週3回ジムに通えるなら、組める形は3つあります。全身法を3日、上半身と下半身を3日に回す上下2分割、押す・引く・脚などの3分割です。3つの違いは1つの数字に集約されます。部位あたりの週の頻度が、全身法なら週3回、上下2分割なら約1.5回、3分割なら週1回になるという算数です。どれが優れているかというと、週の総量をそろえた比較では型による差は出ていません(Ramos-Campoら2024)。だから決め手は型の名前ではなく、1回のセッションに何セット乗せられるかです。ここでは3案の並べ方、選ぶ基準、曜日の置き方、種目つきの実例、1回行けなかったときの直し方までを順に整理します。
週3で組める型は3つ|違いは「部位あたり週何回」
週3回という条件で組めるメニューは、大きく3つの形に分かれます。
| 型 | 1日の担当 | 部位あたり週の頻度 | 1回に乗る量 | 向く条件 |
|---|---|---|---|---|
| 全身法を3日 | 毎回ぜんぶ(1部位1種目) | 週3回 | 部位あたり少ない | 1回に取れる時間が短い |
| 上下2分割を3日に回す | 上半身の日/下半身の日 | 2週で3回=約1.5回 | 中くらい | 曜日が読めない人にも組みやすい |
| 3分割(押す/引く/脚など) | その日の担当部位だけ | 週1回 | 部位あたり多い | 1回に長く時間を取れる |
※ 頻度は算数で決まる数字であって、優劣を示すものではありません
型の名前を選ぶ前に、この表の「部位あたり週の頻度」だけ見てください。全身法は1回のメニューに全部位を入れるので、週3回そのまま部位の頻度になります。3分割は日ごとに担当部位を絞る分、1つの部位が回ってくるのは週1回です。上下2分割はその中間で、上→下→上、翌週は下→上→下と回すと、2週間で3回、平均すると約1.5回になります。
週3は、公的な推奨が初心者と中級者で重なる頻度
ACSMのポジションスタンドは、頻度の推奨を訓練歴別に示しています。未経験者は週2〜3日、中級者は週3〜4日、上級者は週4〜5日という基準です。週3は、未経験者向けの範囲(週2〜3)と中級者向けの範囲(週3〜4)がちょうど重なる、唯一の値です。厚生労働省のe-ヘルスネットも、成人および高齢者に、筋トレを週2〜3日実施することを推奨するとしており、週3はその上限側に位置します。ここから言えるのは、週3が公的な推奨の範囲に収まっているという事実だけです。「週3が最適」という結論を導く出典ではありません。
週2回しか確保できない場合の組み方は、週2の筋トレは全身法で扱っています。週3回を前提にする本記事では、週2の話はここでは扱いません。
型の優劣は、総量をそろえると消える
3つの型のどれが優れているかを比べた研究は、実は決着しています。Ramos-Campoら(2024)は、分割ルーティン(Sp)と全身ルーティン(FB)を比較した14研究・392名分のデータをメタ解析しました。
ベンチプレスの筋力ではMD 1.19(95%信頼区間 -1.28〜3.65、p=0.34)、下肢筋力ではMD 2.47(95%信頼区間 -2.11〜7.05、p=0.29)と、いずれも有意差はありません。筋肥大の指標(肘伸筋・肘屈筋の断面積、外側広筋の厚さ、除脂肪量)も、4つとも有意差は出ませんでした。論文の結論を訳すと、「総量をそろえたトレーニングプログラムでは、分割ルーティンか全身ルーティンかは筋力の向上にも筋肥大にも有意な影響を与えない。したがって、個人の好みに基づいてレジスタンストレーニングのルーティンを自信を持って選んでよい」となります。
ただし「各部位を週1回にする」条件だけは、単発の試験で差が出ている
14研究をまとめたメタ解析とは別に、週3という条件そのものを比較した試験が1本あります。Schoenfeldら(2015)は、well-trained menの20名を、各部位を週1日だけ鍛えるSPLIT群(10名)と、週3日すべて全身法で鍛えるTOTAL群(10名)に分けて比較しました。結果は、前腕屈筋群の筋厚がTOTAL群で有意に大きく増加し、最大筋力(ベンチプレス・スクワットの1RM)には有意差が出ませんでした。
この試験の抄録には、介入した週数や増加率の具体的な数値は書かれていません。そのため「◯週間で◯%増えた」とは書けませんが、方向としては全身法(週3回)が有利という結果が1つの部位で出ています。ただし20名の単一試験であり、14研究をまとめたRamos-Campoらのメタ解析は総量をそろえれば差が出ないとしています。方向の参考にはなりますが、これ1本で3分割を否定する材料にはなりません。
頻度で差が出るように見えるのは、頻度そのものではなく総量の効果
