レッグレイズは、股関節を曲げて脚を持ち上げる種目です。この動きの主役は腸腰筋で、腹直筋は骨盤と体幹を安定させる側に回ります。腹直筋を動かしたいなら、股関節を曲げ切ったあとさらに骨盤を持ち上げるところまでを1回にする必要があります。この条件は、床でもハンギングでも共通です。この記事では、脚を上げる動きと体を丸める動きの違い、骨盤を持ち上げるところまでを1回にする手順、床から吊り下がりまでの段階の進め方、公開データにもとづく回数の目安を順に整理します。
- 主に効く部位
- 腸腰筋骨盤を返すと腹直筋が加わる
- 器具
- 自重床は不要・ハンギングは懸垂バー
- 難易度
- 初級〜中級床は初級、吊り下がりは中級
- 回数の目安
- 31回体重70kg男性・中級者・床(推定)
レッグレイズで働く筋肉|脚を上げる動きと、体を丸める動き
レッグレイズは股関節を曲げて脚を持ち上げる種目です。動作の分類を見ると、床・吊り下がり・キャプテンズチェアのいずれも、主役になっている筋は同じです。
主役は腸腰筋、腹直筋は姿勢を保つ側に回る
床でもハンギングでも、レッグレイズの主役は腸腰筋です。腸腰筋は大腰筋・小腰筋・腸骨筋の3つで構成される筋群で、股関節を曲げる動きの主役にあたります。大腰筋の起始は腰椎1〜4番の椎体と横突起で、下肢が固定されている場面では体幹を曲げる働きも持ちます。
一方、腹直筋と腹斜筋は、脚を上げるだけの範囲では働き方が違います。動的に収縮するのは、実際に体幹の屈曲が起きたときだけです。体幹の屈曲がなければ、股関節を曲げるあいだずっと、骨盤と体幹を安定させるためだけに働きます。脚を上げているとき、腹直筋は「曲げる筋」ではなく「支える筋」として働いていることになります。
腹直筋が主役に入れ替わるのは、骨盤を持ち上げたとき
同じ吊り下がりの姿勢でも、動作の続きを変えると分類が入れ替わります。股関節を曲げ切ったあと、さらに膝を肩へ近づけるように体幹を曲げる動きを足すと、主役は腸腰筋から腹直筋に移ります。この動作は「レッグレイズ」ではなく「レッグヒップレイズ」と呼ばれ、単関節の種目から多関節の種目へ、補助種目から基本種目へと分類が変わります。腸腰筋は協働筋という扱いに回ります。
手順の順番にも指定があります。体幹を曲げる動きを出すには、先に股関節を曲げ切る必要があるかもしれない、とされています。つまり脚が上がり切る前に腹筋を意識しても、動きとしては成立しにくいということです。効かせるコツというより、どこまでを1回とするかという定義の話になります。
「腹筋の下部に効く」はどこまで言えるか
レッグレイズは「腹筋の下部に効く」種目として紹介されることが多い種目ですが、一次研究の結論は割れています。
Lehman と McGill が2001年に発表した報告では、大学生11名を対象に測定し、上部と下部で筋活動に差はなかったという結果でした。部位間の差は小さく、臨床的・治療的な意味を欠く可能性がある、としています。
Marchettiらが2011年に発表した報告では、健康な成人男性11名を対象に、最大随意等尺性収縮の25±6%という低強度の課題で測定しています。上部と下部の筋電図の比は、カールアップで1.25、レッグレイズで0.68という結果でした(p=0.02)。数字としてはレッグレイズのほうが下部寄りですが、著者らは上部と下部が「機能的な単位として同じ課題に貢献していた」とも書いています。
Gomirato と Grenier が2023年に発表した報告では、15名を対象に超音波で筋の厚みの変化を測定しています。最上部の区画はクランチで、最下部の区画はレッグレイズで厚みの変化が最大でした。ただし厚みの変化量そのものは、クランチのほうがレッグレイズより36.39±3.21%大きいという結果です(p<.01)。
3本を並べると、下部寄りになることは複数の報告で観察されている一方、差の大きさは小さいという報告があり、腹直筋全体の動員量ではクランチのほうが大きいという報告もあります。「下部を鍛える種目」という言い方は、この3本のどれからも直接は出てきません。部位を選ぶ議論より、骨盤を返せているかどうかのほうが自分の目で確認でき、動く筋そのものが変わります。クランチ側の測定と上部・下部の議論は、クランチのやり方で扱っています。
レッグレイズのやり方|骨盤を持ち上げるところまでを1回にする
