シュラッグは、バーベルやダンベルを持ったまま肩をすくめる種目です。分類上は単関節種目で、主働筋が僧帽筋の上部、協働筋が僧帽筋の中部と肩甲挙筋、安定筋が脊柱起立筋という構成になっています。この種目でいちばん決めにくいのは、重量ではなく「どこまで上げるか」です。この記事では、アップライトローとの配役の違い、上げる高さの決め方、器具による違い、公開データにもとづく重量の目安の順に扱います。

主に効く部位
僧帽筋 上部中部・肩甲挙筋も動員
器具
バーベルダンベル・ケーブル・トラップバーでも
難易度
初級動作は単純。高さの管理が要点
重量の目安(1RM)
108kg体重70kg男性・中級者・シャフト込み(推定)

目安重量は Strength Level の公開データから抜き出した推定値です。出典とレベル別の数字は、後半の「重量の目安」にまとめています。

シュラッグで効く筋肉と、僧帽筋上部の配役

シュラッグで動員される筋の分類は次のとおりです。

  • 主働筋 — 僧帽筋の上部
  • 協働筋 — 僧帽筋の中部、肩甲挙筋
  • 安定筋 — 脊柱起立筋

僧帽筋の上部線維は肩甲骨を挙上させ、上方回旋させ、頸部を伸展させるとされています。肩をすくめる動きは、このうちの挙上にあたります。中部線維は肩甲骨を内側に引き寄せ、下部線維は引き下げます。

立って行う種目にもかかわらず脊柱起立筋が安定筋に入っているのは、重りを持ったまま直立の姿勢を保つ仕事があるからです。

アップライトローとは配役が入れ替わる

僧帽筋の上部は、種目を変えると役割そのものが変わります。

同じ分類体系で見る配役の違い(2026-08-11確認)
筋・分類アップライトローシュラッグ
僧帽筋 上部安定筋主働筋
僧帽筋 中部協働筋協働筋
肩甲挙筋安定筋協働筋
三角筋 外側部主働筋(分類に出てこない)
脊柱起立筋(分類に出てこない)安定筋
Mechanics多関節(Compound)単関節(Isolated)

出典: Barbell Shrug2026-08-11 確認)

アップライトロー側の分類は同じ体系のBarbell Upright Rowのページによる(2026-08-08確認、upright-rowのやり方の出典と同一)。主働筋・協働筋・安定筋という役割の分類と、Mechanicsという関節数の分類は別の軸

肩をすくめる動きは、アップライトローでは直すべき崩れ、シュラッグでは動作そのものです。役割は筋に固有の性質ではなく、種目ごとに割り当てられる配役です。すくむ動きそのものを直す側の話は、アップライトローのやり方にまとめています。

この2種目を同じ土俵で測った研究もあります。首や肩の痛みを持つ女性12名を対象に、サイドレイズ・アップライトロー・シュラッグ・ワンハンドロー・リアフライの5種目で筋活動を測った研究では、僧帽筋の活動はシュラッグ102±11%、サイドレイズ97±6%、アップライトロー85±5%(最大随意等尺性収縮に対する比率)という結果でした。ただしサイドレイズとアップライトローは3〜10kgの負荷で足りたのに対し、シュラッグは20〜30kgを要しています。

分類が示す役割と、筋電図が示す活動量は別物です。アップライトローで僧帽筋の活動が85%も出ること自体は、僧帽筋上部が安定筋であることと矛盾しません。安定筋も、動きを止めるために力を出すからです。

僧帽筋上部は肩甲骨ではなく鎖骨に付いている

僧帽筋上部の起始は後頭部と項靭帯で、停止は鎖骨の外側1/3です。肩甲骨には直接付いていません。

教科書的には、上部線維は肩甲骨を挙上・上方回旋させるとされています。ただし、解剖研究では次のような指摘もあります。上部・中部線維の走行はほぼ横向きで、一般に描かれるような肩甲骨の挙上筋としての作用は成り立たず、実際は胸鎖関節まわりに鎖骨を回すことで肩甲骨を上げる、あるいは肩甲骨と鎖骨を後ろへ引く、というものです。

どちらかが間違いというわけではなく、教科書的な記述と、線維の走行を実際に調べた研究の指摘という関係です。ここから引き出せる実用的な結論は、まっすぐ真上に引き上げているつもりでも、実際に動いているのは鎖骨の傾きだということです。だから「どこまで上げたか」は肩の高さそのものより、肩のラインの傾きで見るほうが再現しやすくなります。

