ランジは、片脚を前後に開いて体を沈める種目です。主働筋は大腿四頭筋で、大臀筋・大内転筋が協働筋として動員されます。見た目は膝が大きく動く種目に見えますが、力学的には股関節の伸展が主役だという測定があります。効き方を動かす最大のレバーは歩幅で、歩幅を変えると筋肉の働き方と膝蓋大腿関節(膝のお皿と太ももの骨がこすれ合う関節)にかかる力の両方が動きます。この記事では、効く筋肉の構造、歩幅による違い、公開データにもとづく回数と重量の目安、そしてリバースランジ・ダンベルランジ・ステップアップの使い分けまで整理します。
- 主に効く部位
- 大腿四頭筋大臀筋・大内転筋も動員
- 器具
- 自重ダンベルを持つ形もある
- 難易度
- 初級片脚で支えるためバランスが要る
- 記録の単位
- 回数ダンベルランジのみ重量×回数
ランジで効く筋肉|前脚が主役で、力学的には股関節の仕事
ランジの主働筋は大腿四頭筋(大腿直筋・外側広筋・内側広筋・中間広筋の4つ)です。このうち股関節をまたぐのは大腿直筋だけで、残り3つは膝を伸ばす仕事に専念します。協働筋は大臀筋・大内転筋・ヒラメ筋、動的安定筋はハムストリングス・腓腹筋です。
見た目は膝、力学的には股関節
レクリエーションレベルの大学生16名(男8・女8)を対象に、外部負荷を体重の0%(自重)・12.5%・25%・50%まで変えてランジの関節モーメントを測定した研究があります。自重条件での関節モーメント力積の相対的な寄与は、股関節62%・足関節21%・膝関節17%でした。同じ研究の考察では、先行研究の再計算値として股関節48〜53%という数字も紹介されていて、寄与率は研究によって48〜62%の幅があります。
外部負荷を体重の12.5%から50%まで増やしていくと、足関節と股関節の力学的な仕事量は直線的に増えましたが、膝関節の仕事量は増えませんでした(p=0.160)。ダンベルやバーベルで負荷を足す意味は、膝により効かせることではなく、股関節側の仕事を増やすことにある、という読み方になります。
後ろ脚は何をしているか
動作の主役は前脚です。前脚の股関節と膝を曲げて体を沈め、その股関節と膝を伸ばして立ち上がります。後ろ脚は、膝が床に近づくところまで下ろす役目を担います。
ここまで紹介した測定は、いずれも前脚(リード脚)だけを対象にしています。歩幅を比べた研究も、踏み出す形と後ろに引く形を比べた研究も、後ろ脚側のデータは含まれていません。後ろに引く形を比べた研究では、後ろ脚側の測定を行っていないことが限界として明記されています。
後ろ脚側の股関節前面は、動作の中で伸ばされる側です。分類の面でも、股関節を曲げる筋群は主働筋・協働筋・動的安定筋のどの区分にも入っていません。
大臀筋がどれだけ働くかという話は、自重・回数で行うほかの片脚種目とも重なります。大臀筋を主働筋とする種目の効き方はヒップリフトの効果にまとめています。
ランジのやり方|歩幅がいちばん大きな調整レバー
足を腰幅にして立つ― 手は腰か体の前に置きます
片脚を前に踏み出す― かかとから接地して前足部へ体重を移します
前脚の膝と股関節を曲げて体を沈める
後ろ脚の膝が床に触れる手前まで下ろす
前脚の股関節と膝を伸ばして立ち上がる
左右の脚を入れ替えて繰り返す
歩幅を変えると何が変わるか
膝の既往のない健常者20名(男10・女10)を対象に、歩幅の長さと動き方(踏み出して戻るか、その場で上下するか)を組み合わせて筋活動を比べた研究があります。歩幅の長い条件は、最も沈んだ位置で前脚のすねがほぼ垂直になる距離(実測で男性86±3cm・女性77±5cm)、短い条件はその半分の距離で、膝がつま先を8〜10cm越えます。
| 筋 | 長い歩幅 | 短い歩幅 |
|---|---|---|
| 外側広筋 | 40% | 31% |
| 内側広筋 | 39% | 33% |
| 大腿二頭筋 | 18% | 8% |
| 半腱様筋 | 22% | 13% |
| 腓腹筋 | 26% | 15% |
| 大臀筋 | 23% | 17% |
出典: Effects of Step Length and Stride Variation During Forward Lunges on Lower-Extremity Muscle Activity(2026-08-11 確認)
※ 20名(男10・女10)の測定。沈む局面(0〜90°)の平均値のみを抜粋し、いずれも統計的に有意な差があった(p<0.05未満。大腿直筋は21%対20%で有意差がなかったため表から除いた)。立ち上がる局面の大臀筋は長い歩幅53%・短い歩幅60%で有意差はなかった(p=0.457)。測定は前脚(リード脚)のみで行われている。
同じ研究者による、被験者18名を対象にした2008年の別の測定もあります。各自の12RM相当の重量でランジを行い、膝蓋大腿関節にかかる力を比べたところ、膝を70°から90°まで曲げた範囲では、短い歩幅のほうが膝蓋大腿関節にかかる力とストレスが有意に大きいという結果でした(P<.025)。この測定では、力とストレスの絶対値は公表されていません。
