ハンマーカールは、ダンベルを縦に持ち、手のひらを内側に向けたまま前腕を回さずに肘だけを曲げる種目です。関わる筋は上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋の3つで、通常のダンベルカールと違うのは前腕の向きだけです。「向きを変えると二頭の関与が減り、上腕筋と腕橈骨筋が主役になる」という説明が広く言われていますが、これを実際に測定した研究では確認されていません。変わっているのは二頭側の条件で、上腕筋の仕事は前腕の向きに左右されないというのが解剖の説明です。この記事では、効く筋肉と構造、やり方、ダンベルカールとの重量差、片手あたりの重量の目安の順に整理します。

主に効く部位
上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋変わるのは前腕の向きだけ
器具
ダンベルケーブル(ロープ)やチューブでも同じ動作ができる
難易度
初級肘を体側に置ければ成立する
目安重量(片手)
9〜15kg男性・初心者〜初級者(推定)

効く筋肉や構造|中立グリップで何が変わるか

肘を曲げる筋肉は3つある

肘を曲げる主な筋は上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋の3つです。

上腕二頭筋は長頭と短頭の2つの頭を持ち、長頭は肩甲骨の関節上結節と上方関節唇から起こります。肩関節をまたいでいるため、肩の位置によって長さが変わります。上腕筋は上腕二頭筋の深層にあり、上腕骨の遠位前面から起こって尺骨粗面に停止します。またいでいるのは肘だけで、肩の角度に影響されません。腕橈骨筋は上腕骨外側の顆上稜から起こり、橈骨の茎状突起の付け根に停止します。筋腹は前腕の外側上部、肘のすぐ下に触れられる位置にあります。

支配神経も違います。腕橈骨筋は橈骨神経(主にC5・C6)だけで動く単純な支配です。上腕筋は筋皮神経(内側)と橈骨神経(外側)の二重支配を受けます。同じ「肘を曲げる筋」という括りでも、成り立ちが異なる筋が並んでいるのが実際のところです。

3つの中で上腕筋は表面筋電図では単独測定できません。上腕二頭筋の下に隠れているため、皮膚の上から電極を当てても上腕二頭筋の信号と混ざります。このあと紹介する研究2本も、測定筋は上腕二頭筋と腕橈骨筋の2つに絞られていて、上腕筋は対象外です。「上腕筋に何%効く」という数値が出てこないのは、データが無いからではなく、その測定自体が技術的に難しいためです。

二頭は回外筋であって、肘屈筋としては強くない

上腕二頭筋には、肘を伸ばした状態では前腕を屈曲させる働きがある一方、肘を曲げた状態では前腕を回外させる(手のひらを上に向ける)働きが最も強くなります。主機能は回外で、肘屈筋としては弱いという位置づけです。ねじを締めるときに手のひらを返す動きに力が入りやすいのは、この回外の働きによるものです。

一方、上腕筋には回旋の作用がありません。回外にも回内にも関与せず、肘を曲げ伸ばしする仕事だけを担います。回外を伴わない条件では、肘の屈筋の中で最も強い筋という位置づけです。手のひらの向きが変わっても仕事の内容そのものが変わらない筋、という点で上腕二頭筋とは立場が違います。

この2つを重ねると、中立グリップ(手のひらを内側に向ける)で消えているのは「前腕を回外させるという上腕二頭筋の得意分野」です。回外という仕事がなくなった分だけ二頭の負担が軽くなるとしたら筋の役割上は筋の通った予測ですが、上腕筋の側は回旋に関与しない筋なので、握りを変えても上腕筋の仕事量そのものが増える理由にはなりません。変わっているのは二頭側の条件だけで、上腕筋は最初から向きに左右されない、という切り分けになります。

分類上の主働筋は入れ替わる

種目の分類上、ハンマーカールとダンベルカールでは主働筋の割り当てが違います。

ハンマーカール・ダンベルカール・ケーブル版の分類比較
ハンマーカールダンベルカールケーブル版(ロープ)
種目の位置づけ補助種目基本種目補助種目
主働筋(分類上の割り当て)腕橈骨筋上腕二頭筋腕橈骨筋
協働筋上腕筋・上腕二頭筋上腕筋・腕橈骨筋上腕筋・上腕二頭筋

