デッドバグは仰向けで、バードドッグは四つ這いで、体幹を動かさずに対角の手足を動かす自重種目です。デッドバグの的は腹側の腹壁、バードドッグの的は背中側の脊柱起立筋で、分類上の的が違います。どちらも、腕だけを動かす形では筋の反応がほとんど出ません。負荷を作っているのは脚を動かす側です。この記事では、効く筋肉の違い、やり方、段階の付け方、公開データが無い中での回数の決め方までを順に整理します。3種目とも回数で記録する種目です。

主に効く部位
腹壁(デッドバグ)バードドッグ・スーパーマンは背中側
器具
自重道具不要
難易度
初級姿勢の管理が要る
記録の単位
回数時間ではない

デッドバグとバードドッグで働く筋肉|腹側を的にするか、背中側を的にするか

デッドバグは、腹壁が反りを止める側で働く

デッドバグの主な的になるのは腹壁です。腹壁は外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の3層でできています。外腹斜筋は下位の肋骨から起こり外上方から内下方へ、内腹斜筋はこれと逆に内下方から外上方へ走ります。腹横筋は線維が横向きに走ります。この3層が担う働きは、脊柱を安定させる・体幹を動かす・腹壁を緊張させるの3つです。

デッドバグという種目の設計は、この働きのうち「脊柱を安定させる」を直接使っています。神経系は手足が動く前に腹横筋と多裂筋を先に働かせて、脊柱の分節を安定させるという仕組みが報告されています。仰向けで対角の手脚を動かしながら腰の反りを変えないというデッドバグの動作は、この仕組みをそのまま種目にしたものです。

ピラティス経験者の女性44名を対象に腹横筋の厚みを比較した研究では、5種目の中でデッドバグの厚み変化が最大で、サイドプランクの効果で扱っているサイドプランクが僅差の2位でした(Tsartsapakisほか, 2023)。ただし比較対象はピラティス種目5つに限られていて、体幹種目全体の中での順位ではありません。四つ這いとデッドバグを比較した別の研究では逆に、内腹斜筋や腹横筋が四つ這いのほうが高かったという結果も出ています(Emamiほか, 2015)。対象や比較の設計が違うため、どちらが上と言い切れる状態ではありません。

バードドッグの的は背中側。腹直筋と腹斜筋は「反りを止める側」に回る

バードドッグの的は背中側の脊柱起立筋です。協働筋には大臀筋・僧帽筋の中部と下部・三角筋の前部と中部・烏口腕筋が並び、ハムストリングスが動的安定筋として、腹直筋と腹斜筋は反りを止める拮抗安定筋として分類されています。デッドバグの的が腹側なのに対し、バードドッグの的は背中側で、腹側の筋はむしろ支える側に回ります。

健常男性8名を対象にした研究では、体幹を安定させる基本種目を3つの方向に分けています。屈曲方向の課題を担うのがカールアップ、前額面の課題を担うのがサイドブリッジ、そして伸展方向の課題を担うのがバードドッグです(McGillら, 2009)。この3方向に分ける考え方は、プランクの効果とやり方クランチのやり方で扱っている種目とも重なります。

9種目を比較した別の研究では、四つ這いで対角の手脚を上げる種目が大臀筋の強化に使える可能性があるとしたうえで、それ以外の種目はすべて45%MVIC未満で、健常者では持久または安定の訓練に向くと結論づけています(Ekstromら, 2007)。

腕だけを動かす形では、筋の反応がほとんど出ない

デッドバグにもバードドッグにも、「はじめは腕だけ、慣れたら脚も」という段階の付け方が広く知られています。負荷を下げる方法としては正しいのですが、腕だけの形にとどまると、筋の反応はほとんど出ません。

健常成人30名を対象に、デッドバグを上肢だけ・下肢だけ・上下同時の3条件で比較した研究があります。上肢だけを動かした条件の腹直筋の活動は8.88〜11.03%MVICでしたが、上下同時に動かした条件では31.52〜37.52%MVICまで上がりました(Yunら, 2017)。

超音波で多裂筋の厚みを測った別の研究では、バードドッグの腕だけの条件で、収縮による厚みの変化率が3.62〜6.09%にとどまりました。対側の手脚を同時に動かす条件では35.85〜36.54%まで上がっています(Dafkouら, 2021。男性21名)。

腕だけ→脚だけ→対側同時で反応がどう変わるか
段階デッドバグ|腹直筋 %MVICバードドッグ|多裂筋の厚み変化(CTR)
腕だけ8.88〜11.03%3.62〜6.09%
脚だけ28.79〜37.06%31.42〜31.48%
対側同時31.52〜37.52%35.85〜36.54%

