PPL法は、トレーニングをPush・Pull・Legs(押す・引く・脚)の3つの日に分ける組み方です。Pushの日は胸・肩・上腕三頭筋、Pullの日は背中・上腕二頭筋(と肩の後面)、Legsの日は下半身をまとめて扱います。3日で1サイクルというのがPPL法の実体で、週3回の分割そのものではありません。週3回ならサイクルが1周して各部位は週1回、週6回なら2周して週2回になります。決めることは3つ、各日にどの種目を置くか、分類しづらい種目をどこに入れるか、サイクルを何周するかです。
PPL法とは|3つの動作で1サイクル
PPL法は、押す動作(胸・肩・上腕三頭筋)、引く動作(背中・上腕二頭筋)、脚の3つに分けて回す組み方です。腕は単独の日を持たず、押す種目のなかで三頭筋が、引く種目のなかで二頭筋が必ず動くため、Push・Pullそれぞれの日に含まれます。
押す・引くでまとめる理由
三頭筋は押す種目のなかで、二頭筋は引く種目のなかで必ず動きます。動作でまとめておくと、この重複が1日のなかに収まり、腕を独立した枠として立てる必要がなくなります。ACSMのポジションスタンドは種目の順番について、大きい筋群を小さい筋群より先に、多関節種目を単関節種目より先に、強度の高い種目を低い種目より先に並べることを推奨しています。PPL法の各日の並びは、この推奨をそのまま各日の中の順番として使える形になっています。
週3か週6か|サイクルを何周するかで部位の頻度が決まる
PPL法を何回転させるかで、部位あたりの頻度が変わります。週3回なら3日サイクルがちょうど1周し、各部位は週1回です。週6回なら同じ3日サイクルが2周し、各部位は週2回になります。ここは推定ではなく、3日サイクルを何回通すかから機械的に出る数字です。
頻度を比べた研究では、Schoenfeldら(2016)が10研究のメタ解析から、頻度が高いほうが効果量が大きかった(0.49 ± 0.08 に対して 0.30 ± 0.07、P = 0.002)と報告し、週2回が週1回に勝ると結論づけています。ここだけを読むと、週6回で頻度を上げたほうが有利に見えます。
ただし、同じ著者らが2019年に対象を25研究へ広げて解析し直したところ、週の総量をそろえた比較では頻度による有意差は見られなかったと報告しています。結論は「一定の総量に対しては、部位あたりの週の頻度は好みで選んでよい」というものです。
週3回と週6回を直接比べた研究もあります。Saricら(2019)は、抵抗訓練の経験がある27名を週3回(14名)と週6回(13名)に分け、週の総量をそろえて6週間比較しました。筋力にも筋厚にも群間差はなく、肘屈筋厚に限っては週3回の群だけが有意に増加(+7%)しています。結論は「訓練量をそろえれば、週3回でも週6回でも同程度の筋力向上が得られる」というものです。この研究がPPL法という分割形式そのものを検証したかどうかは抄録から判別できないため、ここでは「週3回と週6回の比較」として扱います。
総量そのものの効果については、同じ研究グループが2017年に出したメタ回帰があります。週あたりのセット数が1つ増えるごとに効果量が0.023(割合にして0.37%)ずつ上がるという、段階的な用量反応関係が報告されています。
公的な頻度の目安と照らしても、週6回は上級者の推奨レンジの上限に近づきます。ACSMのポジションスタンドは、頻度の推奨を未経験者は週2〜3日、中級者は週3〜4日、上級者は週4〜5日としています。厚生労働省のe-ヘルスネットも「成人および高齢者に、筋トレを週2〜3日実施することを推奨する」としており、「筋肉にしっかり負荷をかけるとともに、休息日もしっかり設けることを意識しましょう」と付け加えています。
週3回のPPL法で各部位が週1回になることは、それ自体が弱点ではありません。決めるべきは周回数そのものより、週の総量を積めているかです。