動作自体はシンプルですが、整えるところは1つに絞れます。股関節が曲がり切ったところで終わらせず、そこから骨盤を持ち上げるところまでを1回にすることです。
仰向けになり、手のひらを腰の横かお尻の下に置いて骨盤を支える― 支える手は、次のステップ以降で骨盤が浮いていないかを確認する目的も兼ねます
両脚をそろえ、膝を軽く曲げる― 膝を伸ばし切るのは、段階が上がってからにします
股関節を曲げて脚を上げる。腿が体に近づくところまで― ここまではまだ股関節を曲げているだけの範囲です
股関節が曲がり切ったら、そこから骨盤を床から持ち上げて膝を肩へ近づける― ここが1回の折り返しです。骨盤が持ち上がると、腰は自然と丸まります
骨盤、股関節、膝の順に、同じ道をたどって戻す― 上げるときと同じ速さで下ろすと、反動が入りにくくなります
かかとを床につけずに止めて、次の1回を始める― つけて仕切り直してもかまいません。次の1回の開始位置がそろうことが目的です
腰と床の隙間が空くとき
脚を上げていくと、腰と床のあいだに隙間が空くことがあります。原因は解剖の中にあります。腸腰筋のうち大腰筋は、腰椎1〜4番の椎体と横突起から始まっています。脚を上げる動きの主役がこの筋である以上、骨盤を保持できていないと、腰椎の側が引かれます。
対処できるところは3つあります。膝を曲げる、可動域を狭くして脚を下ろし切らない、手を腰の下に入れて骨盤を支える、のいずれかです。
段階の上げ方|膝を曲げる → 伸ばす → 吊り下がる
負荷を上げる軸は2つに分けて考えられます。
1つ目は重さの軸です。膝を曲げる → 膝を伸ばす → 床から吊り下がる、の順に、脚のモーメントアームと体の位置が変わり、負荷が増えていきます。
2つ目は動きの軸です。股関節を曲げるだけの範囲から、骨盤を持ち上げるところまで動きを足すと、動く筋そのものが腸腰筋から腹直筋へ変わります。
先に埋めるべきは動きの軸です。重さの軸だけを上げても、骨盤が返っていなければ腸腰筋の種目のままだからです。膝を曲げた状態のまま骨盤を持ち上げるところまでできるようになってから、膝を伸ばし、吊り下がりへ進む順番が、動作の成立という意味では素直です。
ハンギングレッグレイズ|吊り下がると何が変わるか
床のレッグレイズができるようになったら、次の段階が懸垂バーにぶら下がって行うハンギングレッグレイズです。
準備は、肩幅よりやや広めの順手で高いバーを握ってぶら下がることです。動作は床版と同じで、股関節と膝を曲げて腿を上げ、股関節が曲がり切るか、膝が腰より十分高くなるところまで上げます。
分類も床版と同じで、主役は腸腰筋です。吊り下がっただけでは腹筋の種目にはなりません。腹直筋が主役になる条件は床と同じで、股関節が曲がり切ったあと、さらに膝を肩へ近づけて体幹を曲げることです。ストラップを使って前腕を固定する形もあります。
握力やぶら下がる姿勢を保てない場合の中間段階として、前腕をパッドに乗せて背中を垂直パッドにつける形(キャプテンズチェア)があります。これも分類は同じ腸腰筋が主役で、広背筋・小胸筋・大胸筋胸肋部・烏口腕筋・僧帽筋下部が安定筋に加わります。
「ハンギングのほうが効果が高い」という言い方はしません。変わるのは負荷の大きさと、握力や肩まわりの持久が先に切れるかどうかという条件です。回数の目安は次の章でまとめて比べます。
回数の目安|床と吊り下がりで基準が倍近く違う
トレーニング記録の投稿サイト Strength Level は、この種目を重量ではなく回数で集計しています。床のレッグレイズと、ハンギングレッグレイズは別の項目として登録されています。以下は体重70kg男性・体重55kg女性の行を抜き出した数値です。
| レベル | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 初心者 | <1 | <1 |
| 初級者 | 12 | 9 |
| 中級者 | 31 | 27 |
| 上級者 | 54 | 49 |
| エリート | 79 | 74 |
出典: Lying Leg Raise Standards for Men and Women (kg)/Strength Level(2026-08-11 確認)
※ 海外ユーザーの自己申告データで、日本の平均ではありません。膝を曲げたか伸ばしたか、骨盤を返したかどうかという動作の条件は公開されておらず、可動域も規定されていません。目標ではなく位置の確認に使ってください