僧帽筋の中部・下部はここでは狙わない

上下させるだけで足ります。僧帽筋の下部と中部は、他の基本種目で鍛えられます。

中部が担当する「肩甲骨を内側に引き寄せる動き」はロー系の種目、下部が担当する「引き下げる動き」はプルダウン系の種目に対応します。中部を狙う基本形はシーテッドローのやり方、下部の下制はラットプルダウンの効かせ方にまとめています。僧帽筋下部は下制のほか、僧帽筋上部と共同で肩甲骨を上方回旋させる働きも持ちます。

背中の種目は「引く方向」と「上体を何が支えるか」の2軸で並べられますが、シュラッグはこの2軸のどちらにも乗りません。ロー系もプルダウン系も上腕を動かす種目ですが、シュラッグで腕はフックとして使うだけで、動くのは肩甲骨と鎖骨だけです。

シュラッグのやり方

  1. バーを順手か交互握りで持ち、肩幅かやや広めに握って立つ― 手幅はここで決めてしまい、以降は変えません

  2. 腕を伸ばしたまま、バーを太ももの前に下げて構える― 腕は最後まで曲げません

  3. 肩をできるだけ高く引き上げる― ただし高さの基準は次の項目で決めます。感覚だけに頼ると再現できません

  4. 決めた高さで止める― 勢いで通り抜けず、いちばんきつい上端で一度止めます

  5. 同じ道を通して下ろし切る― 下ろし切った位置が、次の1回の開始位置になります

上げる高さを先に決める

この動きは、肩を目一杯上げた位置に近づくほど難しくなります。そのため、高さの基準が必要になる場合があります。たとえば肩のラインが水平になるまで上げれば十分と考えてよい場合もあり、どこまでかは体格と可動域によります。

基準の決め方は手順にできます。

  1. 軽い重量のウォームアップセットで、目一杯上げたときの高さ(または角度)を覚える― ここで基準点を決めます

  2. 以降の全レップで、その高さに到達させる― 基準に届かない回は、可動域が足りていません

  3. いちばんきつい上端を、勢いで通り抜けない― 加速して通過すると、基準の意味が薄れます

厚生労働省のe-ヘルスネットは特異性の原理を「運動中のエネルギーの使われ方や筋肉の活動の仕方と関係する能力が増加することです」と説明しています。短い可動域で伸びた数字は、その短い可動域の中で伸びた能力だということです。

肩は回さない

「肩を前後に回す」動き、いわゆるショルダーロールを加えたシュラッグを見かけますが、この区間には負荷がかかりません。直立した姿勢では、重りは重力に逆らって上下する方向にしか抵抗を作らないからです。前後方向の動きは、重りが重力と垂直に動く区間にあたります。

上下させるだけで足ります。肩甲骨を寄せる動きを足すという工夫も見かけますが、理由は同じです。寄せる動きは肩甲骨を背骨側へ引き寄せる動きで、シュラッグが動かす方向とは別です。寄せる動きを鍛えたいなら、ロー系の種目のほうが向いています。

器具で変わるのは持ち方だけ

  1. バーベル順手か交互握りで、肩幅かやや広め。体の前にバーがあるぶん、太ももに沿わせて上下させます

  2. ダンベル体の横で持ちます。完全な直立でも、ごくわずかに前傾した姿勢でも行えます

  3. ケーブル低いプーリーの前に立ち、プーリーの近くに立ちます。腕を伸ばしたまま行います

  4. トラップバー・スミスマシン別項目として分類があります。持つ位置が体の横になるぶん、バーベル版より真下に近い方向で引けます

3つの器具とも、主働筋・協働筋・安定筋のリストは同一です。違うのは持ち方と、バーがどこにあるかだけです。

ビハインドバック(体の後ろで持つ)版については、分類を確認できる一次情報が見当たりませんでした。効き方の違いを書けるだけの根拠が無いため、ここでは触れません。

重量が数字として比べられるのは、公開データの集計があるバーベル版とダンベル版だけです。

腕を30度開くと何が変わるか

正常な参加者23名と、多方向性の肩関節不安定症のある参加者14名を対象に、標準のシュラッグ(腕は体の横)と、前額面で肩関節を30度開いた位置でのシュラッグを比べた研究があります。表面筋電図で僧帽筋の上部・中部・下部と前鋸筋を測定しました。

結果は、4つの筋すべてで標準より高い活動が見られ、僧帽筋の上部と下部は両群で有意に高くなりました。中部と前鋸筋が有意に高くなったのは正常群だけでした。

上部と下部が同時に高くなったのは、下部が上部と共同で肩甲骨の上方回旋にはたらくという役割と同じ向きです。

よくある崩れ

  • 腕で引き上げる(アップライトローの動きに近づいています。あちらは主働筋が三角筋の外側部なので、狙いが変わります)
  • 反動で弾ませる
  • 下ろし切らない
  • 回数だけ増えて、高さが縮んでいる

