トレノートの書き方にまとめています。
スプレッドシートなら、RPE用の列を1つ作っておきます。空のままでも構いません。列構成をあらかじめ決めておく方法は筋トレ記録スプレッドシートの作り方に載せてあります。数値で入れておけば、種目ごとの平均や推移をあとから出せます。
記録アプリの場合は、RPEの入力欄が初期状態でオフになっているものがあります。LiftLogもその一つで、iPhone版とAndroid版は設定の「RPEを記録する」をオンにすると、各セットに6.0から10.0を0.5刻みで付けられるようになります(初期状態はオフ)。Web版の記録画面にはRPEの入力欄がないので、ブラウザから使う場合は上の換算計算機で重量を決める形になります。画面の場所はLiftLogの使い方で説明しています。
なお、RPEを記録すると、総負荷量のような「量」の数字では見えない部分が補えます。重量を下げて回数を増やしても総負荷量は増えるため、量が増えたのか強度が上がったのかを分けて読むには強度の情報が要ります。この関係は総負荷量の計算方法で整理しています。
まとめ
- RPEはそのセットで「あと何回上げられたか」を10点で表した数値。RIR = 10 − RPEで対応する
- 持久系の運動で使う6〜20のスケールとは別のものさし。数字を見たらどちらの話かを先に確認する
- 使い方1は記録に添えること。同じ重量・同じ回数でもRPEが下がっていれば前進している
- 使い方2はメニューの指定に使うこと。目標・上限・下限の3通りの書き方がある
- 換算は「RIRを足して限界までの回数に直し、1RM推定式に入れる」の順。5回RPE8は83.3%にあたる
- 同じ「あと1回」でも種目と回数で%1RMは変わる。換算表は当てはめる値ではなく桁の確認に使う
- 精度を分けるのは経験年数より限界への近さ。軽いセットに付けたRPEは当てにならない
- 付けるのはメインセットだけで足りる。全セットを埋めようとすると記録のほうが止まる
まずは次のトレーニングで、いちばん重いセットを終えた直後に「あと何回いけたか」を口に出してみてください。その数字を10から引けば、それがRPEです。


