週2回しかジムに行けないなら、1回のトレーニングで全身を回す全身法のほうが組みやすくなります。理由は単純で、週2回を上半身の日と下半身の日に分けてしまうと、それぞれの部位を鍛えるのは週1回になるからです。厚生労働省のe-ヘルスネットは成人および高齢者に、筋トレを週2〜3日実施することを推奨するとしており、週2回はその範囲に入ります。ここでは、なぜ週2なら全身法なのか、メニューをどう組むか、A日とB日の一例、そして記録を使ってどう進めるかを順に整理します。

週2で分割すると、各部位は週1回になる

全身法は、1回のトレーニングで胸・背中・脚といった主要な部位をひととおり通す組み方です。分割法(スプリット)は、日ごとに担当する部位を分ける組み方を指します。

週2回という条件でこの2つを並べると、算数だけで差が出ます。上半身の日と下半身の日に分ければ、上半身も下半身も週1回です。押す日と引く日に分けても同じで、胸は週1回、背中も週1回になります。一方、全身法なら1回のメニューに全部が入っているので、どの部位も週2回になります。

ここで参照されることが多いのが、頻度を比べたメタ解析です。Schoenfeldら(2016)は10研究をまとめ、頻度が高いほうが効果量が大きかった(0.49に対して0.30)と報告し、主要な筋群は筋肥大を最大化するために週2回以上鍛えるべきだと推測できると結論づけています。ここだけを読むと、週2回の全身法は理にかなっているように見えます。

同じ著者らの2019年の解析では、結論が変わっている

ただし、この話には続きがあります。同じ第一著者らが2019年に対象を25研究へ広げて解析し直したところ、週の総量をそろえた比較では、頻度の高低による有意差は見られなかったと報告しています。結論の文はさらに踏み込んでいて、「一定のトレーニング総量に対しては、部位あたりの週の頻度は好みで選んでよい」となっています。

この2つは矛盾ではなく、条件が違います。2016年の解析は10研究しかなく、部位あたりの頻度をそろえた比較はサンプル数が足りず統計解析ができなかったと本文に書かれています。2019年はその部分を含めて研究数を増やした結果です。

つまり、頻度そのものに魔法があるという読み方は、いまの証拠では強く支持されません。ではなぜ週2なら全身法なのか、という話に戻ります。

効いているのは頻度ではなく、週の総量のほう

同じ研究グループが2017年に出した別のメタ回帰は、週あたりのセット数と筋量の変化の関係を調べたものです。ここでは総量が増えるほど筋肥大が大きくなるという段階的な関係が示され、セットが1つ増えるごとに効果量が0.023ずつ、割合にして0.37%ずつ上がる、という数字が報告されています。

この2つを並べると、週2回の人が全身法を選ぶ理由がはっきりします。頻度を上げるためではなく、週の総量を2回に分けて置けるようにするためです。週2回で分割すると、その部位の1週間分の総量を1回のセッションに全部乗せることになります。時間にも疲れにも上限があるので、実際には乗せきれずに総量が落ちやすくなります。全身法なら、同じ総量を2回に分けて積めます。

メニューの組み方|3つの方向を1回でそろえる

組み方には順番があります。種目名から考え始めると、好きな種目ばかりが並んで偏ります。埋める枠のほうを先に決めてください。

下半身・押す・引くの3方向を先に埋める

厚生労働省のe-ヘルスネットは、運動プログラムの全面性の原則を説明するなかで、筋力トレーニングについては全身の筋をバランスよく鍛えること、大筋群を優先して実施することだと書いています。これを1回のメニューに落とすと、次の3つの枠になります。

  1. 下半身しゃがむ動き(スクワット系)か、股関節を折る動き(デッドリフト系)のどちらか。1回のメニューには片方だけ入れます

  2. 押す胸・肩・上腕三頭筋がまとめて動く枠。ベンチプレスのような水平方向と、ショルダープレスのような垂直方向があります

  3. 引く背中・上腕二頭筋がまとめて動く枠。ラットプルダウンのような垂直方向と、ローイングのような水平方向があります

この3枠が埋まっていれば、腕・肩・腹の専用種目が1つも入っていなくても、全身をひととおり通したことになります。腕は押す枠と引く枠のなかで必ず動くからです。

多関節種目を先に、単関節種目は後ろに

3つの枠は、いずれも複数の関節が同時に動く多関節種目で埋めます。ACSMのポジションスタンドは、種目の順番について大きい筋群を小さい筋群より先に、多関節種目を単関節種目より先に、強度の高い種目を低い種目より先に並べることを推奨しています。

この順番には、時間が足りない日に効いてくる副作用があります。重要な種目が先頭に来ているので、削るときは後ろから削ればいい という形になります。順番を決めておくことが、そのまま省略のルールにもなるわけです。

