パーソナルトレーナーのカルテに要る項目は5区分です。基本情報、目標と期限、申告された制約、セッションの実施記録、次回までの宿題。困るのは項目の数ではなく、このうち実施記録と宿題の2つだけが、毎回のセッションと毎日の自主トレで増え続けることです。紙やスプレッドシートで最初に追いつかなくなるのもここで、残りの3区分は初回に埋めてしまえばそう困りません。

カルテの欄は「滅多に変わらないもの」と「毎回増えるもの」で分かれる

パーソナルトレーナーのカルテを開くと、欄はだいたい2種類に分かれます。ひとつは、初回のカウンセリングで一度埋めればそのあとほとんど動かない欄です。氏名や連絡先といった基本情報、クライアントが掲げた目標と期限、本人から申告のあった制約(既往・服薬・生活上の制限)がここに入ります。もうひとつは、セッションのたびに、あるいは毎日の自主トレのたびに増えていく欄です。実施した種目や重量・回数といったセッションの実施記録、体重や体脂肪率といった体組成、そして次回までの宿題がどれだけ消化されたか、がここに当たります。

紙やスプレッドシートで運用が先に苦しくなるのは、後者のグループだけです。前者は年に数回書き直す程度なので、様式が紙であってもさほど困りません。困るのは、セッションのたびに増えていく行を、同じシートの同じ場所に積み続けなければならないときです。1枚の紙やシートに基本情報と実施記録を一緒くたに書いていると、数か月分の記録が積み重なった頃には、初回に書いた目標や制約がどのページにあったか探すだけで時間がかかるようになります。

liftlog Coachのクライアント一覧が出す項目を見ると、この境界線がそのまま形になっています。並ぶのは最終記録日・最新体重・今日の予定・直近30日の消化率で、いずれも更新頻度の高い項目です。基本情報や目標を毎回一覧に出す必要はない、という設計判断がそこにあります。一方で、上位に並ぶカルテ製品のLPは写真や履歴が蓄積されていくことを訴えますが、更新頻度で欄を分けて説明しているものは見当たりません。この記事では、この2分類を最初の軸にします。滅多に変わらない欄は「台帳」として、毎回増える欄は「履歴」として、最初から別の置き場所を用意する、というのがここから先の一貫した考え方になります。

カルテの記載項目テンプレート(5区分)

最小構成はこの5区分です。表計算で持つなら、台帳シート1枚(1人1行)と履歴シート1枚(1セッション1行)の2枚に分けると、そのまま運用できます。ここでの5区分は「業界標準」ではなく、公開された標準様式は見当たらなかったため、liftlog Coachが実際に扱っている項目をもとに組んだこの記事の提案です。区分の数を絞っているのは、最初から欄を増やしすぎると、結局すべてを毎回埋めようとして続かなくなるためです。5つのうち3つは初回だけ、残り2つだけを毎回、という配分を先に決めておくと、入力する側の負担が読めるようになります。

台帳シート(1人1行・滅多に変わらない欄)

区分備考
1 基本情報氏名(呼称)/連絡手段/開始日/セッション頻度の取り決め呼称を1列持つと引き継ぎと呼び間違いが減る
2 目標と期限目標(本人の言葉のまま)/期限/期限までの中間地点「本人の言葉のまま」を1列持つ。要約すると次回の会話で使えない
3 申告された制約本人から申告のあった既往・服薬・痛み・生活上の制約/医療機関の受診有無/申告日判断ではなく申告の記録。様式は公開されたものを使う
— 同意制約の情報を取得したことへの本人同意/取得日要配慮個人情報にあたるため

履歴シート(1セッション1行・毎回増える欄)

区分備考
4 実施記録日付/実施した種目・重量・回数/体重・体脂肪率/所見メモセッションごとに1行増やしていく
5 次回までの宿題次のセッションまでにやること/期限(次回セッション日)/実施の有無「実施の有無」列が空のまま埋まらないなら、そこが表計算の限界

台帳シートの行はクライアントの数だけ増え、履歴シートの行はセッションの数だけ増えていきます。増え方の速さが違う2つを同じシートに置かないというのが、この2枚構成のいちばんの狙いです。列を増やして対応しようとすると、台帳のような「基本情報寄り」の欄と、履歴のような「記録寄り」の欄が横に並んでしまい、どちらの意味の行なのか見分けがつきにくくなります。