まとめると、歩幅を長くすると沈む局面の筋活動が上がる方向に動き、同時に、深く曲げた角度帯での膝蓋大腿関節にかかる力は下がる方向に動きます。ただしどちらも健常者を対象にした測定で、痛みや障害の起こりやすさを比べたものではありません。
踏み出して戻るか、その場で上下するか
同じ2025年の研究では、一歩踏み出して沈み、押し返して元の位置に戻る動き(ストライドあり)と、足を固定したまま上下する動き(ストライドなし)も比べています。沈む局面の大臀筋の活動は、その場で上下する動き(ストライドなし)のほうが高い結果でした(22%対18%、p=0.009)。逆に立ち上がる局面では、踏み出して戻る動き(ストライドあり)のほうが大臀筋(64%対48%)・中殿筋(27%対20%)とも高く、いずれも統計的に有意でした(p<0.001)。
2008年の測定では、膝を10°から40°まで曲げた範囲で、ストライドありのほうが膝蓋大腿関節にかかる力とストレスが有意に大きいという結果でした(P<.025)。
局面によって向きが逆になるため、「踏み出して戻る形とその場で上下する形のどちらが正解か」という形にはなりません。
回数と重量の目安
ランジは自重で行うと、重量では自分の位置を測れません。公開されている集計は、自重は回数、ダンベルは重量で分かれています。
自重ランジは回数で見る
| レベル | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 初心者(Beginner) | 1未満 | 1未満 |
| 初級者(Novice) | 13 | 9 |
| 中級者(Intermediate) | 36 | 27 |
| 上級者(Advanced) | 63 | 49 |
| エリート(Elite) | 96 | 75 |
出典: Lunge Standards (kg)/Strength Level(2026-08-11 確認)
※ 海外のトレーニング記録サービスへの自己申告データで、日本の平均ではありません。1レップの数え方(左右交互で1回か、片脚で1回か)は公開されていません。有効記録は9,919件(193,244件の投稿から絞り込み・2019年1月27日〜2026年3月5日)です。
レベルの区切りは、記録を投稿した人の中での順位で決まっています。中級者はちょうど真ん中(下位50%より強い水準)で、体重別では体重70kgの男性の中級者が38回、体重55kgの女性の中級者が30回です。
セットの組み方も集計されていて、最も多いのは男女とも3セット×10回(男性14%・女性17%)でした。男性の6%は2セット×30回という組み方を選んでいます。
参考として、自重スクワットの中級者は男性54回・女性38回です。片脚で支えるランジのほうが、同じ回数種目でも回数が少ない方向にあります。別々の集計なので同一人物が両方を測った差ではありませんが、両脚種目と片脚種目を並べる目安として使えます。詳しくはスクワットの平均重量にまとめています。
ダンベルランジはダンベル1個あたりのkg
回数で伸びなくなったら、ダンベルを両手に持つ段階に進みます。動き方は自重と同じで、ダンベルを体の横に下げて持ちます。
| レベル | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 初心者(Beginner) | 8 | 6 |
| 初級者(Novice) | 17 | 11 |
| 中級者(Intermediate) | 28 | 19 |
| 上級者(Advanced) | 44 | 28 |
| エリート(Elite) | 61 | 39 |
出典: Dumbbell Lunge Standards (kg)/Strength Level(2026-08-11 確認)
※ 数値はダンベル1個あたり・シャフト分(通常2kg)込みで、1回だけ挙げられる重量(1RM)の水準です。有効記録は51,843件(男性40,250・女性11,593・2017年12月10日〜2026年3月5日)です。
男性の中級者28kgは、両手に持てば合計56kgです。女性の中級者19kgは合計38kgになります。表の数値は1回だけ挙げられる重量(1RM)なので、10回続けられる重量はおよそ7割強です。
1RM計算機重量と回数から最大挙上重量を推定できます。Epley式・Brzycki式の両方と%1RM換算表つき(登録不要)同じStrength Levelのダンベル種目は、共通してダンベル1個あたりで集計されています。ダンベルランジの中級者28kgに対して、ダンベルで行うブルガリアンスプリットスクワットの中級者は31kgです。別々の集計なので、同じ人が両方を測った差ではありませんが、近い水準にあることの目安にはなります。持ち方3通りの展開や体重別の表はブルガリアンスクワットの平均重量にまとめています。
記録に残すのは回数と歩幅
自重の3種目は重量が0なので、重量×回数×セット数で計算する総負荷量の式には乗りません。計算の考え方はトレーニングボリュームの計算方法にまとめています。