では、なぜ「頻度が高いほうがいい」という主張をよく見かけるのでしょうか。Grgicら(2018)の22研究のメタ解析では、週1・2・3・4回以上というカテゴリで筋力の効果量を比べると、0.74・0.82・0.93・1.08と頻度が上がるほど大きくなり、頻度の主効果は有意でした(p=0.003)。ここだけを見ると、頻度そのものに効果があるように見えます。
ところが同じ論文には、総量をそろえた研究だけを取り出したサブグループ解析も載っています。この解析では頻度による有意差は消えました(p=0.421)。論文の実務的な結論は、頻度を高めることは追加のトレーニング総量を確保する手段として使え、それが筋力の向上につながりやすい、というものです。つまり頻度そのものが結果を決めているのではなく、頻度を上げることで総量を積みやすくなる、という間接的な関係です。筋肥大についても、Schoenfeldら(2019)が25研究をまとめて総量をそろえた比較では頻度による有意差はないと報告しており、同じ構図が確認されています。
選ぶ基準は「1回に何セット乗せられるか」
週3は日数が固定なので、週の総量は「1回に消化できるセット数 × 3」で決まります。総量が同じなら型は好みで選んでよい、というのがRamos-Campoらの結論でした。逆に言えば、失敗になるのは型そのものではなく、選んだ型によって総量が変わってしまうケースです。
3分割は1部位に多くのセットを乗せる形なので、1回に確保できる時間が短いと乗せきれず、総量が落ちます。全身法は1回1部位1種目が基本なので、短い時間でも3回に分けて積み上げやすくなります。上下2分割はその中間です。
時間の数字は自分で測る
「45分あれば3分割、30分なら全身法」のような時間の目安を出したいところですが、この閾値を示した出典は見当たりません。数字を作る代わりに、実際に確保できる時間の中で何セット消化できているかを、次の2週間で数えてみてください。数え方は総負荷量の計算方法にまとめています。記録の付け方から見直したい場合は筋トレ記録のつけ方完全ガイドを参照してください。
「初心者は全身、慣れたら分割」の根拠は、実は薄い
週3の記事でよく見かけるのが、「初心者は全身法、慣れてきたら分割法に切り替える」という助言です。ただし、この助言を訓練歴で層別して検証した一次情報は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。Ramos-Campoら(2024)の対象は健康な成人全般で、訓練歴による効果の違いは報告されていません。Grgicら(2018)も、「現在の研究の大半は未訓練者を対象にしている」という限界を自ら明記しており、訓練者でどうなるかは今後のデータを待つ必要があるとしています。この言い方を支える一次情報は、現時点では見当たりません。
曜日の置き方|等間隔にするか、まとめるか
3日をどこに置くかで、型の向き不向きが変わります。全身法は同じ部位を3回とも使うので、間隔が空くほど回しやすくなります(月・水・金型)。3分割は日ごとに担当部位が違うので、金・土・日のように連続した3日でも回せます。上下2分割の3日回しはその中間で、上→下→上のあいだに1日入れば形が保てます。
出典として言えるのは、厚生労働省のe-ヘルスネットが挙げる「筋肉にしっかり負荷をかけるとともに、休息日もしっかり設けることを意識しましょう」までです。何時間空けるべきかという数値は公的資料には示されていません。土日と平日1日しか確保できない場合、この配置は連続した2日を含むので、連続日に同じ部位を使わない3分割や上下2分割のほうが素直に組めます。
実例メニュー|3つの型それぞれ
ここから先は一例です。医学的な処方ではなく、ここまでの枠に種目を当てはめるとこうなる、という例にすぎません。表の種目名はLiftLogアプリの種目マスタ名にそろえてあるので、そのまま予定に登録できます。回数・重量・セット数は書いていません。個人差が大きく、出典のある数値ではないためです。
表A: 全身法を3日(月・水・金型)
| 日 | 下半身 | 押す | 引く | 補助 |
|---|---|---|---|---|
| Day1 | スクワット | ベンチプレス | ラットプルダウン | サイドレイズ |
| Day2 | ルーマニアンデッドリフト | ダンベルショルダープレス | ケーブルロウ(シーテッドロー) | クランチ |
| Day3 | レッグプレス | インクラインダンベルプレス | ダンベルロウ(ワンハンドローイング) | ヒップスラスト |