主働筋・協働筋・種目の位置づけは種目カタログ上の割り当てであり、筋電図の測定値ではない(次項で検証する)

ハンマーカールは基本種目ではなく補助種目という位置づけで、ダンベルカールとは主働筋の欄が入れ替わります。ただしこの表が示しているのは、種目を整理するための分類上のラベルです。「腕橈骨筋が主働筋」という記載があるからといって、それが測定でも確認された事実だとは限りません。実際に測ったらどうなるかは、次の項で扱う筋電図研究の話になります。

握りを変えると本当に分担は変わるのか(研究の報告)

握りの向きを変えたときに、実際に筋の働き方がどう変わるかを測定した研究が2本あります。

1本目は、健常な16名を対象に、回内・中立・回外の3つの手の向きで肘の屈曲運動(角速度20°/秒・20回)を行い、モーション解析ラボで上腕二頭筋と腕橈骨筋の表面筋電図と運動学を同時に測定した研究です。負荷を持たない単純な肘の曲げ伸ばし運動が条件で、結果は、腕橈骨筋の働きが有意に高くなったのは回内(逆手に近い向き)で、中立と回外の間には有意差がありませんでした。上腕二頭筋はどの向きでも有意な変化がありませんでした。この研究には外部負荷の記載がなく、ウェイトを持った条件ではありません。上腕筋は測定対象外です。

2本目は、競技ボディビルダーの男性10名(平均29.8歳・体重77.9kg・トレーニング歴平均10.6年)を対象に、ケーブルタワーで8RMの負荷を使い6回(非疲労)、各局面1〜2秒のテンポで、回外・中立・回内の3条件を比較した研究です。回外・回内はバーアタッチメント、中立条件はロープアタッチメントを使っています。測定筋は上腕二頭筋・腕橈骨筋・三角筋前部の3つです。結果は、挙上局面で上腕二頭筋は回外が中立より12%高く(回内より19%高く)、腕橈骨筋も回外のほうが中立より高い値になりました(回外は中立より6%高く、回内より5%高い)。三角筋前部だけは逆で、回内・中立のほうが回外より高い値でした(回内+6%・中立+9%)。下降局面では上腕二頭筋・腕橈骨筋に有意差が消え、三角筋前部だけ回内が高い値を保ちました。この研究はn=10・ケーブル種目という条件で、上腕二頭筋・腕橈骨筋の差の大きさも5〜6%と小さく、上腕筋は測定対象外です。

2本の結果は互いに食い違います。1本目は回内で腕橈骨筋が上がり中立と回外は同等、2本目は回外が中立より高いという結果です。対象も条件も違います。1本目は健常者が負荷なしで行った単純な運動、2本目は競技ボディビルダーがケーブルで8RMの負荷を挙げた運動で、どちらが実際のダンベルでのハンマーカールに近いかを一概には決められません。それでも、どちらの研究も「中立グリップが腕橈骨筋を最も働かせる」という主張を支持していないという点では一致します。中立が最大値になったという報告は、この2本のどちらにもありません。

もう1つ見えてくるのは、握りの向きが変えているのは肘の筋だけではないということです。2本目の研究では、三角筋前部(肩の筋)の働きも握りの向きで変わり、回外より中立・回内のほうが高い値でした。中立グリップの効果を語るなら、肘の2筋だけでなく肩の筋まで含めて考える必要があるということでもあります。

「前腕が太くなる」はどこまで言えるか

腕橈骨筋の筋腹は前腕の外側上部、肘のすぐ下にあります。前腕全体ではなく、肘寄りの一部です。前腕の周径や前腕の筋の厚みをアウトカムにした介入試験は、確認できた範囲では見当たりませんでした。効果として断定できるのは、腕橈骨筋という筋の位置までです。

ダンベルを握り続けるための前腕の筋(橈側手根屈筋・長橈側手根伸筋など)は、種目分類上は動作を作る主働筋や協働筋ではなく、姿勢を支える安定筋として扱われています。安定筋の関与は主に等尺性(長さを変えずに力を出す働き)で、肘を曲げ伸ばしする主働筋と同じ意味で「鍛えられる」とは言い切れません。