週2回しかジムに行けないなら、PPL法で3日サイクルを回すよりも、全身法のほうが組みやすくなります。3日サイクルを週2回で回すと、サイクルの端が毎週ずれ込み、部位ごとの間隔が安定しないためです。行ける日数から何分割にするかを決める手順は、筋トレ分割法の組み方にまとめています。
週4〜5回で回すなら曜日を固定しない
3日サイクルは7で割り切れないので、曜日を固定すると必ず端数が出ます。月・水・金だけを固定して週2日にする、あるいは行けた日から次の順番を続けていく、といった運用になり、各部位の頻度は週1回と週2回のあいだのどこかに落ち着きます。これは効果の主張ではなく、曜日を固定した場合に起きる算数の説明です。
週6にする前に確認すること
総量が積めていない状態で周回数だけ増やしても、SaricらやSchoenfeldら(2019)が置いていた「総量をそろえる」という条件から外れます。
Push(押す日)のメニュー例
Pushの日は、胸・肩・上腕三頭筋をまとめて扱います。枠を先に決め、種目はあとから当てはめてください。
| 枠 | 種目の例 | 入れ替え候補 |
|---|---|---|
| 水平に押す(多関節) | ベンチプレス | チェストプレス/腕立て伏せ |
| 角度をつけて押す(多関節) | インクラインダンベルプレス | インクラインベンチプレス |
| 垂直に押す(多関節) | ダンベルショルダープレス | バーベルショルダープレス |
| 肩の側面(単関節) | サイドレイズ | フロントレイズ |
| 上腕三頭筋(単関節) | プレスダウン | スカルクラッシャー/ナローベンチプレス/ディップス |
| 胸の単関節(任意) | ケーブルクロスオーバー | ダンベルフライ |
表の種目名は一例です。設備や好みに応じて、同じ枠のなかで入れ替えてかまいません。押す枠をダンベルでやるかバーベルでやるかはダンベルプレスとベンチプレスの違いで比べています。種目数が多い日は休憩時間の使い方で所要時間が変わるので、インターバルの目安も確認しておくと計画を立てやすくなります。
Pull(引く日)のメニュー例
Pullの日は、背中・上腕二頭筋に肩の後面を合わせて扱います。
| 枠 | 種目の例 | 入れ替え候補 |
|---|---|---|
| 垂直に引く(多関節) | ラットプルダウン | 懸垂 |
| 水平に引く(多関節) | シーテッドロー | ベントオーバーロー/ペンドレイロー/ワンハンドロー |
| 肩の後面 | フェイスプル | リアレイズ |
| 上腕二頭筋(単関節) | インクラインダンベルカール | アームカール/ハンマーカール |
| 僧帽筋(任意) | シュラッグ | — |
| 置き場所が割れる | デッドリフト | 次の見出しで扱います |
デッドリフトをPullの日に置くかLegsの日に置くかは流儀が分かれます。判断のしかたは次の見出しでまとめて扱います。
Legs(脚の日)のメニュー例
Legsの日は下半身をまとめて扱います。
| 枠 | 種目の例 | 入れ替え候補 |
|---|---|---|
| しゃがむ(多関節) | バーベルスクワット | ハックスクワット/フロントスクワット/レッグプレス |
| 股関節を折る(多関節) | ルーマニアンデッドリフト | グッドモーニング |
| 片脚(多関節) | ブルガリアンスクワット | ランジ |
| 臀部 | ヒップスラスト | ヒップリフト |
| ハムストリングス(単関節) | レッグカール | — |
| 大腿四頭筋(単関節) | レッグエクステンション | — |
| ふくらはぎ | カーフレイズ | — |
順番は多関節から(3日共通)
3つの日に共通する並べ方は、ACSMの推奨をそのまま使います。大きい筋群を先に、多関節種目を単関節種目より先に置く順番です。時間が足りない日は、この順番を保ったまま後ろ(単関節・任意枠)から落とせば、その日の骨格は崩れません。
押す・引くに収まらない種目をどこに置くか
Push・Pull・Legsという名前は動作で付いていますが、実際の割り振りは動作どおりに引かれていない箇所がいくつかあります。