デッドバグとバードドッグは別の種目・別の測定法によるまったく別の研究の数値です。同じ表に並べていますが直接比べるための表ではなく、それぞれの研究の中で腕だけの条件がどれだけ低いかを見るための表です

腕だけの段階を「初心者向け」とだけ説明する解説記事は多いのですが、腕だけの形では反応がほとんど出ないことまでは書いていません。負荷を下げる目的としては正しい調整でも、腹側・背中側のどちらであっても効かせる段階ではないということです。

バードドッグとスーパーマンは、同じ背中側でも保つか反らすかが違う

ここまでのバードドッグは、脊柱をニュートラルに保ったまま対角の手脚だけを動かす種目でした。似た姿勢で行うもう一つの種目がスーパーマンです。うつ伏せで脚をそろえ、上体と脚を同時にゆっくり持ち上げ、制御しながら下ろします。

アプリの種目一覧では、スーパーマンは背中の種目として登録されています。分類上の的も脊柱起立筋で、マスタの部位表記と分類の両方が背中側で一致します。バードドッグ・デッドバグと同じ記事で扱っているのは、四つ這い・うつ伏せの背面自重として動作が連続しているためで、部位としては別の種目です。

分類のうえでも違いがあります。バードドッグは腹直筋・腹斜筋が拮抗安定筋として名前が挙がりますが、スーパーマンの分類には腹側の筋が登場しません。バードドッグは脊柱を動かさないぶん腹側が反りを止める役に回りますが、スーパーマンは脊柱を反らせる動きそのものなので、腹側が支える必要がないという違いです。

超音波で多裂筋の厚みを測った研究では、スーパーマンの上下同時条件がCTR42.84〜42.95%で、全条件の中でもっとも高い値でした(Dafkouら, 2021)。背中側の反応としては、3種目の中でもっとも大きいという結果です。

一方で、能動的な体幹伸展を伴う種目は、関節にかかる力と筋の活動がもっとも高かったという報告もあります。片脚を伸ばすだけの課題は脊柱への負荷が低く、伸展筋への挑戦も穏やかなので、伸展筋を鍛えはじめる段階として低リスクな運動だとされています(Callaghanら, 1998)。バードドッグが片脚・片腕を伸ばす課題にとどまるのに対し、スーパーマンは体幹そのものを能動的に伸展させる動きです。背中側の反応が大きいことと、脊柱にかかる負荷が大きいことは、同じ方向に動きます

デッドバグのやり方|腰の下に手を入れて、隙間が変わらない範囲だけ動かす

デッドバグの動作は、対角の手脚をゆっくり伸ばすだけですが、腰の下に入れた手の感覚が唯一の合図になります。

  1. 仰向けになり、片手を腰の下に入れる― 隙間の変化が動作中の唯一の合図になります

  2. 股関節・膝・肩を90度に曲げ、膝が股関節の真上に来る位置に置く― 両手は天井方向に伸ばします

  3. 息を止めずに腹壁を締める― 腰や胸郭の位置は、ここからずらしません

  4. 対角の手脚をゆっくり伸ばし、水平まで下ろす― 床には置かず、わずかに浮かせたまま止めます

  5. その位置で数秒保ち、戻す― 反対側も同じ手順で行います

  6. 腰の下の手にかかる圧が変わったところが可動域の限界― そこまでしか動かしません

腰の下に手を入れる」のは、コツではなく研究の測定条件そのものです(McGillら, 2009)。同じ発想はレッグレイズのやり方で扱っている、脚を上げると腰と床に隙間ができる問題への対処法とも重なります。

きついとき・楽すぎるときの調整

易しくするには、手を頭上の床に置いたまま、足も床につけたまま、対角の手脚だけを上げます。あるいは膝を曲げたまま脚を動かします。難しくするには、脚を伸ばし切るか、動かす速さを上げます。速さについては、回数の目安の章で数値とあわせて扱います。

バードドッグのやり方と、5段階の進め方

バードドッグは、5段階に分けて進めます。

  1. 腕だけを上げる
  2. 脚だけを上げる
  3. 対側の腕と脚を同時に上げる
  4. 腹圧を意識しながら同時に上げる
  5. 肩をわずかに外側に開きながら、さらに高く上げる

5段階目まで進めると、上背部の伸展筋の活動が23%から35%MVCまで上がったという結果があります(McGillら, 2009)。

さらに発展させる形として、上げた手と足で四角を描く動きがあります。動きは肩と股関節だけに限り、脊柱そのものは動かしません。外腹斜筋・広背筋・腰部の脊柱起立筋、とくに中殿筋と大殿筋の活動が有意に変わるという結果です。活動が上がることも下がることもあり、体幹まわりの筋のあいだで働く場所が移ることを示しています。