書いた内容が次のセッションまでに何になるか

カルテは記録の保管庫ではなく、次のセッションまでの設計図です。同じ内容を書いても、出口を決めていなければ書いた分だけ死蔵します。出口は3つあります。①次回のセッションで見る ②クライアントの手元に渡す ③途絶えに気づく、です。

① 次回のセッションで見る

いちばん単純な出口です。前回の所見メモと次回までの宿題を、セッションが始まる前に読み返す。ここが機能していれば、毎回同じ確認から入り直さずに済みます。台帳の目標と期限も、ここで定期的に見返す対象になります。逆に、この出口が機能していないと、前回何を伝えたかをクライアント本人に聞き直すところからセッションが始まることになり、記録をつけている意味が薄れます。

② クライアントの手元に渡す

宿題を口頭やメモだけで伝えると、確認する手段がないまま出しっぱなしになりがちです。手元に残る形で渡しておくと、実施したかどうかを次回までに確認できます。liftlog Coachでは、トレーナーが作った予定が日付・タイトル・メモ・種目(セット・重量・回数)としてクライアントの手元に届き、複数日分をまとめて作成することや、前回の予定を複製することもできます。予定が完了すると実績のセッションと自動でひも付き、配信した予定のうち何件が完了したかという消化率になって返ってきます。紙の宿題メモと違うのは、渡した側にも「実施したかどうか」が数字として戻ってくる点です。

③ 途絶えに気づく

3つ目は、書いた内容そのものよりも、書かれなくなったことに気づく仕組みです。台帳と履歴を分けておけば、最後にいつ書かれたかが一目でわかります。liftlog Coachの要対応キューは、今日以降の予定が1件も無い人と、7日以上記録が途絶えている人を拾う条件で組んであります。カルテを漫然と溜めるのではなく、止まったところを見つける道具として使う形です。何十人ものクライアントを抱えていると、記録が止まった1人に自分から気づくのは意外と難しく、こちらから毎回シートを開いて確認する運用は続きにくくなります。途絶えを数字でどう数えるかは、継続率の数え方の側で扱っています。

この節で触れたliftlog Coachの機能はここまでです。道具としてどう選ぶかは、このあとの節でまとめて扱います。

紙とスプレッドシートのまま整える3つの手当て

カルテが手に負えなくなってきたからといって、すぐにアプリへ乗り換える必要はありません。乗り換える前に、いまの道具のままで効く手当てが3つあります。ここまでの2つの節、つまり「台帳と履歴を分ける」考え方と「出口を決める」考え方を、そのまま紙やスプレッドシートの運用に落とし込むだけです。

  1. 台帳と履歴を分ける― 滅多に変わらない欄と毎回増える欄を同じシートに混ぜない。混ぜると、増え続ける履歴の下に基本情報が埋もれていく

  2. 「次回までの宿題」欄を必ず1行作る― 口頭で伝えるだけの宿題は、書いた側も忘れる。履歴シートの右端に固定の列として置く

  3. 宿題の消化を記録する欄を作る― やることを書くだけでなく、実施したかどうかを書く場所を分けて用意する

①と②は、シートの作り方を1回決めてしまえばあとは運用が回ります。台帳と履歴を別シートに分け、履歴シートの列に「次回までの宿題」を固定で用意しておけば、書く場所に迷うことはなくなります。③だけは自己申告に依存します。実施したかどうかを本人か自分で書き込むしかなく、そこが表計算の限界になります。この限界は、②の出口で見た「実施の確認手段が無いと出しっぱなしになる」という構造そのものです。欄を作っただけでは埋まらず、埋めるかどうかは結局、書く側の手間にかかっています。この3つを表計算のシートとしてどう組むかは、顧客管理をエクセルで整えるときの列の設計で扱っています。

カルテをアプリに移すかどうかの判断

判断材料は機能の数ではなく「毎回増える欄を誰が入力するか」です。料金や機能を横並びで比べる話は顧客管理アプリの選び方で扱っているので、ここでは入力の主体という1本の軸で見ます。