同じ20回でも、歩幅や左右の数え方(交互で1回か、片脚で1回か)が違えば別の運動になります。数え方を先に決めて、記録の書式を固定してください。決め方は筋トレ記録のつけ方を参照してください。
回数で伸びなくなったら、ダンベルを持つ段階に進みます。厚生労働省のe-ヘルスネットは、筋力トレーニングには自重で行う運動も含まれるとしたうえで、日常生活レベル以上の負荷を繰り返しかけ、慣れてきたら少しずつ負荷を高めていく(漸進性過負荷の原則)ことが重要だとし、成人および高齢者に週2〜3日の実施を推奨しています。段階の進め方は漸進性過負荷のやり方にまとめています。
リバースランジ・ダンベルランジ・ステップアップの使い分け
ここまでの自重ランジ・ダンベルランジを含めて、LiftLogにはランジの変種が4つ用意されています。歩幅と同じ考え方が、前後どちらに脚を動かすか、台に上るかという形にも応用できます。
リバースランジ|後ろに引く形
リバースランジは、前ではなく後ろに脚を引いて、支えている前脚を曲げて体を沈める種目です。
20代の健常男性15名を対象に、前に踏み出す形と後ろに引く形を比べた研究があります。膝の可動域(105.49°対99.52°、p=0.040)、足関節の可動域(15.81°対13.74°、p=0.044)、内側広筋斜頭の活動(54.28%対45.77%、p=0.028)は、いずれも前に踏み出す形のほうが有意に高い値でした。一方で大殿筋(16.99%対15.71%、p=0.073)と大腿二頭筋(14.77%対13.51%、p=0.410)には有意な差がありませんでした。
動員される筋の分類でも、前に出す形と後ろに引く形で主働筋・協働筋・動的安定筋の一覧は同じです。「後ろに引く形のほうがお尻に効く」という説明はよく見かけますが、この測定と分類のどちらからも裏づけは確認できませんでした。歩幅を統制していない15名の測定1本にもとづく結果なので、断定はできません。
公開データでは、リバースランジの中級者は男性31回・女性25回です(有効記録4,292件)。自重ランジの集計(9,919件)とは別集計なので、引き算はできません。
前に踏み出すとバランスが取りにくい場合や、前に出るスペースがない場合の選択肢になります。
ダンベルランジ|回数で伸びなくなったときの次
ダンベルランジの動き方は自重ランジと同じで、ダンベルを体の横に下げて持ちます。
荷重を足すと股関節と足関節の仕事が増えるという結果は、効く筋肉の節で紹介した測定のとおりです。膝の仕事は増えませんでした。
動員される筋の分類では、自重版には無かった脊柱起立筋・僧帽筋・肩甲挙筋が安定筋として加わります。ダンベルを保持するために体幹と肩まわりが姿勢を支える仕事を追加で担うためです。
記録の単位も変わります。自重の3種目は回数だけを記録しますが、ダンベルランジは重量も記録できるようになります。
ステップアップ|台に上る形
ステップアップは、片脚を台に乗せ、その脚の股関節と膝を伸ばして上りきる種目です。
調整のレバーはランジの歩幅と同じ構造です。台から離れて立つと大臀筋が、台に近づくと大腿四頭筋が強調されます。
台の高さを比較した測定は確認できませんでした。参考として、女性15名が45.72cmの台で6RM相当の負荷を使って行った測定では、通常のステップアップ・クロスオーバー・ダイアゴナル・ラテラルの4種類のうち、通常のステップアップが大臀筋・大腿二頭筋・半腱様筋の活動を最大化し、クロスオーバーが中殿筋の活動を最大化したと報告されています。
公開データにステップアップの基準表は見つかりませんでした。回数の目安は示せません。
段差があればどこでもでき、上る高さで自分で難易度を決められる種目です。
ランジ・リバースランジ・ダンベルランジ・ステップアップは、いずれも前脚(または上る脚)が主役の片脚種目です。後ろ脚を台に乗せて前脚1本で支える形は、ブルガリアンスクワットという別の種目になります。
リバースランジ・ステップアップ・ダンベルランジは、トレーニング環境を自宅にすると絞り込まれる種目に含まれています。設定はLiftLogの自宅トレ設定にまとめています。
まとめ
- ランジの主働筋は大腿四頭筋。ただし力学的には股関節の伸展が主役だという測定がある
- 歩幅を長くすると沈む局面の外側広筋・ハムストリングス・大臀筋の活動が有意に高くなり、短くすると深く曲げた角度帯で膝蓋大腿関節にかかる力が有意に大きくなる
- 踏み出して戻るか、その場で上下するかでも大臀筋の出どころが変わる。局面によって向きが逆になるため、どちらが正解とは言えない
- 公開データの中級者は自重ランジ男性36回・女性27回、ダンベルランジ男性28kg・女性19kg(ダンベル1個あたり)
- リバースランジは前に踏み出す形と比べて可動域や内側広筋斜頭の活動が低いが、大殿筋の活動に有意差はない
- ステップアップは台からの距離で効く場所を調整できるが、回数・重量の公開データは見つからなかった