重量の目安

Strength Levelの集計(2026-08-11確認)では、バーベルシュラッグの平均1RMは男性126kg・女性67kgです。集計対象は372,602件のコミュニティ記録から絞られた75,410件の有効結果です(男性72,216件・女性3,194件、2017年8月18日〜2026年3月5日)。

シュラッグ(バーベル)平均重量の目安(kg
レベル男性女性
初心者4214
初級者7031
中級者10857
上級者15489
エリート205127

出典: Barbell Shrug StandardsStrength Level2026-08-11 確認)

男性は体重70kg、女性は体重55kgの行を抜き出した値です。数字は1RM(1回だけ挙げられる重量)の推定値で、シャフト約20kgを含むバーベル全体の重量です。海外ユーザーの自己申告データにもとづく集計であり、日本の平均を示すものではありません。上げる高さの基準は揃っていないため、可動域の違いによる差は反映されていません

この表を読むときの注意は2つあります。1つはシャフト込みの総重量であること。中級者の108kgは、20kgのシャフトに44kgずつ足した状態です。もう1つは1RMであること。10回続けるセットで使う重量は、ここから逆算します。

「シュラッグの平均」を調べるとダンベル版が出てくる

Strength Levelでシュラッグのページを探すと、URLの末尾が「shrug」のページはダンベル版へ転送されます。ダンベル版の平均は男性42kg・女性25kgですが、これは片手のダンベル1個あたりの重さです(有効結果62,505件)。

バーベルの126kgと並べても比較になりません。器具を変えたら、数字を引き継がずに測り直すことになります。

単関節種目なのに、平均がベンチプレスより重い

バーベルシュラッグは単関節種目に分類されますが、平均1RMはベンチプレスの平均を上回り、スクワットの平均に迫ります。

単関節種目なのに桁が違う(すべてバー込み総重量の1RM推定値・男性の平均・2026-08-11確認)
種目平均1RM有効結果分類
バーベルシュラッグ126kg75,410件単関節
ベンチプレス96kg10,923,537件多関節
スクワット131kg7,039,938件多関節
デッドリフト154kg6,393,746件多関節

出典: Barbell Shrug Standards2026-08-11 確認)

ベンチプレス・スクワット・デッドリフトの数値もStrength Levelの同日集計(各種目のページはreferences参照)。バーベル重量は通常20kgのシャフトを含む総重量の1RM推定値

要因は3つ考えられます。

  1. 可動域が小さいこと。肩を上下させるだけです
  2. どこまで上げれば1回かの共通基準が無いこと。上げ幅を縮めれば、数字は際限なく伸びます
  3. 有効件数が2桁違うこと。母集団の性質が同じとは言えず、シュラッグを記録している層に偏りがある可能性が残ります

だからシュラッグの数字は、他人と比べる用途にはいちばん向きません。自分の記録どうしを、同じ高さのもとで比べるためのものと考えるほうが実用的です。

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記録には高さの基準をひとことだけ足す

種目名・重量・回数に加えて、「肩のラインが水平まで」「鏡の◯の位置まで」のような、外から見て判定できる基準を1回書いておけば、次回そこから始められます。

記録する項目の決め方は筋トレ記録のつけ方完全ガイドにまとめています。伸びを推移で見る方法は筋トレの成果を見える化する方法、手集計が負担なときはジムの筋トレ記録アプリ比較で扱っています。

厚生労働省のe-ヘルスネットは漸進性の原則を「体力・競技力の向上に伴って、運動の強さ・量・技術課題を次第に高めていくことです」と説明していますが、上げ幅とタイミングまでは決められていないので、そこは自分の記録から判断することになります。

まとめ

  • 主働筋は僧帽筋上部。協働筋は僧帽筋中部と肩甲挙筋、安定筋は脊柱起立筋。分類上は単関節種目
  • 僧帽筋上部はアップライトローでは安定筋、シュラッグでは主働筋。役割は種目ごとの配役
  • 僧帽筋上部の停止は鎖骨の外側1/3。線維の走行はほぼ横向きで、鎖骨が回ることで肩甲骨が上がるという指摘がある
  • 上げるほど難しくなる種目なので、軽い重量のウォームアップで高さの基準を決めてから重量を積む
  • 肩を前後に回す動きは、重りが重力と垂直に動く区間なので負荷にならない
  • 腕を30度開いた位置でのシュラッグでは、僧帽筋の上部と下部の活動が高かったという測定がある(リハビリ文脈の研究)
  • 平均は男性126kg・女性67kg(1RM)。体重70kgの男性・中級者で108kg。いずれもシャフト約20kg込み
  • ダンベル版は片手1個あたりの別集計。「シュラッグ」で調べるとこちらの数字が出てくる