手足を高く上げすぎないことが条件です。脊柱を動かさないことがバードドッグの前提で、専門家による姿勢の矯正で、脊柱の屈曲が16度から0度まで戻ったという記録があります(同研究)。

崩れやすい3か所

腰と床の隙間が開く

腹側で反りを止められていない状態です。可動域を狭めて、隙間が変わらない範囲だけ動かします。

骨盤が左右に回る

支える側の力が足りていない状態です。速さをゆっくりに戻します。

息を止める

腹圧の作り方の問題です。呼吸を止めずに続けます。

回数の目安|公開されている基準値が無いところから決める

筋力の公開基準は存在しない

回数の基準値を集計しているStrength Levelの287種目の一覧に、デッドバグ・バードドッグ・スーパーマンのいずれも登録がありません(2026-08-11確認)。「左右10回×2〜3セット」という数字を紹介している解説記事は多いのですが、根拠を示しているものは見当たりませんでした。この記事でも回数の推奨値は出しません。

そもそも回数を積む種目ではない

回数を積む前に確認しておきたいことがあります。デッドバグの通常の保持では、腹壁の活動は腹直筋6%・外腹斜筋8%・内腹斜筋5%MVCという測定があります(McGillら, 2009)。9種目を比較した別の研究でも、四つ這いで対角の手脚を上げる種目以外はすべて45%MVIC未満で、健常者では持久または安定の訓練に向くとされていました(Ekstromら, 2007)。回数を増やすより先に、腰と床の隙間が変わらない範囲を保てているかのほうが優先します。

きつくする道は「段階」と「速さ」の2つ

負荷を上げる道は2つあります。

1つ目は段階です。腕だけ→脚だけ→対側同時という順番は、ここまで見てきた3本の研究のいずれでも同じでした(Yunら, 2017/Dafkouら, 2021/McGillら, 2009)。

2つ目は速さです。デッドバグを60・90・120bpmのメトロノームに合わせて動かした研究では、速いほど全ての筋群の活動が上がりました(Yunら, 2017)。

動かす速さと腹壁の活動(上下同時条件・%MVIC)
速さ腹直筋外腹斜筋内腹斜筋
60bpm31.52%35.81%36.61%
90bpm34.45%40.70%42.07%
120bpm37.52%48.11%50.03%

出典: Changes in muscle activity of the abdominal muscles according to exercise method and speed during dead bug exercise2026-08-11 確認)

健常成人30名(男13・女17)を対象にした測定です。上下同時に動かした条件のみを抜き出しています

ただし、速くするほど腰の反りを止める余裕は減ります。隙間が開くようなら、速さを戻してください

厚生労働省のe-ヘルスネットは、漸進性の原則を「体力・競技力の向上に伴って、運動の強さ・量・技術課題を次第に高めていくこと」と説明しています。上げ幅とタイミングまでは決められていないので、そこは自分の記録から判断することになります。

記録に残すこと

回数の基準値がない種目は、自分の記録を積み重ねることが唯一の物差しになります。残しておきたいのは、回数・左右・どの段階だったか(腕だけ/脚だけ/対側同時)・隙間が開いた地点の4つです。

反りに抵抗し続ける段階まで進みたい場合は、アブローラー(腹筋ローラー)の効果もあります。回数の推移で伸びを見る方法や記録項目の決め方は筋トレ記録のつけ方完全ガイドにまとめています。負荷の増やし方全般は漸進性過負荷のやり方で扱っています。器具を使わずに続ける場合は、LiftLogの自宅トレ設定で環境を自重種目に絞り込めます。

まとめ

  • デッドバグの的は腹側の腹壁、バードドッグとスーパーマンの的は分類上、背中側の脊柱起立筋
  • 腕だけを動かす形は、腹側も背中側も反応がほとんど出ない。負荷を作るのは脚を動かす側
  • バードドッグは脊柱を動かさない種目、スーパーマンは脊柱を反らせる動きそのもの。腹側の役割が違う
  • 「腰の下に手を入れる」は研究の測定条件そのもの。可動域の合図として使う
  • 公開されている回数の基準値は確認できていない。段階と速さの2つで負荷を上げる
  • 速くするほど腰の反りを止める余裕は減る。隙間が開くなら速さを戻す
  • 回数を増やすより先に、隙間が変わらない範囲を保てているかを見る

次にやるときは、腕だけ・脚だけ・対側同時のどの段階で何回できたかを、隙間が開いた地点と一緒に残してみてください。次に比べる基準ができます。