「AI搭載」と書かれた筋トレアプリを並べても、AIが担当している場所はアプリごとに違います。条件を入力するとメニューを組み上げるもの、溜まった記録を読んで次の重量を決めるもの、言葉で相談できるもの、食事の写真を判定するもの。同じ3文字でも中身は別物なので、自分が欲しいのがどれなのかを決めないまま比べても候補は絞れません。この記事では主要アプリのAIを4つの使われ方に分類し、いちばん判断が分かれる「メニュー生成」と「記録を読むAI」の違いを軸に、どちらが自分に向くかまで整理します。

「AI搭載」の中身は4つに分かれる

AIという言葉が使われている場所を、入力(何を材料にするか)と出力(何が返るか)で分けると、4つに整理できます。

1. 条件からメニューを組み立てる

目標・経験年数・体格・使える器具・週の頻度といった質問に答えると、その条件に合うプログラムやその日のメニューが出てくる使われ方です。材料が自己申告した条件なので、記録がゼロの初日から成立します。Gymworkのプログラム自動作成、HevyのHevy Trainer、Fitbodのワークアウト自動生成がここに当たります。

2. 溜まった記録を読んで次の数字を決める

過去のワークアウトを材料にして、次にやる種目と重量を決める使われ方です。前回の重量、鍛えていない部位、空いた日数が入力になるので、使うほど自分の数字に寄っていきます。LiftLogはここを中心に置いています。

生成型のアプリでも、重量についてはこちら側を併用しているものがあります。GymworkはApp Storeの説明で「過去の筋トレログをもとに最適な負荷を提案します。RPE(自覚的運動強度)を入力すれば次回の提案がさらに精密に」と書いていますし、Hevyもプログレッシブオーバーロードとして進歩に応じた重量の増やし方を案内すると説明しています。「条件を入力する型は記録を見ない」わけではありません。

3. 言葉で相談する

「今日は肩に違和感があるので種目を変えたい」のように、質問票の選択肢にない事情を文章で伝えられる使われ方です。生成型が決まった項目に答えていく形なのに対し、こちらは自由入力になります。セット間に「重すぎる」「軽すぎる」と伝えて、その場で数字を直したいときに効いてくる形式です。

4. トレーニング以外のデータを読む

食事の写真から料理を判定する、週の記録をまとめてレポートにする、といった使われ方です。バーンフィットの「AIレンズ」(写真から料理を判定)と、運動と食事の記録に基づいて分析するAI週間レポートがこれにあたります。メニューを決める機能ではないので、AI搭載という表記だけを見てメニューも作ってもらえると考えると、噛み合いません

なお、動画からフォームの良し悪しを判定する型は、この記事で扱うアプリの公開されている機能説明には見当たりませんでした。フォームを確認しながら進めたいなら、AIかどうかではなく実演動画や解説を持っているかで選ぶほうが早く、Gymworkの種目実演動画やバーンフィットのCG・GIF解説がその役割を担います。

主要アプリのAIはどこを担当しているか

日本のApp Storeで配信されている6本を、4分類に当てはめます。書かれていないことは「確認できなかった」としています。

AIが担当している範囲と、それに触れるための料金(2026年8月時点)
アプリAIの担当範囲入力になるものそれに触れるための料金
Gymwork1(メニュー生成)+2(重量の提案)目標・頻度・鍛えたい部位の入力と、過去の筋トレログ・RPEプログラムの自動作成はアプリ内。プロ選手・コーチのプログラム配信はPRO中心(App内課金は¥990〜¥9,000の10件)
Hevy1に相当(Hevy Trainer)。公式ヘルプは「アルゴリズムによって生成」でAIではないと明記10項目の質問(目標・経験・体格・器具・頻度・1回の時間・重点部位など)Hevy TrainerはPro専用(Proは月¥300/¥550、年¥2,600、買い切り¥11,800)
Fitbod1(メニュー生成)目標・レベル・使える器具。「提案への編集から学習する」と説明App内課金は月¥1,400/¥2,500、年¥8,800/¥15,000。無料で使える範囲は公開情報からは確認できなかった
バーンフィット4(記録以外の解析)が中心。写真から料理を判定するAIレンズとAI週間レポート。公式サイトではブラウザ向けのAIルーティン作成ツールも公開運動と食事の記録、料理の写真記録は無料。PROは月¥690/¥990、年¥4,790〜¥6,990
筋トレMemo掲載の機能一覧にAIの記載はない無料(買い切り¥500で広告が消える)
LiftLog2(記録を読む提案)+3(チャット相談)直近30日のワークアウト数、直近90日の種目別最大重量の上位10件、直近14日の履歴、プロフィール主要機能は無料・App内課金なし。ただしAIとのやりとりは1日10往復まで