※ 医学的な処方ではありません。下半身・押す・引く・補助の4つの枠を3日とも埋める形です。回数・重量・セット数は入れていません
下半身のスクワット、押す枠のベンチプレス、引く枠のラットプルダウン、Day2のヒンジ種目であるルーマニアンデッドリフトは、フォームと重量の目安を別記事にまとめています。
表B: 上下2分割を3日に回す(上→下→上、翌週は下→上→下)
| 日 | 種目 |
|---|---|
| 上半身の日 | ベンチプレス/ラットプルダウン/オーバーヘッドプレス/ダンベルロウ/サイドレイズ/ダンベルカール(アームカール) |
| 下半身の日 | スクワット/ルーマニアンデッドリフト/レッグプレス/レッグカール/カーフレイズ/プランク |
※ 上→下→上、翌週は下→上→下と1日ずつずらして回します。回数・重量・セット数は入れていません
上半身の日のオーバーヘッドプレスとダンベルロウ、下半身の日のレッグカールは、それぞれ別記事でやり方と重量の目安を扱っています。
表C: 3分割(押す/引く/脚)
| 日 | 種目 |
|---|---|
| 押す日 | ベンチプレス/インクラインダンベルプレス/オーバーヘッドプレス/サイドレイズ/トライセプスプッシュダウン |
| 引く日 | デッドリフト/ラットプルダウン/ケーブルロウ/フェイスプル/ダンベルカール |
| 脚の日 | スクワット/レッグプレス/ルーマニアンデッドリフト/レッグカール/カーフレイズ |
※ 押す日・引く日・脚の日をそれぞれ週1回ずつ回す形です。回数・重量・セット数は入れていません
引く日のデッドリフトとフェイスプル、押す日のトライセプスプッシュダウンは、フォームと重量の目安を別記事にまとめています。
表を自分のジムに合わせて差し替える
差し替えの判断は、その日の枠が埋まっているかどうかだけで足ります。フリーウェイトのラックが空いていないジムなら、押す枠をチェストプレスマシンに置き換えても枠は埋まります。ラットプルダウンの代わりに懸垂を使ってもかまいません。表の並びは結果として大きい筋群・多関節種目が先頭寄りになっていますが、この並べ方の理屈そのものは本記事では扱いません。
1回行けなかったときに、型ごとに何が起きるか
週3のうち1日が潰れると、型ごとにダメージが違います。これは頻度の割り算から出る帰結であって、研究の主張ではありません。
全身法は、その週が週2になるだけです。各部位は週3回から週2回に減りますが、週2は厚生労働省の推奨(週2〜3日)やACSMの未経験者向け推奨(週2〜3日)の範囲に残るので、形そのものは崩れません。
上下2分割の3日回しは、順番が1つずれるだけです。2週間で均せば、各部位は3回のはずが2.5回になります。
3分割は、飛ばした部位だけ次に回ってくるのが約2週間後になります。残り2部位は週1回のままです。
対処は事前にルール化しておくと迷いません。飛ばした日を消すのではなく、順番を保ったまま全体を1日ずらします。特に3分割では、このルールが効きます。
進め方|3日分を先に置いて、記録で調整する
型を決めたら、3日分のメニューを先に決めて置いてしまいます。当日に「今日は何をやろう」から考え始めると、その分だけ時間が削られ、総量が落ちます。
総量が実際に積めているかどうかは、記録でしか分かりません。数え方は総負荷量の計算方法を参照してください。重量を上げるかどうかの判断は筋トレで重量を上げるタイミング、3日分をどう伸ばしていくかは漸進性過負荷のやり方にまとめています。
まとめ
- 週3で組める形は全身法・上下2分割・3分割の3つ。違いは部位あたり週の頻度(週3回・約1.5回・週1回)だけ
- 総量をそろえた比較では、型による筋力・筋肥大の差は出ていない(Ramos-Campoら2024)
- 頻度が高いほど効果量が大きく見えるのは、総量を積む手段として頻度が使われているため(Grgicら2018)
- 週3は、ACSMの未経験者向け推奨(週2〜3)と中級者向け推奨(週3〜4)が重なる唯一の値
- 選ぶ基準は型の名前ではなく、1回のセッションに何セット乗せられるか
- 曜日は型より先に決める。全身法は間隔を空けやすく、3分割は連続日でも回せる
- 1回飛んだときのダメージは型で違う。全身法は週2になるだけ、3分割は該当部位が約2週間空く
- 実例メニューは一例。3日分を先に決めて置き、記録で調整する
まずは3日分の枠(下半身・押す・引く、または担当部位)を書き出してみてください。種目を細かく決めるのはそのあとで構いません。決める作業を前日までに済ませておけば、当日に必要なのは始める操作だけになります。使い方の詳しい手順はLiftLogのトレーニング予定にまとめています。



