バーピーは、直立の姿勢から始まり直立の姿勢で終わる6局面の動作で、分類上はジャンプも腕立て伏せも含みません。ジャンプを足した形は「バーピージャンプ」と呼ばれることもありますが、これはあとから足す要素です。何を1回とするかで別の運動になるため、回数を比べるには先に自分の1回の定義を決めて固定する必要があります。強度を上げる方法は、速さを上げる・動作の要素(ジャンプや腕立て)を足す・加重するの3つです。この記事では、動く関節と支える関節の分担、6局面のやり方と強度を下げる段階、メッツ表に2つある行の読み方、レベル別の回数データの使い方を順に整理します。
- 主に動く関節
- 股関節・膝・脊柱前屈から立位までの反復
- 上半身の役割
- 支える(静的)肩甲骨・肩・肘の位置を保つ
- 器具
- 自重加重は任意
- 計測
- 回数1回の定義を自分で固定する
- 回数の目安(中級)
- 33回男性・Strength Level(推定)
バーピーで動く関節と、支える上半身
動く側と支える側
バーピーで実際に動いているのは、脊柱の屈曲・伸展、股関節の屈曲・伸展、膝の屈曲・伸展、足首の底屈です。前屈からしゃがみ、ヒップバックでプランクの姿勢を作り、また立ち上がるまでの間、この4つの関節が続けて働きます。
上半身側は静的です。肩甲骨の前方突出、肩の水平屈曲、肘の伸展を保ったまま、姿勢を動かさない役に回ります。プランクへ脚を蹴り出す局面でも、腕は姿勢を支える支点であって、何かを押し込む主役ではありません。
「全身運動」と呼ばれる理由
バーピーが全身運動と呼ばれるのは、下半身側の4つの関節が連続して動くことと、その間ずっと上半身が姿勢を保ち続けることが同時に起きるからです。LiftLogの種目マスタでも、主働部位は太もも前と体幹、補助部位は胸と肩で登録されていて、下半身が主働・上半身が補助という役割分担は種目データとも一致します。
筋活動の割合は分かっていない
バーピーを対象にした筋電図の研究は見つかっていません。だから「どの筋にいちばん効くか」を割合つきで書くことはできません。体幹が支える役に回る仕組みそのものは、プランクの効果とやり方のほうで実測データつきで扱っています。バーピーの体幹は、プランクと同じ支える側の働きをしています。
「低衝撃」は原型の分類であることに注意
この分類データベース上、バーピーの着地衝撃は「低い」に区分されます。ただしこれは、ジャンプを含まない原型の分類です。強度を上げる要素としてジャンプを足せば、着地の衝撃はこの分類より上がります。「バーピーは低衝撃」とそのまま覚えるのではなく、足す要素次第で衝撃も変わると理解しておく必要があります。
バーピーのやり方|6つの局面と、1回の定義
直立する― 腕は体の横に下ろします
体を前に倒してしゃがむ― 前屈スクワットの姿勢まで下ります
1回目のヒップバックで、手を床につく
両脚を後ろへ蹴り出し、プランクの姿勢を作る
2回目のヒップバックで、脚を引き込む準備をする
脚を体の下へ引き込み、直立の姿勢まで立ち上がる― ここまでで1回です。ジャンプや腕立ては含みません
ジャンプと腕立ては「足せるもの」
分類上の原型は、この6局面で終わります。末尾の動作は直立に立ち上がるところまでで、ジャンプは含まれていません。腕立てについても、準備・実行のどこにも記載がありません。
一方、研究で使われるプロトコルの例では、垂直跳びを含み、腕立ては不要で、胸を床につける必要もない、という条件で1回が定義されています。回数の記録データベースが公開しているレベル別の数値も、ジャンプの有無や腕立ての有無を明らかにしていません。
同じ「バーピー10回」という記録でも、中身が違えば負荷はまったく別のものになります。査読つきの文献レビューも、先行研究のあいだで用語と動作の技術的な定義が一致していないことを課題として挙げています(Bingleyら, 2019)。バーピーは、回数で記録する種目でありながら、比べる前提がそもそも揃っていない種目です。