Gymwork・Fitbod・バーンフィット・筋トレMemoは各App Storeの掲載、HevyはHevyヘルプセンターとApp Storeの掲載、バーンフィットのブラウザツールは公式サイトの掲載に基づく(2026-08-01〜08-07 閲覧)。LiftLog側は開発者による記述。金額と機能は変わるため、購入前にアプリ内の表示を確認してください

この表から読み取れることが3つあります。

1つ目は、「AI」の表記と中身が一致しないことです。 HevyのプログラムづくりはPro専用の「Hevy Trainer」という名前で、公式ヘルプには「私たちのプログラムはアルゴリズムによって生成されており、AIを使ってユーザーごとにプログラムを作成しているわけではありません」と明記されています。10項目の質問に答えると条件に合う構成が組み上がる仕組み、という理解が正確です。名前にAIが入っているかどうかは、選ぶ材料になりません。

2つ目は、AIの担当範囲がメニューだけではないことです。 バーンフィットのAIは食事の写真判定と週次レポートが中心で、その日のメニューを決める部分はあらかじめ用意されたプログラムを選ぶ設計です。「AI搭載」で検索して見つけたアプリが、自分の欲しかった機能を持っているとは限りません。

3つ目は、AIに触れるための料金の位置がばらばらなことです。 Hevy TrainerはPro専用、FitbodはApp内課金、Gymworkはプログラムの自動作成自体はアプリ内、LiftLogは無料のかわりに回数の上限があります。金額の大小より先に、自分が使いたい機能が有料の内側にあるかどうかを確かめてください。

各アプリの料金や無料の範囲は個別の記事にまとめてあります。

「メニュー生成」と「記録を読む」はどこが違うのか

4分類のうち、選ぶときにいちばん効くのが1と2の違いです。同じ「次のメニューを出す」でも、材料が違えば向き不向きが変わります。

メニュー生成型と記録を読む型の違い
見るところメニュー生成型記録を読む型
材料自己申告した条件(目標・頻度・器具・体格・経験)実際に挙げた重量と回数、頻度、最後にやってからの日数
使い始めた初日そのまま使えるプロフィールから組んだ一般論に近い内容になる
続けたときの変化条件を入れ直さない限り、同じ設計が続く記録が増えるほど提案の数字が自分に寄る
提案が合わないとき質問への回答を変えて組み直すその場で「重すぎる」等を伝えて作り直す
弱いところ実際に何キロ挙がるかは、初期状態では織り込まれない記録が途切れると材料も途切れる

各社の公開している説明(Gymwork・Fitbod・バーンフィットはApp Store、HevyはヘルプセンターのHevy Trainer解説、2026-08-01〜08-07 閲覧)と、LiftLogの実装内容から整理したものです

言い換えると、生成型は立ち上がりが速いかわりに、伸びしろが条件の細かさで頭打ちになる型です。記録を読む型は立ち上がりが遅いかわりに、続けるほど提案が具体的になる型です。どちらが優れているという関係ではなく、いま自分が持っている材料が違います。

提案の作られ方をもっと細かく見たい場合は、条件入力型・記録を読む型・プログラム選択型の3タイプに割って、AIが実際に返してくるカードの中身まで開けた記事があります。

この記事は「AIという言葉が何を指しているか」の地図で、メニュー生成はそのうちの1つとして扱っています。「メニューを考えてほしい」という悩みが先にあるなら、上の記事のほうが近道です。

どちらが自分に向くかは、3つの質問で決まる

質問1:記録は2〜3週間分ありますか。

無いなら生成型です。記録を読む型は、材料が無ければ一般論しか返せません。LiftLogの場合、重量は直近90日の最大重量を基準に換算しているので、そこが空だと換算の起点そのものがない状態になります。逆に、すでに記録が溜まっているなら、条件の入力からやり直すより手持ちの数字を使ったほうが早く具体的な提案が出ます。

質問2:決めてほしいのは「何をやるか」ですか、「何キロでやるか」ですか。

種目の組み立てから任せたいなら生成型、種目は決まっていて重量の上げどきだけ迷っているなら記録を読む型です。前者はジムに通い始めた時期に、後者は同じ重量が続いて止まった時期に効きます。同じ人でも、時期によって必要なものが入れ替わります。

質問3:提案を読んで終わりにせず、そのまま記録に入れたいですか。

ここは分類とは別の軸ですが、実際の手間に直結します。提案を見るだけで終わるアプリと、提案から記録画面がそのまま開くアプリでは、毎回の操作数が変わります。LiftLogは提案がカードで返り、「ワークアウトを開始」で種目・重量・回数・レスト時間が入った状態から記録が始まります。「テンプレートに追加」を選べば次回以降も呼び出せます。Gymworkはプログラムを選んで週の予定に沿って進める設計です。無料の範囲で一度通してみれば、どちらの導線かはすぐ分かります。