サイドレイズは肩を挙げる動きで、押す動作そのものではありません。それでもPushの日に置かれるのは、肩をPushの日にまとめて扱う運用のためです。デッドリフトは引く動作ですが、主に働くのはハムストリングスと臀部です。Pullの日に置く流儀とLegsの日に置く流儀の両方があります。フェイスプルやリアレイズは肩の種目ですが、引く動作であり背中と一緒に疲れるという理由でPullの日に置かれます。
共通しているのは、動作の名前ではなく「その日に一緒に疲れる筋肉」で置き場所が決まっている、という点です。部位分類に置き換えると、Push=胸+肩+腕(三頭)、Pull=背中+腕(二頭)+肩(後面)、Legs=脚+体幹という束になります。体幹種目(プランクやクランチなど)やカーフレイズはどの束に入れても崩れないので、どの日に置いてもかまいません。
この置き場所については、優劣を比べた研究は確認できませんでした。動作と部位のどちらを優先すべきかを検証した研究は見当たらないため、ここに書いたのはよく見る運用の整理であって、効果に差があるという主張ではありません。
補助種目(腕・肩の単関節)は入れるべきか
Push日にアームカールやプレスダウンのような単関節種目を入れるべきかどうかは、対象者によって答えが変わります。
Mannarinoら(2021)は、筋トレ未経験の男性10名を対象に8週間、片腕の単関節種目(カール)と多関節種目(ダンベルロー)を比較し、肘屈筋の肥大は単関節種目のほうが大きかった(11.06% 対 5.16%)と報告し、「単関節種目を重視すべき」と結論づけています。一方でde Françaら(2015)は、トレーニング歴2年以上の男性20名を対象に、多関節種目のみのプログラムと、多関節種目に単関節種目を追加したプログラムを8週間比較し、肘の筋力にも上腕周囲径にも群間で差はなかったと報告しています。
この2つは矛盾していません。Mannarinoらは単関節種目を多関節種目の置き換えとして比較し、対象は未経験者でした。de Françaらは単関節種目の追加の比較で、対象はトレーニング歴のある人でした。条件が違うので、「単関節種目は必ず入れる」「絶対に不要」のどちらでもなく、時間と週の総量の配分の問題として扱うのが妥当です。ACSMの並べ方どおり、単関節種目は各日の後ろに置き、時間が足りない日はそこから落としてください。
PPL法を続けるための運用
PPL法は1日の種目数が多いので、週の総量が積めているかは日単位では判断しづらくなります。週の部位別セット数の数え方を使って月に1回でも数えておくと、周回数と総量の両方が同時に見えます。各日で何を記録するかは筋トレ記録のつけ方に、各日で重量をどう伸ばすかは漸進性過負荷のやり方にまとめています。
3つの日のメニューを毎回組み直すのは負担になりやすいところです。入力を毎回減らす工夫としてテンプレートに保存しておけば、次のPushの日は選ぶだけで種目・重量・回数が入った状態から始められます。メニューを自分で組むところからつまずくなら、AIがメニューを考えてくれるアプリという選択肢もあります。
まとめ
- PPL法は3日で1サイクル。週3回の分割そのものではなく、何回転させるかで各部位の頻度が変わる
- 週3回なら各部位週1回、週6回なら2周して週2回。Saricら(2019)は総量をそろえれば両者で差がなかったと報告している
- 週6回は上位互換ではない。ACSMの頻度推奨は上級者でも週4〜5日まで
- 各日の並べ方はACSMの推奨どおり、多関節種目を先に、単関節種目は後ろに
- サイドレイズ・デッドリフトのように動作と置き場所が一致しない種目がある。判断基準は「その日に一緒に疲れる筋肉」
- 補助種目の要否は未経験者か経験者かで変わる。「必ず入れる/絶対不要」ではなく時間と総量の配分で決める
- 続けるコツは、種目より先に週の総量を数えること
まずは3日サイクルを1周させて、各日の種目を自分の設備に合わせて入れ替えてみてください。