| 足す要素 | 増える負担 | 記録上の扱い |
|---|---|---|
| 垂直跳び | 着地の衝撃・脚のパワー発揮 | 別の種目として記録を分ける |
| 腕立て | 上半身を押す仕事 | 別の種目として記録を分ける |
| 加重ベストなど | 6局面すべての負荷 | LiftLogでは+kg欄に加重を入力 |
| 速さを上げる | 同じ動作のまま強度が上がる | 同じ種目として比較できる |
※ 数値ではなく、質的な変化の軸としての整理。組み合わせれば負担は重なる
強度を下げる段階
強度を上げる前に、下げる段階も押さえておきます。
- ステップバック版 ― 蹴り出さずに、片脚ずつ後ろへ下げてプランクの姿勢を作ります
- ジャンプなし版 ― 最後の立ち上がりで跳ねず、直立に戻るだけで終えます
- 台に手を置く版 ― 台に手をついて前屈の角度を浅くし、手首と肩の負担を下げます
段階を動かすときの原則は、一度に1つだけ変えることです。ステップバックと台の両方を同時に変えると、前回との差が何によって生まれたのか切り分けられなくなります。
バーピーは何回が目安か
バーピーには回数の公開データがあります。ただし、その数字をそのまま自分の目標にするには条件が足りません。
| レベル | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 初心者 | 1回未満 | 1回未満 |
| 初級者 | 10 | 8 |
| 中級者 | 33 | 27 |
| 上級者 | 61 | 52 |
| エリート | 95 | 81 |
出典: Burpees Standards (kg)/Strength Level(2026-08-11 確認)
※ 1回の定義が公開されていません(ジャンプ・腕立ての有無が不明)。海外ユーザーの自己申告データで、有効結果19,304件(男性15,625・女性3,679、2019年1月2日〜2026年3月5日)にもとづく数字です。レベルは投稿者集団の中での順位で決まっていて、日本人の平均でも公的な基準でもありません
この表をどう使うか
この表でいちばん目を引くのは、初心者の基準が男女とも1回未満であることです。公開データの出発点は、1回もできない状態にあります。
ただしこの数字を他人との比較に使うのは向きません。ジャンプや腕立てを足しているかどうかで、同じ回数でも負荷はまったく違うからです。実際的なのは、他人の回数と比べることではなく、自分の1回の定義(例: ジャンプあり・腕立てなし)を固定したうえで、前回の自分の回数と比べることです。記録項目の決め方は筋トレ記録のつけ方完全ガイド、回数を伸ばす考え方は漸進性過負荷のやり方にまとめています。
「11.0メッツ」と「7.5メッツ」の読み方
メッツは、安静に座っている状態を1としたとき、その活動が何倍のエネルギーを消費するかを示す強度の単位です。
身体活動のメッツ表(改訂第2版・成人版)には、バーピーの名前が載る行が2つあります。1つは7.5メッツの行で、「健康体操(例:腕立て伏せ、腹筋運動、懸垂、ジャンピングジャック(ジャンプしながら手足を開閉、バーピー、バトルロープ):きつい労力」という自重体操のグループです。もう1つは11.0メッツの行で、「高強度インターバルトレーニング:バーピー、マウンテンクライマー、スクワットジャンプ、タバタ式、きつい労力」というHIIT形式のグループです。
どちらの行も、バーピーという種目単体を一定の速さで測った値ではありません。「きつい労力」という条件つきの活動グループに、バーピーが例として含まれているだけです。11.0メッツという数字が推定値(赤字)扱いかどうかについても、原典のページ上で確認しようとしましたが判定できず、参照ページも確認できなかったため、推定値である可能性を残したまま扱う必要があります。だからこの記事では体重別の消費カロリー表は作りません。条件が違う値を体重に掛けても、出てくるのは精度の見かけだけです。