つまり、「ハンマーカールで前腕が太くなる」という主張には、確認できる部分とできない部分があります。腕橈骨筋という肘の屈筋が前腕の肘寄りに位置していることは解剖の事実です。一方、それが前腕全体の見た目や周径の変化につながるかどうかは、測定した試験が見当たらない以上、確認できた事実としては書けません。位置の話と、効果の話を分けて考える必要があります。

やり方|手首を回さないことだけを守る

  1. ダンベルを体の横に持ち、手のひらを内側に向けて腕を伸ばす― 準備の時点で握りを決めます。動作中に向きを変えると、通常のダンベルカールに近づきます

  2. 肘を体側に固定する― ここから動かさないことが、通常のダンベルカールとの唯一の違いです

  3. 手のひらの向きを保ったまま、前腕が垂直になるまで持ち上げる― 親指が肩を向いた位置が上げ切りの目安です

  4. 同じ道をゆっくり戻し、腕が伸び切る手前まで下ろす― 反動で振り戻さない範囲で下ろします

左右を交互に行う、両腕を同時に行う、片方を上げながらもう片方を下ろす交互同時のいずれの実施方法でも成立します。どれを選ぶかは動作の正しさに関わりません。

呼吸については、厚生労働省のe-ヘルスネットが筋トレ全般の注意として、血圧の急激な上昇を抑えるために息をこらえないよう促しています。曲げる・伸ばすの切り替えのたびに一呼吸置くつもりで進めると、途中で息を止めにくくなります。

肘は少しだけ前に出てよい

完全に曲げ切った位置では、肘がわずかに前へ出ることがあります。前腕が垂直を超えない範囲であれば、これは崩れではなく、分類データの手順にも記述されている自然な動きです。「肘は絶対に動かすな」と決めつける必要はありません。

上げ切りの合図は前腕が垂直になったところ

前腕が垂直になり、親指が肩を向いた位置が上げ切りの合図です。そこからさらに巻き上げようとすると、負荷の向きが関節の真上に近づいて上げ切り付近で抜けやすくなるため、可動域を無理に伸ばすメリットは小さくなります。

重量が勝っているサイン

重量が重すぎるときに出やすいサインは3つです。上体を振って反動を使う、肘が体側から大きく離れて前に出る、そして手首が返って手のひらが上を向くことです。手首が返った時点で、動作は前腕を回すダンベルカールに近づきます。ハンマーカールの手順そのものに前腕を回す動きは含まれていないので、手首の向きが変わった時点で違う種目をやっていることになります。特に上げ切り直前で手首が返りやすいので、そこだけ動画で横から確認すると気づきやすくなります。

変種は「肩の位置」と「器具」の2軸で並ぶ

ハンマーカールの変種は、大きく2つの軸で整理できます。

1つ目は肩の位置を変える軸です。ベンチを使って肩を後ろに開くインクライン、肩を前に固定するプリーチャーなどがあり、肩の角度で何が変わるかはインクラインダンベルカールのやり方で詳しく扱っています。

2つ目は負荷のかかり方を変える器具の軸です。ケーブル(ロープアタッチメント)やチューブに替えても、握りの向きと動作は同じです。ケーブルのロープ版は分類上も腕橈骨筋を主働筋とする点でダンベル版と同一の扱いです。

クロスボディ(体の前を斜めに横切るように上げる変種)やコンセントレーションカールは、今回参照した分類データに項目がありません。データが無い以上、これらの変種にどの筋が主働筋として割り当てられるかは、ここでは書きません。

重量の目安|ダンベルカールとの差は1〜2kg

トレーニング記録の投稿サイトStrength Levelは、ユーザーの申告記録をもとにレベル別の基準値を公開しています。数値は片手あたりの1RM(1回だけ挙げられる最大重量の推定値)で、ダンベルのバー重量(約2kg)を含みます。1RMはあくまで1回だけ挙げられる重量の推定値なので、10回・15回と続けて挙げる重量はこの数字より軽くなります。

ハンマーカール(片手)平均重量の目安(kg
レベル男性女性
初心者95
初級者158
中級者2312
上級者3218
エリート4323

出典: Hammer Curl Standards (kg)Strength Level2026-08-11 確認)

海外ユーザーの自己申告データにもとづく1RMの基準値です。有効記録198,427件(コミュニティ記録752,185件から絞り込み、2018年12月10日〜2026年3月5日)。数値は片手あたりで、ダンベルのバー重量(約2kg)を含みます。日本人の平均でもありません

