2分割と3分割のどちらがいいかは、分割数だけでは決まりません。週に何日ジムへ行けるかを先に決めると、各部位を週に何回鍛えられるかが日数と分割数の掛け算で自動的に決まるからです。各部位を週2回に届かせたいなら、2分割は週4日、3分割は週6日が必要になります。厚生労働省のe-ヘルスネットは成人および高齢者に週2〜3日の筋トレを推奨しています。この日数のままなら、選択肢は実質的に2分割か全身法に絞られます。
分割数だけでは決まらない|日数との掛け算で部位の頻度が決まる
分割数を先に決めても、答えは出ません。週の日数と組み合わせて初めて、各部位を週に何回鍛えられるかが決まります。たとえば同じ「3分割」でも、週3日しか行けない人は各部位が週1回、週6日行ける人は週2回と、中身がまったく違うものになります。
| 週の日数 | 2分割(A/B) | 3分割(A/B/C) |
|---|---|---|
| 週2日 | 各部位 週1回 | 各部位 週0.67回(3週で2周) |
| 週3日 | 各部位 週1.5回 | 各部位 週1回 |
| 週4日 | 各部位 週2回 | 各部位 週1.33回 |
| 週5日 | 各部位 週2.5回 | 各部位 週1.67回 |
| 週6日 | 各部位 週3回 | 各部位 週2回 |
※ 週の日数 ÷ 分割数の算数であって、研究の結果ではありません。A→休→B→休→Aと順に回した場合の平均値です
読み方は3点です。
- 各部位を週2回に届かせる最小日数は、2分割なら週4日、3分割なら週6日です。3分割は「分割を増やす」形というより、「日数を増やせる人が使う」形に近くなります
- 週3日で3分割にすると、各部位は週1回になります
- 週2日は、そもそも分割そのものが成立しにくい日数です
ここで基準になる「週2回」は、次の章で扱う筋肥大の研究に由来します。ACSMのポジションスタンドは、トレーニング頻度について未経験者は週2〜3日、中級者は週3〜4日、上級者は週4〜5日という推奨を示しています。ここで示されているのは「日数」であって「分割数」ではありません。3分割で各部位を週2回に届かせるための週6日は、この上級者向けの推奨(週4〜5日)すら超えています。
週2日なら、この記事の選択肢に入らない
週2日を2分割にすると、表の1行目のとおり各部位は週1回になります。2分割・3分割のどちらを選ぶかという二択自体が、週2日では意味を持ちにくくなります。週2日でどう組むかは、週2の筋トレは全身法にまとめています。
部位の頻度は、どこまで結果を左右するのか
分割数と日数の掛け算で頻度が決まることは分かりました。次に、その頻度の差が実際の結果をどれだけ左右するのかを見ます。筋肥大と筋力で、証拠の向きが違います。
筋肥大|総量をそろえると差が出ていない
Schoenfeldら(2016)は10研究のメタ解析から、主要な筋群は週2回以上鍛えるべきだと結論づけました。ただし同じ著者らが2019年に対象を25研究へ広げて解析し直したところ、週の総量をそろえた比較では、頻度による有意差は見られなかったと報告しています。
2026年に発表されたPellandらのベイズ多水準メタ回帰(67研究・2,058名)でも、頻度が筋肥大に与える効果は傾きがゼロを超える事後確率が100%に届かず、効果があるとは言い切れない水準にとどまっています。総量に関する評価(次項)と比べると、頻度側の確からしさは低いという結果です。
筋力|研究の結論が割れている
筋力については、話が単純ではありません。ここが本記事でいちばん重要な部分です。
Grgicら(2018)は22研究のメタ解析で、週1回・2回・3回・4回以上の効果量が0.74、0.82、0.93、1.08と、頻度が上がるにつれて段階的に大きくなること(p = 0.003)を報告しています。ところが同じ論文には続きがあり、週の総量をそろえた研究だけに絞って分析すると、頻度による有意な効果は消えます(p = 0.421)。
一方、2026年のPellandらの解析では、頻度が筋力に与える効果は事後確率100%(逓減はあるが確からしい)という結果です。