種目数は先に決めず、時間の上限から埋める

「全身法は何種目?」という問いには、先に数字で答えないほうが実用的です。3枠を埋めたあと、確保できる時間が残っていれば補助種目を足す、という順で決めます。

補助種目を足す目安は、3枠のなかで動きが薄い部位です。肩の側面(サイドレイズ)、背中の後面(リアレイズ)、臀部(ヒップスラスト)などは、押す・引く・しゃがむのなかでは主役になりにくいので、そこを補います。

e-ヘルスネットは、健康づくりを目的とする場合について筋トレの時間が長くなりすぎると逆効果となる可能性にも触れ、やりすぎに注意が必要だとしています。種目数を積み増す方向には上限がある、という前提で組んでください。

A日とB日の2パターンで交互に回す

同じメニューを毎回繰り返しても、まったく問題ありません。判断はここで分かれます。

  • 毎回同じメニュー — 同じ種目の記録が週2回並ぶので、前回との比較がいちばんはっきりします。始めたばかりで、フォームと重量の感覚を固めたい時期に向きます
  • A日とB日の2パターン — 1回あたりの種目数を増やさずに、扱う種目の種類を増やせます。かわりに、同じ種目に戻ってくる間隔は週1回に延びます

A/Bにするときの分け方は、3つの枠を残したまま方向を入れ替えるのが分かりやすい形です。A日は水平に押して垂直に引き、しゃがむ。B日は垂直に押して水平に引き、股関節を折る。こうすると、どちらの日も3枠が埋まったまま、種目だけが入れ替わります。

全身法メニューの一例|A日とB日

ここから先は一例です。医学的な処方ではなく、上で決めた枠に種目を当てはめるとこうなる、という例にすぎません。e-ヘルスネットは筋トレの個別性の原則について、集団で実施する場合であっても一律の目標回数(ノルマ)を設けるのではなく、個人に合った目標を設定することを勧めています。そのまま写す前提では作っていません。

A日の一例(水平に押す / 垂直に引く / しゃがむ)
種目の例例のセット数設備や状況に応じた入れ替え先
下半身(しゃがむ)バーベルスクワット3セットレッグプレス / ダンベルを胸に抱えるスクワット
押す(水平)ベンチプレス3セットチェストプレス / ダンベルプレス
引く(垂直)ラットプルダウン3セットチンニング(アシストマシンを含む)
補助サイドレイズ2セットアップライトロー / なし(時間が足りなければ落とす)

医学的な処方ではありません。セット数は「多関節を厚めに、補助は軽く」という配分の例であって、推奨値ではありません。回数や重量は入れていません(同じ種目でも人によって適正が違うため)

B日の一例(垂直に押す / 水平に引く / 股関節を折る)
種目の例例のセット数設備や状況に応じた入れ替え先
下半身(ヒンジ)ルーマニアンデッドリフト3セットグッドモーニング / レッグカール
押す(垂直)ダンベルショルダープレス3セットショルダープレスマシン
引く(水平)ペンドレイロー3セットシーテッドロー / ワンハンドダンベルロー
補助ブルガリアンスクワット2セットヒップスラスト / なし(時間が足りなければ落とす)

医学的な処方ではありません。A日と同じ3枠を、押す・引くの方向とヒンジ系への入れ替えでずらしただけの構成です

B日に置いた種目のうち、フォームで迷いやすいものは個別に扱っています。ヒンジ系の入れ替え先であるグッドモーニング、引く枠のペンドレイロー、押す枠のダンベルショルダープレス、補助枠のブルガリアンスクワットは、それぞれフォームと重量の目安を別記事にまとめました。

表を自分のジムに合わせて差し替える

差し替えの判断は、枠が埋まっているかどうかだけで足ります。フリーウェイトのラックが常に埋まっているジムなら、A日の下半身をレッグプレスにしても枠は埋まります。肩を挙げる動作が合わない日は、押す枠を水平(ベンチプレス系)に寄せても構いません。

回数については、ACSMのポジションスタンドが未経験者に対して8〜12RMに相当する負荷を挙げており、筋肥大を目的とする場合も種目の選び方と頻度については同様のプログラム設計が推奨されるとしています。ただし「8〜12回」という幅は負荷の指定であって、あなたの今日の重量を決めるものではありません。実際の重量は、次に書く記録のほうから決まります。

進め方|同じメニューを繰り返して、記録で少しずつ足す

メニューが決まったら、あとは同じものを繰り返します。e-ヘルスネットの反復性・周期性の原則も、運動プログラムはある程度の期間、規則的に繰り返すことを求めています。毎回違うメニューを組むと、比べる相手がなくなって、上げるかどうかの判断ができなくなります。