この表は自分がどのあたりにいるかを知るための目安です。条件が揃っていない他人の数字より、自分の前回の記録のほうが基準として正確です。

ダンベルカールとの差

同じStrength Levelのデータで、ハンマーカールとダンベルカールをレベル別に突き合わせると、次のような差が出ます。

ハンマーカールとダンベルカールの差(Strength Level、2026-08-11閲覧)
レベルハンマー(男性)ダンベル(男性)差(男性)ハンマー(女性)ダンベル(女性)差(女性)
初心者97+254+1
初級者1513+287+1
中級者2321+21212±0
上級者3231+11818±0
エリート4342+12325−2

単位はkg・片手あたりの1RM。ハンマーカールは有効記録198,427件(2018年12月10日〜2026年3月5日)、ダンベルカールは957,996件(2017年3月19日〜2026年3月5日)で、母数も集計開始日も違う別集計。同一人物の比較ではない

男性は全レベルでハンマーカールのほうが重く、差は初心者+2kgからエリート+1kgへと縮んでいきます。女性は中級者以降で差が消え、エリートでは逆転します(23kg対25kg)。この差が縮む・逆転する理由は、この2つの集計だけでは特定できません。母数も集計開始日も違う別々の自己申告データを突き合わせた結果であり、同一人物がハンマーカールとダンベルカールの両方を挙げて比べたわけではないためです。

分類上の主働筋が入れ替わることと、実際に挙げられる重量が重いか軽いかは別の指標です。この表で確実に言えるのは、同じレベル帯であればハンマーカールのほうがわずかに重い数字が出やすいという傾向までです。

ケーブル(ロープ)版は別の数字

ハンマーカールにはケーブル(ロープアタッチメント)版もあり、Strength Levelではダンベル版とは別の項目として集計されています。平均は男性41kg・女性26kgで、レベル別では男性14/25/41/61/84kg・女性9/16/26/38/51kgです。ダンベル版の平均が男性23kg・女性12kgであることと比べると、単純な数字だけを見ればかなりの差があります。

ただし、この差を「ケーブルのほうが重い重量を扱える」と読むのは早計です。有効記録数はダンベル版198,427件に対しロープ版6,717件と約1/30で、集計期間もダンベル版が2018年12月10日から、ロープ版は2021年12月24日からと異なります。加えて、片手あたりの負荷なのかウェイトスタックの表示なのかという単位の定義文がページに見当たりません。ケーブル特有の単位の注意点はプレスダウンのやり方でも扱っていますが、結論は同じです。ダンベル版とケーブル版のkgを並べて優劣を語ることはできません。

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記録に残すこと

この種目で数字の意味を変えるのは、使った器具(ダンベル・ケーブル・チューブ)と、片手あたりか両手あたりかの2点です。記録するときはこの2つをひとことだけ添えておくと、あとで数字を比べられます。何を記録しておくと次の判断に使えるかは筋トレ記録のつけ方に、記録した数字の読み方は筋トレの成果を見える化する方法にまとめています。器具や持ち方を変えるたびに手で集計するのが負担なら、ジムの筋トレ記録アプリ比較で無料枠と料金を比べています。

まとめ

  • ハンマーカールは、ダンベルを縦に持ち手のひらを内側に向けたまま肘だけを曲げる種目
  • 変わるのは前腕の向きだけ。上腕筋の仕事は向きに左右されず、条件が変わるのは二頭側
  • 分類上の主働筋は腕橈骨筋に入れ替わるが、これは種目カタログ上の割り当てであって測定値ではない
  • 「中立グリップが腕橈骨筋を最も働かせる」は、測定した研究2本のどちらも支持していない。しかも2本は互いにも食い違う
  • 「前腕が太くなる」と断定できる根拠は確認できていない。言えるのは腕橈骨筋の位置まで
  • 動作で守ることは手首を回さないことだけ。回った時点でダンベルカールに近づく
  • 平均重量の目安(片手・男性)は初心者9kg、中級者23kg。同じレベルならダンベルカールより1〜2kg重い
  • ケーブル(ロープ)版は別集計。ダンベル版の数字とそのまま比較はできない