平均は男性30回・女性26回です。164,010件のコミュニティ記録から、有効な9,377件(男性7,833件・女性1,544件、2019年10月3日〜2026年3月5日)を集計した数値です。
| レベル | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 初心者 | <1 | <1 |
| 初級者 | 8 | 6 |
| 中級者 | 17 | 14 |
| 上級者 | 29 | 24 |
| エリート | 40 | 34 |
出典: Hanging Leg Raise Standards for Men and Women (kg)/Strength Level(2026-08-11 確認)
※ 海外ユーザーの自己申告データで、日本の平均ではありません。膝を曲げたか伸ばしたか、骨盤を返したかどうかという動作の条件は公開されておらず、可動域も規定されていません。目標ではなく位置の確認に使ってください
平均は男性17回・女性14回です。308,010件のコミュニティ記録から、有効な15,640件(男性13,649件・女性1,991件、2019年10月3日〜2026年3月5日)を集計した数値です。
この2つの数字が示していること
中級者の基準は、床が31回に対し、吊り下がりは17回です。同じ種目名でも、体の位置が変わるだけで基準になる回数が半分近くまで落ちます。
ただし、これは条件が公開されていない自己申告データです。「30回できないとダメ」という読み方はできません。骨盤を返す形で正しく行えば、回数はさらに落ちるはずです。この表は目標ではなく、いまどのあたりにいるかを確認する位置づけで使ってください。
回数を増やす前に、条件のほうを固定する
厚生労働省のe-ヘルスネットは、漸進性の原則を「体力・競技力の向上に伴って、運動の強さ・量・技術課題を次第に高めていくことです。いつまでも同じ強度の繰り返しではそれ以上の向上は望めません」と説明しています。上げ幅とタイミングまでは決められていないので、そこは自分の記録から判断することになります。
レッグレイズには重量という軸がありません。条件を先に固定しないと、回数が伸びたのか、可動域が狭くなっただけなのかを区別できません。増やす順番としては、可動域(骨盤を返せる範囲)を固定してから回数を伸ばし、そのあとで段階(膝を伸ばす、吊り下がる)を上げる、という順が実際的です。負荷の増やし方全般は漸進性過負荷のやり方にまとめています。
重量欄がない種目を、どう記録に残すか
自重・回数種目は、ものさしが回数しかありません。同じ回数でも、骨盤を返せた回数と返せなかった回数では別の運動です。崩れ始めた回数と、骨盤を返せたかどうかを1行足しておくと、次のセットの回数が決まります。
強度の感覚を記録に残すには、RPE(自覚的運動強度)が使えます。使い方はRPEとは|筋トレでの使い方と目安表にまとめています。
RPE早見表回数と自覚的なきつさからRPEを確認できます(登録不要)記録する項目そのものの決め方は筋トレ記録のつけ方完全ガイド、回数の推移で伸びを見る方法は筋トレの成果を見える化する方法にまとめています。器具を使わずに床版だけで続ける場合は、LiftLogの自宅トレ設定で環境を自重種目に絞れます。
まとめ
- レッグレイズの主役は腸腰筋。腹直筋と腹斜筋は、脚を上げるだけの範囲では骨盤と体幹を安定させる側に回る
- 腹直筋が主役に入れ替わるのは、股関節を曲げ切ったあとさらに骨盤を持ち上げたとき。動作の続きの有無が分かれ目になる
- 「腹筋の下部に効く」は一次研究でも結論が割れている。断定はできない
- 腰と床の隙間は、脚を上げる主役の筋の起始が腰椎にあることに由来する。膝を曲げる・可動域を狭くする・手で骨盤を支えるで対処できる
- 負荷を上げる軸は2つ。膝を曲げる→伸ばす→吊り下がるという重さの軸と、骨盤を持ち上げる動きを足す動きの軸。動きの軸を先に埋めるほうが素直
- ハンギングレッグレイズも主役は同じ腸腰筋。変わるのは負荷の大きさと、握力や肩まわりの持久が先に切れるかどうか
- 中級者の基準は床31回・吊り下がり17回(体重70kg男性)。海外の自己申告データなので、目標ではなく位置の確認に使う