提案された重量が自分の感覚と合っているかを確かめたいときは、推定1RMを自分で計算してみると判断しやすくなります。

1RM計算機Epley式とBrzycki式の両方で最大挙上重量を推定できます。%1RM換算表と式の出典つき

提案をそのまま使う前に確認する3つ

1つ目は、回数と有料枠の上限です。 LiftLogのAIとのやりとりは1日10往復まで(ワークアウト中の相談は別枠で、1回のワークアウトあたり10往復)で、使い放題ではありません。毎日何度も相談したい人には、この上限が先に来ます。 Hevy Trainerはプログラム作成そのものがPro専用で、FitbodにもApp内課金として月額・年額が掲載されています。

2つ目は、AIが読める範囲です。 LiftLogは登録済みの種目一覧から完全一致で選ばせる作りなので、一覧にない種目名は提案に出てきません(通っているジム固有のマシンは、カスタム種目として自分で追加できます)。読む記録も直近30日・90日・14日と期間で区切っているので、それより前の記録は提案の材料に入りません。初回セットアップでトレーニング環境を「自宅メイン」にしていれば、バーベル・マシン・ケーブル種目は提案から外れます。

3つ目は、提案が実行に移せるかです。 カードから記録を開始できるか、テンプレートとして保存できるか。ここが繋がっていないと、提案を見てから自分で入力し直すことになり、毎回の手間が減りません。

どの型を選んでも、返ってくるのは条件と記録から組み立てた計画であって医学的な処方ではありません。筋トレ(レジスタンス運動)そのものの考え方は厚生労働省 e-ヘルスネットも参考になります。きつさの感覚を数値で残しておくと、次の重量を決める材料が増えます。

RPE換算計算機RPEと回数から1RMを推定し、次のセットの目標重量まで計算できます(登録不要)

LiftLogはこの地図のどこに立っているか

LiftLogは分類の2と3、つまり記録を読んで次を提案することと、その場で相談できることに振ったアプリです。質問のたびに直近の記録とプロフィールをまとめて渡し、ワークアウト中は「重すぎる」「軽すぎる」「種目を変えたい」をワンタップで送ると変更案のカードが返り、適用すると次のセットの重量や種目が書き換わります。

そのぶん、他のアプリに届いていない部分もはっきりしています。

AIまわりでLiftLogが他のアプリに及ばない点
項目他のアプリの状況LiftLog
記録がない状態からの提案Gymwork・Hevy Trainer・Fitbodは条件入力だけで初日から成立する直近90日の最大重量が空だと換算の基準がなく、一般論に近づく
AIに触れられる回数Fitbodは課金制、Hevy TrainerはPro専用(いずれも回数の上限は公開情報からは確認できなかった)無料だが1日10往復まで
手本になるプログラムGymworkはプロ選手・コーチのプログラムを配信。バーンフィットは用意されたプログラムから選べるなし。AIがその都度提案する形
種目の実演動画・解説Gymworkは種目タップで実演動画。バーンフィットはCG・GIF解説とYouTube導線なし(種目名と対象部位・器具のみ)
食事のAI入力バーンフィットは写真から料理を判定するAIレンズなし(カロリーとPFCの手入力+Appleヘルスケア連携)
運用実績Gymworkは2021年公開、バーンフィットは2020年から提供2026年公開。評価件数はまだ少ない

他社側は各社のストア掲載・公式ヘルプ・公式サイト(2026-08-01〜08-07 閲覧)に基づく。LiftLog側は自社の実装内容

上の2行がそのままLiftLogの弱点です。今日ジムに行くのに何も決まっていない状態で、記録もまだ無いなら、条件を入力すれば当日から動く生成型のほうが確実に速く答えを出します。フォームから知りたい人にも、実演動画を持つアプリのほうが親切です。

逆にLiftLogが持っているのは、無料であることと、記録を読んだAIに文章で相談できること、iPhone・Android・Apple Watch・ブラウザのどこからでも同じ記録を扱えることの3点です。操作の詳細はLiftLogの使い方|初回設定からAI提案までにまとめています。

まとめ

  • AIという言葉は、メニュー生成/記録を読んで重量を決める/チャットで相談/食事など記録以外の解析の4つに分かれて使われている
  • 名前と中身は一致しない。Hevyのプログラム作成は公式ヘルプが「アルゴリズムであってAIではない」と明記し、バーンフィットのAIは食事の写真判定と週次レポートが中心
  • 生成型は初日から動くかわりに材料が自己申告の条件。記録を読む型は続けるほど数字が自分に寄るかわりに、最初の2〜3週間は一般論に近い
  • 選び分けは3つの質問で決まる。記録が2〜3週間分あるか、決めてほしいのが種目か重量か、提案からそのまま記録に入りたいか
  • AIに触れるための料金の位置はアプリごとに違う。金額の大小より、自分が使いたい機能が有料の内側にあるかを先に確かめる

記録がまだ無いなら生成型、記録は溜まっているのに次の重量で迷っているなら記録を読む型。どちらも無料の範囲で挙動を確かめられるので、判断は実際の画面で下すのが確実です。