つまり2018年の解析は「頻度の効果に見えるものは総量の差で説明できる」、2026年の解析は「頻度そのものにも筋力への関係がある」と、方向の違う結論を出しています。どちらが正しいと決めつけることはできません。この記事で取る立場は、割れているという事実を開示したうえで、割れているときにどちらの結果になっても損をしない選び方を示すことです。
はっきりしているのは総量のほう
頻度をめぐる証拠は割れていますが、総量についてはどちらの解析も同じ方向を向いています。
Schoenfeldら(2017)は15研究・34群のメタ回帰で、週あたりのセットが1つ増えるごとに効果量が+0.023(割合にして+0.37%)上がる(P = 0.002)という段階的な関係を報告しています。Pellandら(2026)でも総量の効果は筋肥大・筋力とも事後確率100%で、頻度側より確からしさがはっきりしています(ただし総量の効果自体は逓減し、筋力のほうが逓減が強く出ます)。
分割の形そのものと総量の関係を直接比較した研究もあります。Evangelistaら(2021)は、未訓練者67名を対象に8週間、分割ルーティン(A/B・週2回・1回8セット)と全身ルーティン(週4回・1回4〜8セット)を8〜12RM・休憩60秒の条件で比較しました。結果は、ベンチプレスとスクワットの最大筋力、上腕伸筋・上腕屈筋・大腿四頭筋の筋厚のいずれも、週2回の分割群と週4回の全身群のあいだで有意差なしでした。対象は未訓練者・8週間という条件つきですが、週の総量が同じなら、分割数を変えても結果は変わらなかったという一例です。
ここまでをまとめると、着地点は分割の形ではなく総量のほうにあります。分割数を増やしても、そのぶんのセット数を実際に置けなければ意味がありません。次の章では、この「置けるかどうか」を日数と時間から逆算します。
決め方|週の日数と1回の時間から逆算する
手順1:直近4週で「実際に行けた」日数を数える — 理想の日数ではなく実績を使います。数え方は筋トレ記録のつけ方に沿って進めます
手順2:1回に使える時間から、置けるセット数を出す — ウォームアップを除いた時間を、1セットにかかるおおよその時間で割ります
手順3:部位あたりの週セット数を、頻度で割る — 同じ週セット数でも、頻度が低いほど1回あたりに積むセット数は増えます
手順1|直近4週で「実際に行けた」日数を数える
週の日数は、理想ではなく実績で数えてください。「週4日は行けるはず」という予定と、実際に行けた日数がずれている場合、後者を採用します。出張や残業で行けない週があるなら、その週も含めて4週分を平均してください。願望込みの日数で計算すると、次の手順3で出す「1回あたりに置くセット数」が実際より少なく見積もられ、時間内に収まらない計画になりやすくなります。行けた日数の数え方や、記録をどう残すかは筋トレ記録のつけ方完全ガイドにまとめています。
手順2|1回に使える時間から、置けるセット数を出す
ACSMのポジションスタンドは、筋肥大をねらう帯(6〜12RM)の休憩を1〜2分としています。ここから1セットにかかる時間を見積もります。
1セットは、挙上に約30〜40秒、休憩に90秒かかるとすると、合計でおよそ2分です。この前提で計算すると、60分のセッションからウォームアップ10分を引いた50分では、25セット前後が置けます。90分のセッションなら、80分を2分で割って40セット前後です。
この計算はあくまで目安であって、研究が示した上限ではありません。挙上時間や休憩の取り方は人によって変わるため、自分の実測に置き換えて使ってください。休憩の分数そのものの考え方は筋トレのインターバルは何分?目的別の目安と計り方で詳しく扱っています。
手順3|部位あたりの週セット数を、頻度で割る
たとえば、胸に週12セット置きたいとします。
- 2分割・週4日 → 部位は週2回 → 1回あたり6セット(12 ÷ 2)
- 3分割・週3日 → 部位は週1回 → 1回あたり12セット(12 ÷ 1)
同じ週12セットでも、3分割のほうが1回のセッションに倍のセット数を積むことになります。これが「3分割は時間がかかる」と言われる理由の正体です。手順2で出した「置けるセット数」の上限と、この「置きたいセット数」を照らし合わせると、自分の時間で3分割が現実的かどうかが見えます。総量の数え方は総負荷量の計算方法で扱っています。