上げるか据え置くかを、先にルールにしておく

e-ヘルスネットは負荷について、日常生活レベル以上の負荷を繰り返しかけ、慣れてきたら少しずつ負荷を高めていく(=漸進性過負荷の原則)ことが重要だと書いています。この「少しずつ高めていく」を実行するには、前回の数字が要ります。

週2回の全身法では、ここが週3〜5回でやっている人より難しくなります。同じ種目に戻ってくるのが3〜4日後、A/Bで回しているなら1週間後だからです。1週間前に何キロを何回挙げたかを正確に思い出せる人はほとんどいません。記録の項目と読み方は筋トレ記録のつけ方完全ガイドにまとめています。

判断を毎回考えないで済むように、ルールは先に決めておきます。「目標にした回数を全セットで達成できたら次回は上げる」のような形です。上げるかどうかで迷う段階に入ったら、そのセットの余力を数値にするRPEを足すと、同じ重量・同じ回数でも余裕があった日と限界だった日を区別できます。

週の総量が積めているかを、たまに数える

週2回でいちばん起きやすいのは、1回サボって実質週1になっていることに気づかないパターンです。セット数の合計を月に1回でも数えておくと、頻度と総量の両方が同時に見えます。数え方は総負荷量の計算方法にまとめました。

重量は変わらないのに回数だけが伸びている時期は、重量だけを見ていると停滞に見えます。回数の伸びを重量の言葉に翻訳すると、前進が数字で確認できます。

1RM計算機重量と回数から最大挙上重量を推定できます。Epley式・Brzycki式の両方と%1RM換算表つき(登録不要)

時間がない日は、落とす順番を先に決めておく

週2回のうち1回が潰れると、その週の総量は半分になります。丸ごと休むより、短くしてでも通したほうが総量は残ります。落とす順番は、ACSMの並べ方をそのまま逆にするだけで決まります。

  1. まず補助種目を落とす― サイドレイズやカールのような単関節種目から。3枠が埋まっていれば、その部位も押す枠・引く枠のなかで動いています

  2. 次に3枠のセット数を減らす― 3セットを2セットにします。種目を消すより先に、セットで調整するほうが枠の形が崩れません

  3. 最後まで残すのは3枠の多関節種目― 下半身・押す・引くの3種目だけなら、レストを含めても短時間で通せます。ここが残っていれば、その日は全身法として成立しています

週2で足りるのかという不安について

「週2では足りないのでは」という不安は、頻度の数字を見ているところから来ます。ここまでに挙げた出典を並べると、見るべき変数は別のところにあります。

まず、週2回は公的な推奨の範囲内です。e-ヘルスネットは成人および高齢者に、筋トレを週2〜3日実施することを推奨するとしており、ACSMのポジションスタンドも未経験者の頻度として週2〜3日を挙げています。

次に、頻度そのものの差については、Schoenfeldら(2019)が25研究をまとめて週の総量をそろえれば頻度は筋肥大に有意な影響を与えないと結論づけています。週3にしないと届かない、という読み方を支持する結果ではありません。

そのうえで、同じ研究グループの2017年の解析は、週あたりのセット数が増えるほど効果量が大きくなるという段階的な関係を報告しています。手をつけるべきなのは頻度ではなく総量のほう、ということになります。週2回でも、1回あたりのセット数を確保すれば週の総量は積めます。

最後に、この総量は続いてはじめて積み上がります。e-ヘルスネットは筋肉にしっかり負荷をかけるとともに、休息日もしっかり設けることを勧めています。週4回の計画を立てて2週間で止まるより、週2回を半年続けるほうが、積み上がる総量は大きくなります。

まとめ

  • 週2回を分割すると各部位は週1回になる。全身法は頻度を上げる技ではなく、週の総量を2回に分けて置くための形
  • Schoenfeldら(2016)は週2回以上を支持したが、同じ著者らの2019年の解析では総量をそろえると頻度差は出ていない
  • はっきりしているのは総量のほう。2017年の解析は週あたりのセット数と筋肥大の段階的な関係を報告している
  • 1回のメニューは下半身・押す・引くの3枠を多関節種目で埋める。補助種目は時間が残ったら足す
  • 並べる順番は大きい筋群→小さい筋群・多関節→単関節。この順にしておくと、時間がない日は後ろから削るだけで済む
  • A日とB日は、3枠を保ったまま押す/引くの方向とヒンジ系を入れ替える。毎回同じメニューでも構わない
  • メニュー例は一例。3枠が埋まっていれば、種目はジムの設備と自分の状況で入れ替えてよい
  • 進め方は、同じメニューを繰り返して記録で判断する。上げるルールは先に決めておく

まずは次の1回で、下半身・押す・引くの3種目だけを決めてみてください。補助種目は、その3つが安定してから足しても間に合います。