11.0メッツの行には、マウンテンクライマーの効果も同じ行に並んでいます。マウンテンクライマーは秒で記録する種目、バーピーは回数で記録する種目という違いはありますが、どちらも単体の値ではなく条件つきの分類値として扱う必要がある点は共通しています。
心拍・きつさ・上半身の疲労
バーピーとスプリント走を直接比べた急性反応の研究があります(Bingleyら, 2019)。レクリエーションレベルの24名が、15分間のHIITをバーピー条件・スプリント条件それぞれで行ったところ、心拍数はほぼ同じでした(バーピー170.45±1.95、スプリント170.54±2.07 bpm)。一方、血中乳酸はバーピーのほうが高く(14.62±3.70 対 11.90±3.53 mmol/L)、主観的なきつさ(RPE)もバーピーのほうが高く、上半身の疲労(ベンチスローの出力低下)もバーピーのほうが大きいという結果でした。
心拍だけを見れば同じ強度に見えても、乳酸・主観的なきつさ・上半身の疲労では差が出るという構造です。この研究は24名の急性反応を扱った学会発表段階のもので、長期的な効果を示したものではありません。
「アフターバーンで痩せる」について
運動後もエネルギー消費が高い状態が続く現象は、アフターバーン(運動後過剰酸素消費・EPOC)と呼ばれます。運動全般を対象にしたレビュー(LaForgiaら, 2006)によれば、EPOCが占める割合は運動全体の純酸素消費量のうち6〜15%です。そして「EPOCが減量に重要な役割を果たすという初期の楽観的な見方は、おおむね支持されていない」ともされています。
このレビューはバーピーを対象にしたものではなく、運動全般を扱ったものです。だから「バーピーをやればアフターバーンで痩せる」とは書けません。逆に「効果がない」とも言えません。分かっているのは、この割合の範囲までです。
毎日やっていいか
厚生労働省は、成人および高齢者に筋力トレーニングを週2〜3日実施することを推奨しています。マシンを使うウエイトトレーニングだけでなく、自重で行う腕立て伏せのような運動もこれに含まれます。負荷をかけると同時に休息日をしっかり設けること、息をこらえないこと、筋トレの時間が長くなりすぎると逆効果になる可能性があることも、同じ資料に明記されています。バーピーだけの頻度基準は見つかっていないので、この週2〜3日という筋力トレーニング全体の推奨に乗せて考えるのが妥当です。
記録に残すのは回数と、その日の1回の定義
回数だけでは同じものさしになりません。「20回、ジャンプあり腕立てなし」のように、回数とその日の1回の定義を1行残しておけば、次回どこを比べればいいかがはっきりします。自宅で自重種目を中心に記録したい場合は、自宅トレーニングの環境設定ガイドでトレーニング環境を「自宅」に絞る手順をまとめています。
まとめ
- バーピーは分類上、直立で始まり直立で終わる6局面の動作。ジャンプも腕立ても含まない
- 何を1回にするかで別の運動になる。強度を上げるレバーは速さ・動作の要素・加重の3つ
- 動くのは脊柱・股関節・膝・足首。上半身は肩甲骨・肩・肘の位置を保つ静的な支え役
- 筋活動の割合を示す研究は見つかっていない。体幹が支える仕組みはプランクと共通
- メッツ表の行は2つ(7.5と11.0)。どちらも単体の値ではなく、条件つきの分類値
- 心拍はスプリントとほぼ同じでも、乳酸・主観的なきつさ・上半身の疲労では差が出る
- 「アフターバーンで痩せる」は断定できない。EPOCの寄与はおよそ6〜15%という範囲まで
- レベル別の回数データはあるが1回の定義は非公開。他人と比べず、自分の定義を固定して前回と比べる