誰が入力するかで分ける

カルテ系の道具は、大きく2つの型に分かれます。(A)トレーナーが自分で入力する電子カルテ型と、(B)クライアント側にもアプリがあり、本人の入力がそのまま入ってくる型です。カルテの欄でいちばん手が足りなくなりやすいのは実施記録や体組成のような毎回増える欄なので、そこを誰が埋めるかがこの2型の分かれ目になります。(A)型ではその欄もトレーナーが手を動かして埋めることになり、(B)型では本人の記録がそのまま入ってきます。

カルテ系のツールを紹介する記事はいくつかありますが、機能の数や画面の作り込みで比較することが多く、この「誰が入力するか」という軸で整理したものはあまり見かけません。台帳の欄と違い、履歴の欄は毎回発生するぶん、入力の主体が変われば手間の総量も変わります。機能一覧を横に並べるより先に、この1点を確認しておくと選びやすくなります。

パーソナルトレーナー向けカルテ・顧客管理ツール
製品名提供会社クライアント側アプリ公式に記載のある記録項目
カルティ マルチカルテSapeet Inc.記載なしカウンセリング内容/トレーニングメニュー/来店前WEBヒアリング
トレカルテ記載なしあり(同じアプリをクライアントも利用)セッション予約/トレーニング記録(種目・セット数・重量・有酸素)/身体指標(体重・体脂肪率・筋肉量)/自主トレーニング記録/クライアントプロフィール
BionlyArise Inc.あり(顧客専用アプリ「CHEERBE」)トレーニング前後の写真/会話内容
BeKARTE株式会社バルテックITソリューションズ記載なし来店日時・回数/トレーニング履歴/顧客詳細情報/姿勢や動きの写真記録/トレーニング前後の比較画像
KaruteKuntechners株式会社あり(iOS・Android)写真/提供サービス/施術履歴
kaloko株式会社カロコあり(iOS・Android)記載なし(Appleヘルスケア・Google Fit連携)

2026-08-16時点で各社公式サイトに記載されていた内容。「記載なし」は公開情報からは確認できなかった項目で、機能が無いことを意味しない。料金や機能の網羅的な比較はこの表の対象外

この軸で見ると、2つの型がおおむね分かれます。トレカルテ・Bionly・KaruteKun・kalokoはクライアント側アプリを持ち、(B)型に当たります。カルティ マルチカルテとBeKARTEはクライアント側アプリの記載が見当たらず、(A)型に近い作りです。

(B)型の中には、管理のための専用アプリを増やすのではなく、クライアントが自分のために使っている記録アプリの上に、トレーナー向けの機能を載せる形もあります。liftlog Coachはこの形で、トレーナー側は閲覧のみ、書き込めるのはトレーニング予定だけです。実施記録・体重・食事の欄はクライアント本人の記録で埋まり、宿題は予定として届いて消化率になって返ってきます。

どの型に移すにしても、書き出せるかどうかは先に確認しておくといいです。

移すときにデータの出口を確認しておく

紙やスプレッドシートからアプリに移すと、今度はアプリからの書き出しが気になる場面が出てきます。別のツールへ乗り換える、あるいは自分で集計したいといった必要が出たときに、カルテのデータを書き出せる形で残せるかどうかは、契約する前に確認しておきたい事項です。紙やスプレッドシートで運用しているうちは、データは自分の手元にあります。アプリに移すというのは、そのデータの置き場所を相手のサービスに預けるということでもあるので、預けたものを後から引き出せるかどうかは、入力の主体を決めるのと同じくらい判断材料になります。この記事の比較表は料金や機能まで踏み込んでいないので、書き出しの可否は各社に直接確認するのが確実です。

まとめ

  • カルテの中身は5区分。基本情報/目標と期限/申告された制約/セッションの実施記録/次回までの宿題
  • 欄は更新頻度で2つに分かれる。滅多に変わらない欄と、毎回・毎日増える欄。表計算で先に苦しくなるのは後者だけ
  • 書いた内容の出口は3つ。次回のセッションで見る/クライアントの手元に渡す/途絶えに気づく
  • 紙とスプレッドシートのままでも、台帳と履歴を分ける・宿題欄を作る・消化を記録する欄を作るの3つで整う。消化の記録だけは自己申告に依存する
  • アプリに移すかどうかの判断軸は「毎回増える欄を誰が入力するか」。トレーナー入力型とクライアント入力型があり、移すときは書き出せるかを先に確認する