判断表
| 週に行ける日数 | 1回60分未満 | 1回60〜90分 |
|---|---|---|
| 2日 | 全身法 | 全身法 |
| 3日 | 2分割 | 2分割(全身法でも可) |
| 4日 | 2分割 | 2分割 |
| 5日 | 2分割 | 2分割 または 3分割 |
| 6日 | 3分割 | 3分割 |
※ この表は、①各部位が週2回に届くか ②1回に置くセット数が時間内に収まるか、の2条件から導いた当メディアの整理です。研究がこの組み合わせを比較した結果ではありません
2条件の根拠はここまでに書いたとおりです。①は冒頭の早見表(週の日数×分割数)の算数と、Schoenfeldら(2016)が示した「週2回以上」の目安。②は手順2で出したセット数の計算です。この2つを満たせる組み合わせを埋めると、上の表になります。たとえば週5日行けて1回90分使える人は、表の判定では2分割・3分割のどちらでも構いません(3分割でも週1.67回までは届き、時間の余裕でセット数を補えるためです)。同じ週5日でも1回60分未満なら、3分割にすると1回あたりのセット数が時間に収まりにくくなるため、2分割止まりが無難です。
「48〜72時間空ける」という数字について
分割法を扱う記事でよく見かけるのが、「同じ部位は48〜72時間空ける」という書き方です。厚生労働省のe-ヘルスネットを確認したところ、休息日を設けることは書かれていますが、何時間空けるかという数字は書かれていません。分割法や部位分けについての記載もありません(2026-08-12確認)。よく見かける数字ですが、公的資料には根拠が見当たりません。
数字を否定するより、代わりになる判断材料を持つほうが実用的です。前回と同じ重量で回数が落ちていないか、同じ回数でも努力度が上がっていないか。「なんとなく疲れが残っている気がする」という感覚だけで休むかどうかを決めると、判断が日によってぶれます。時間ではなく記録で判断すれば、48時間か72時間かという議論自体が要らなくなります。重量を上げるかどうかの判断基準は筋トレで重量を上げるタイミングに、回復が追いついていないと感じたときの対処はデロードのやり方とタイミングにまとめています。同じ部位を次にいつやるかという間隔の決め方そのものは、筋トレの頻度は週何回で扱っています。
決めた分割を、実際に回すには
2分割・3分割は、曜日に固定できません。A→休→B→休→Aと回していくと、週をまたぐたびに曜日がずれていくためです。月曜がA日だった週の翌週は、A日が火曜や水曜にずれます。「今日はどっちの日だったか」を毎回思い出す必要が出てくるのは、このためです。これは観察であって、研究の裏づけがある主張ではありませんが、分割をやめてしまう理由としてよく起きるパターンです。
対処は単純で、思い出す作業を先に終わらせておくことです。A日・B日を、曜日ではなく日付に貼っておけば、当日考えることがなくなります。
まとめ
- 分割数は単独では決まらない。週の日数 × 分割数で各部位の週頻度が決まる
- 各部位を週2回に届かせる最小日数は、2分割で週4日、3分割で週6日。3分割で必要な週6日はACSMの上級者向け推奨すら超える
- 筋肥大は、頻度の差が総量をそろえると出ていない(Schoenfeldら2019、Pellandら2026)
- 筋力は、研究の結論が割れている。Grgicら(2018)は総量をそろえると有意差が消えるとし、Pellandら(2026)は頻度そのものにも効果があるとしている
- はっきりしているのは総量のほう。分割の形が同じでも、週にいくつ置けたかで結果は変わる(Evangelistaら2021)
- 決め方は、直近の実績日数から1回に置けるセット数を逆算し、部位あたりの週セット数と照らし合わせる
- 「48〜72時間空ける」という数字は公的資料に根拠が見当たらない。時間ではなく記録で判断する
- 分割は曜日に固定できない。A日・B日は日付に先貼りしておくと崩れにくい
まずは直近4週で実際に行けた日数を数えて、冒頭の早見表に当てはめてみてください。2分割か3分割かは、そこから自動的に絞られます。



